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第335話 『白熱!温泉卓球!! その3』




 私のルキアに対する信頼と威厳を賭けた大勝負の結果は、5対4。なんとかその信頼と威厳を保つ事ができた。


 それにしても、ルキアの卓球スキルは、驚く程のものだと思った。


 確かに私は卓球にかけてはほとんど素人だけど、それでも持ち前のセンスと運動神経でそれをやってのけるというなんでも可能にするイメージが、もはやルキアの中ではできている。


 だから、そのルキアの目標になり続けていたいという欲があった。かつて、私が師匠や姉のモニカを追いかけて、学んだように。


 でも、いきなりの二刀流はちょっとズルだったかな。まあ、でもそこは経験が豊富にあるルキアとのハンディキャップ的なものという理由で納得してもらおうと思った。


 どうしても負けられないと思ったのだから、仕方がない。



「流石アテナです。結構自信あったんですけど、やっぱりかないませんね」


「いや、ルキアも凄い強かったよ。きっと次やったら、私負けちゃうかもね。それにしても、色んな汗かいちゃったから、食事を済ませたらまた後で一緒に温泉に入ろうよルキア」


「はい! いいですね。カルビも一緒に入ろうね」


 ワウッ



 なんとかルキアの私に対するイメージを守り抜けた所で、そんな和やかな会話に花を咲かせていると、ルシエルが叫びだした。



「よっしゃあああ!! じゃあこれで最後の勝負だ!! 今度こそ、オレの本当の実力を見せてやんよ!! かかってこい、ファム!!」



 え? どういう事? まだ卓球続けるの? もうしんどいんだけど? っていうか、お腹減ったよう。


 私は困った顔で、ルシエルをつついた。



「そろそろご飯にしよーよ。ねえ」



 しかし、ルシエルは頑として動かない。と言うか、大飯ぐらいのルシエルが唇をかんで我慢している。それ程の戦いなの? この勝負?



「ファム!! 最後にタッグマッチで勝負を申し込む!! シングルじゃ負けちまったけどな、タッグならオレ達の勝ちよ。ウハハハ」


「ふうー。タッグでもルシエルはファムには勝てない。ファムが唯一ルシエルに不覚にもしてやられたのは、一度だけ。地底湖で魔法を教えろと、脅迫まがいに水着を引っ張り上げられ物凄い喰い込まされた時だけ」



 え? なにそれ?



「ほう。ならば、勝負だ!! これで泣いても笑っても王座決定戦だ、どちらのコンビが優れているか、はっきりさせようじゃねえか!」


「いいだろう、解った。それじゃ、どうする? シャルロッテかメール、もしくはミリーかユリリアが参加する? アテナは疲れているみたいだし、ルキアはやるとしても、ルシエルと組みたいよね?」


「わ、わたくし? わたくし、テニスでしたら多少は自信がありますけど、この卓球と言う競技はわたくしは苦手ですわ」



 シャルロッテの言葉に、メール達も顔を見合わせている。彼女達は勝負と言うか、楽しめたらいいという子達だ。そもそも温泉卓球ってそういうものだと思うんだけど。



「フハハハ」


「え? どうしたの、ルシエル?」



 え? 本当にどうしたの? ルシエル? 私もそう思った。



「ベップの宿、温泉卓球最強タッグ王座決定戦といや、最強タッグ同士の戦いでがしょー!! ファム、それにミューリでこんかーーい!!」



 そのルシエルの言葉に、ファムの先程まで呆れはてたような目は、鋭いものに変わった。



「それだともうゲームにならないよ」


「言うじゃないか、ファム!!」


「それはいいけど、本当にいいの? ルシエルも知っていると思うけど、ファムとミューリがこのノクタームエルドで他の冒険者達になんて言われているか知っている?」


「え? マッシュ姉妹?」


「…………っぶ!」



 確かに、ファムとミューリとの出会いはキノコ採取の依頼でだった。髪型も二人とも可愛らしいマッシュヘアだし。


 迂闊にも私は吹き出してしまった。メールやミリーもこれには大笑いしてしまい、ユリリアは必死に二人をいさめようとしている。


 ミューリに関しては、怒るどころか頭を摩って照れ臭そうにしているので、それが余計に面白く見えた。



「どうやら、ルシエルはファムを怒らせたようだね!! いいよ!! ウインドファイアの実力、直に味合わせてあげる!! それでそっちは誰と組むの」



 ルキアを前に押して、こっそりと逃げ出そうとした私の腕を掴み上げるルシエル。



「よーーし!! やるぞ、アテナ!! オレ達の力、目にもの見せてやろうぜ!! な? な? なー?」


「もうもうもう、解った、解ったからー。もう、疲れたって言っているのにー」



 お腹も減っているし、ルキアとも予想外の白熱をしてしまって疲れていた。もう開放して欲しかった。


 でもその反面、確かにウインドファイアっていう言葉を聞くと、ちょっと勝負してみるのも面白いかもと思えた。


 今度は、全員が私達の勝負に注目した。


 台のそれぞれ端に、私とルシエル、そして反対側にファムとミューリがラケットを握って並んだ。


 そして、台の真ん中にメールが立つ。



「それじゃ、私が審判やらせてもらいます。勝負は……もう、アテナさんお腹減っているみたいですし、お料理を準備して待ってくれているベップさんやユフーイんさんにも悪いですから、先に3点取った方の勝ちにしましょう」


「解った」


「よっし! やったるでーー!」


「ちょっと、ルシエル」


「なんだ?」


「よし、やったるでーとか言ってるエルフをあんまり見たくないんだけど……」


「えーー、いいじゃんかよー。ここにはリラックスしに来たんだろ? 今位、リラックスさせてくれよ」



 どの口でそんな事を言うのだろうかと思った。いつもリラックスしているじゃない。



「それじゃ、始めましょう! まずはジャンケンで先行後攻決めてください」


「ファムはどちらでも、いいよ。ルシエルが好きな方を選べばいい」


「へえ、じゃあ先行。サーブ権とっぴ! 後で、吠えずらかきなさんなよファム君」


「かかない。だから、さっさとかかってこい」



 バチバチと火花を散らす二人をよそに、ミューリと握手をする私。


 じゃあ折角やるんだから、いっちょ気持ちよくウインドファイアの二人に勝って、気分良く晩御飯を頂きましょうかね。


 そう思った刹那、ルシエルがサーブを放った。


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