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第337話 『洞窟温泉 その3』




 ――――楽しみにしていた、ドワーフの王国での魅力的なご馳走の数々。


 それを私達は、ミューリとファムに紹介してもらったベップさんと、その奥さんのユフーインさんの宿で堪能させてもらった。


 ルシエルやルキアやファム、カルビもそうだけど、もう食べすぎてパンパンのお腹で部屋へ辿り着くなり転がってしまっている。


 メール、ミリー、ユリリアはちゃんとそこらへんは考えて食事をしていたようで、これから少し3人でお酒を飲みにいくのだそうだ。この3人娘は、本当にしっかりしている。


 それで私はと言うと、ミューリとシャルロッテと一緒に、もう一度大浴場の方に湯につかりに来ていた。


 まさか温泉卓球であんなに白熱するとは思わなかったし、あんなに汗を掻くとも思ってもいなかったからね。もう一度、汗を流したいと思った。色々な効能のある温泉にももう一度位は、入っておきたいと思っていたし。


 かけ湯をして、3人一緒に湯につかる。湯気。お湯の流れる音。ふうーーーっと息が漏れる。


 そのまま、温泉になっている洞窟を、もう少し奥の方まで進んでゆったりと落ち着ける感じのカンテラだけの灯りのある場所で、ゆったりとお湯につかった。


 隣にはミューリとシャルロッテ。


 考えてみればシャルロッテとは、ガンロック王国で初めて出会い、私達やガンロック王国王女であるミシェルやエレファの敵として現れた。


 ミューリとファムに関しては、ドワーフの王国を目指していた途中で、たまたま見つけた冒険者達の休息拠点ロックブレイクで、偶然知り合って彼女達の依頼を受けて知り合った。そしてそのまま意気投合して、今もその縁がつづいているのだ。


 まあ辿れば、メール、ミリー、ユリリアもそうだし、ルシエルやルキア……それにカルビだって偶然出会い、そしてそのまま縁が続いて今がある。


 そう考えると、今一緒に仲良く隣で気持ちよさそうに湯につかっているミューリとシャルロッテがいる事に、凄く不思議な感じがした。


 人の出会いというのは、いくつもの偶然と奇跡が折り重なったものなのかもしれない。私はこんな素敵な子達に出会えたことに素直に感謝したい気分になった。



「アテナ? 温泉が気持ちいいのは解りますけど、何をずっと目を細めて頷いたりしていますの?」


「えー? 別に何もないよ。シャルロッテの肌が雪のように白くて、温泉に入るとそれに少し赤みがさして綺麗だなーって思っているだけだよ」


「まっ!! なななな、なにをいきなりいっていますのかしら!! それなら、アテナやミューリの肌だって、艶があって玉のような肌ですわ」


「僕、そんな事言われたの初めてだなー。っていうか、いつもはファムかノエルとしか温泉に一緒に入ったりなんてしないけど」



 ノエル……そう言えば、ミューリとファムの仲の良い昔なじみの冒険者がいた。


 ルシエルがその子の育てた肉を盗んで、殴り合いになった。フフフ。私はまだあっていないけど、ノエルは今この王国にいるみたいだし、私も会いたいな。ルシエルやメール達は既にあっていて、一緒にラーメンを食べに行ったんだっけ? 


 いったいどんな子なんだろう? そんな事を巡らせていると、私もノエルと言う子に無性にあってみたくなった。



「それじゃそろそろわたくしは、あがろうかしら」


「え? どうして? 珍しいトリオだし、もう少し一緒に湯に浸かっていようよ」



 ミューリがシャルロッテに抱き着く。そして、シャルロッテが胸やらを隠していたタオルを強引に奪い取った。



「もう、返してくださらない!」


「えー、返したら温泉からあがっちゃうじゃん! もう少しでいいから、僕やアテナとお話ししようよ」


「わかりました! わかりましたから、タオルを返してくださる? でも、ここに一緒にわたくしがいてもいいのかしら? アテナに大事な話があるのでしょ? わたくしの耳に入ると、色々とまずい事なんじゃなくて」



 ふむ。そう言えば、ミューリはドワーフ王と親しげな関係で、そのドワーフ王から仕事を受けると言っていた。そして、その依頼を私達にも頼みたいと――


 シャルロッテの言い回しからして、その内容もある程度推測できる。


 恐らく、シャルロッテ達――公国がこの国の王子であるガラード殿下と結託して、何か良からぬ事をしようとしているのだろう。

 

 それに対しミューリは、ドワーフ王を守る為と公国や帝国の陰謀を打ち払うべく、その為の何かを私達にも手伝って欲しいと考えているに違いない。


 ミューリは頭を摩って申し訳なさそうにシャルロッテに答えた。



「実はそうなんだ。ナハハハ。だから、オフレコって事でさ。よろしく」


「……なるほど。つまり、ここで聞いた事は、わたくしの胸の内に閉まっておけということかしら。随分と信用していますのね。それならわたくしも言わせてもらいますが、恐らくはこれからわたくしとミューリ達は、敵対関係になりますわよ。それでも、わたくしはここにいても良いのかしら?」



 対立関係ではなく、敵対関係? やはりそれって……



「それって、こういう事? 公国はこのドワーフの国の王、ガラハッド陛下の命を狙っているって事? もしくは誘拐……」



 かつて、ガンロック王国でシャルロッテと初めて出会った時、彼女は敵として現れガンロックの王女であるミシェルとエレファを誘拐しようとしていた。


 今は、その全てがシャルロッテの意思ではないと解っているけど、彼女も公国には逆らえない立場。


 ……それに誘拐しようとしていたのなら、暗殺だってありえるかもしれない。シャルロッテが、ガラハット王を暗殺し、その息子のガラード殿下に実権を握らせる。そうすることで、今後の全てが公国と帝国に有利に働く。


 シャルロッテのお父さんであるルイ・スヴァーリ伯爵や、ポールっていうちょび髭男爵もそうだけど、シャルロッテやドルフス・ラングレン男爵も、立場上は公国からの使者という事にはなっている。だけど、ガラード殿下と結託しているならば、使者というのは表向きに過ぎないだろう。


 公国……つまり、私の祖父にもあたるエゾンド公爵の命で派遣されてきているのであれば、そういう事もやるという事。エゾンド・ヴァレスティナという人は、そういう野心に溢れている男だ。


 私があれこれ考えていると、ミューリは困った表情をして見せたが、シャルロッテは私の目を見てしっかりと頷いた。


 やはり公国や帝国は、チャンスがあればガラハット陛下をなきものにしようとしているのだ。


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