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第340話 『ガラハッド・カザドノルズ その1』




 私はここぞとばかりに、もう一度言ってやった。



「ポール、それにルイ・スヴァーリ伯爵にも言っておくわ。確かにヴァレスティナ公国は、クラインベルト王国を利用できる道具位に思っているのかもしれない。だけど、形式上でも私はヴァレスティナ公国のエゾンド公爵の義理の孫にあたるのよ。それが、どういう事か解ってそんな口の利き方をしているの?」



 それを聞いて、慌てて私に跪くルイ・スヴァーリ伯爵とキョウシロウ。そして、【ウィザード】の男。ポールはあからさまに動揺し、縋るようにガラードの顔を見た。



「へっ!! なるほどな。それじゃ、無礼は許してやる。だがな、俺様とお前が同じく王族って事で対等って言うならな、俺様もお前には跪かねえからな」


「当然だわ。それにここは、あたなのホームだしね。確かに礼儀をかいていた事は謝罪するわ。だけど、礼には礼を持って接すると言う言葉があるけれど、あなたからはその微塵も感じられなかったから礼なんていらないのかなって思ったの」



 すると、ガラードは舌打ちし、「いくぞ!」と言ってポール達を引き連れて行った。その際、娘から何も聞いていなかったのかルイ・スヴァーリ伯爵は何度もこちらを振り替えて私の顔を伺っていた。


 ミューリとギブンは、立ち上がるなりフーーっと深い溜息を吐くと陛下のおられる玉座の間へと私達を案内してくれた。







 ――――ドワーフ王国、玉座の間。



「よくこのノクタームエルドのドワーフ王国まで遥々と来てくれた、クラインベルト王国のアテナ王女よ。余がこのドワーフ王国の王、ガラハッド・カザドノルズじゃ」


「お初にお目にかかれて、光栄です陛下。ミューリとファムからもう聞いていられるかもしれませんが、クラインベルト王国第二王女のアテナと申します。この度は、陛下にお招きいただきましてありがとう存じます」



 挨拶をするとガラハッド王は、立派な髭を触り私の方を見ると、機嫌よく笑った。



「ワッハッハ。クラインベルトの王女は3人とも美しく、それに加えてとびきり元気だと聞いていた。その中でも、第二王女が破天荒と風の噂で聞いておった」



 え? うそ!! 私、風の噂になってんの? しかも、そんな事を言われていたの? 破天荒って……どちらかというと、おしとやかタイプだと思うけど……え?



「ミューリやファムからも、色々と聞いておるぞ」



 ええ!? この二人は陛下になんて言ったの? 変な事を言ってないでしょうね?


 二人を睨みつけると、ミューリもファムは私から目を逸らした。



「そ、そうですか陛下。ち、因みになんと言う風に聞かれましてございましょうか?」


「ワッハッハ。かなりの変わり者と聞いておる。一国の王女を捕まえて言う事でもないが、それでも悪くとならないでくれ。変わり者だが、義理を通し情に厚く、心優しいとな。その性格も晴れ晴れしておると。それと、王位継承権を捨てさり冒険者を夢見て、王国を出たそうじゃないか。それも傑作じゃ」


「陛下……冒険者にはなりましたが、私が真に目指しているのはキャンパーです」


「キャンパー? なんじゃそれは?」


「キャンプをこよなく愛する者の総称でございます」


「なんじゃそれは? 野宿好きって事か? それだけで、お前は王位継承権を放棄したのか?」



 信じられないというか、あっけにとられたという陛下の表情に、ミューリとファムが硬直している。ギブンやノエルもそのようだけど、ルシエルだけは笑いを堪えていた。



「陛下……野宿好きには相違ありませんが、キャンプというのは一言では言えない魅力がございます。緑あふれる我がクラインベルト王国では、風や太陽を感じ夜には月の美しさと焚火の心地よさを楽しみます。また、キャンプし食べる食事は最高です。キャンプといいましても、野宿だけではなく、狩りや釣り、またはゆっくりと珈琲でも飲みながら自然を感じ読書を貪るのもまた何とも言えない良さと魅力があるのです」


「ほう、そう言われると確かに面白そうに思えてくるな。奥も深そうじゃ。でも、雨や嵐もあろう」


「嵐の時は、キャンプはしません。でも、旅をし冒険者をしていればせざるおえない日もあります。でも、それもキャンプなのです。例えば雨が降れば、雨の日のキャンプを楽しみます。雨音に耳を傾ければ自然の音楽に聞こえ、癒されます。それもまたキャンプの醍醐味の一つです。これは、師匠の受け売りですが」


「なるほど、キャンプとはなんとも奥深い。アテナ、そちには、師匠がおるのか? それはクラインベルト宮廷大魔導士ミュゼ・ラブリックの言葉かの?」


「いいえ、それは私の爺です。教育係でもありますが、私の師匠と呼んでいる人ではありません」


「ふむ。興味がわいてきた。その師匠とやらの名はなんと申す? アテナよ」


「ヘリオス・フリートと申します。私と、クラインベルト前王妃であり、実の母ティアナの命の恩人でもあります」



 ヘリオス・フリートの名を聞いた瞬間、陛下は明らかに驚いた顔をした。



「大事な話をする前に、お前の事をもっと知りたくて少し会話を楽しもうとしていたのだが、これはとんでもない名前が出てきたな。伝説級冒険者ヘリオス・フリートの弟子が、クラインベルトの第二王女とはな。なるほど。それなら期待できそうじゃ」



 そう言い、陛下は立ち上がって、手を大きく上げておろした。すると、玉座の間にいた近衛兵達は、部屋から出ていき姿を消した。今、この部屋には陛下と私達しかいない。

 


「陛下……?」


「ここからは、ちと他の者には聞かれたくない話になるからのう。それで、本題なんじゃが冒険者アテナ一向には是非、余の依頼を受けてもらいたい」



 私は顏をあげて、陛下の目を真っ直ぐに見て答えた。



「それはお話を聞いてからです、陛下」



 陛下はまた大笑いすると、依頼内容をギブンに話すよう指示した。ギブンは立ち上がると、こちらを振り返り私達へ依頼内容を説明し始めた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇アイノン・シュリス 種別:ヒューム

変な話、ヴァレスティナ公国のウィザード。変な話、キョウシロウがグライエント坑道にいるというルイ・スヴァーリ伯爵のもとに向かっている時に、到着が遅いと思って迎えに来た。変な話、ルイ伯爵の連れている【ウィザード】とはこの男。

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