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第321話 『邪悪なる何かの活動』




 ――――ロックブレイクへ戻ると、ボク達のもとへ冒険者や行商人達が歓声をあげて集まってきた。


 皆凄く喜んでくれているし、レインやサミュエル、ヴァスドも多少の怪我は負ったものの、手当てして休めば治癒する程度のもので、本当に良かった。防衛戦は、成功した。


 ボクはとりあえず、冒険者ギルド関係者のラコライに呼ばれ会いに行くと、蟲達の討伐報酬と今回のこの冒険者達の拠点ロックブレイクを守った功績を考慮して、冒険者ランクBに昇進した事を告げられた。これで、ボクも上級冒険者の仲間入りだ。


 レイン達もそれぞれに報酬を受け取ったりしている。


 今回蟲達がここへ攻め寄せてきたことにより、戦う事を決めてここに残った者、つまり防衛線に参加した者達には全員に報酬が出ていた。


 ボクはとりあえずその辺に腰をかけて、ラコライが皆への報酬の支払いが終わるまで待っていた。



「報酬の支払いがようやく全部終わったようだね」


「おお、君はマリン。マリン・レイノルズ。君の凄まじい活躍に、感謝するよ。そう言えば、君は冒険者ルキアを追っているんだったな。じゃあこれから、ルキアやアテナがいるドワーフの王国に向かうのかい?」



 そう。ボクはリアのお姉さんであるルキアを追っている。彼女に会って、妹がカルミア村やクラインベルトの王都で、第三王女のルーニ様と一緒に元気でやっている事を伝えなければならない。

 

 そのルキアは、ここから北西にあるドワーフの王国に向かったという。


 うーーん。また、旅か。旅は嫌いではないけれど、ここノクタームエルドは洞窟世界。空がないし、土も踏みしめる事が極めて少ない。できれば、大空の下のもと……草木のにおいを嗅いで旅をしたいものだ。だけど、テトラとの約束を果たさねばならない。



「ああ。ルキアを追ってボクもドワーフの王国へ向かおうと思う。でも、それは明日にするよ。テントも既にレンタルしたし、今日はここで休んで明日旅立つよ。それでいい」


「そうか、確かにその方がいいな。……それで、他に何か?」



 そう。気になることが一つあった。それをラコライに伝えておこうと思ったのだ。



「ラコライに伝えておこうと思った事があるんだよ。冒険者ギルド関係者で、このロックブレイクという場所に留まっているあなたにね」


「ほう……それは、なんだ?」


「この場所は、以前冒険者アテナやルキアが立ち寄った時に、大量のアシッドスライムが攻め寄せるという事があったらしいじゃないか。それに、今回は大量のダンゴムシだ」


「オオダマトゲヤスデだな。確かに、立て続けにこんな事が起きるのは、珍しい。それが気になる事なのか?」



 ボクは深く頷くと、真っ直ぐにラコライの目を見た。



「その通りだよ。ボクはウィザードなので、黒魔法によく精通しているんだ。それでね、この際仕様が無いから話すけど、実はボクの魔力の根源は、一般的な魔力だけでなく極めて純粋な精霊力でもあるんだ」


「それはどういう事だ。あまり、俺は魔法には詳しくないからな。できればもっと解る様に話して欲しいんだけど……」


「端的に言うと、ボクの体内には魔力と精霊力があるって事だよ。いや、宿っているというべきか。まあ、それはいいとして、それでボクは普通のウィザードよりも魔の気配というのだろうか……邪悪なるもの、そういうのに敏感なんだ」



 ラコライは、まだいまいちボクが話すことを理解していないという顔をしている。確かに、いきなりこんな事を言われても混乱するだろう。


 どう話せばいいか考えていると、あの蟲達と一緒に戦った老剣士が何処からか姿を現し、ボクとラコライの話に割って入った。



「はっきり単刀直入に言ってやらんとわからんぞ、水魔法使いの娘。この場所にまた魔物が攻め寄せるかもしれないってな。そして、この付近でもっと巨大な魔が現れようとしているってな」

 

「きょ、巨大な魔!! ど、どういう事ですか? ヘリオスさん!!」



 ヘリオス? この老剣士の名前はヘリオスというのか。そう言えば、一緒に戦っていたのに、名前を聞きそびれていた事を今頃になって気づいた。



「俺は自慢じゃねーが、魔法なんて使えねーしな、この身体の内側に魔力なんて大層なもんはねえ。でもな、感だけは当たるんだよ。第六感っていうのか? その感と経験、それと俺の持っている情報を足して推測すると……このノクタームエルドに地竜が現れるかもしれねえ」


「ち、地竜!! 地竜って!? あの地竜ですか?」


「そりゃそーだろ!! ドラゴンだよ、ドラゴン。なんとなくドラゴンってのは、近くに迫ってくるとその気配というのか存在がバカでかくて感じるんだよ。最近、このノクタームルド内で活発にリザードマンが現れ悪さしているみてーだから、それとも何か関係があると俺は睨んでいるんだけどな」



 ラコライは目を丸くして、驚いていた。ボクは、そのヘリオスという名の老剣士の顔を見て言った。



「なぜ、あたなはリザードマンと地竜に何か関係があると解るのかな? 直感だけで、そこまで推測できるのかい?」


「あ? だから、言ったろ? 俺の入手した情報も足してるって。それに、この俺がここまで断言できるって事は、ちゃんと調査した上で言ってるって事だよ」


「なるほど、そういう事か」



 老剣士ヘリオス程の冒険者の情報なら、宛てにできるという事だと思った。どれ程、凄い冒険者なのかは知らないけど、こうして向かい合っているだけでもなんとなく凄みを感じる。


 ラコライは、縋りつくようにヘリオスに助けを求めた。



「それじゃ、そのリザードマンと地竜をなんとかしないと、またここに別の魔物の群れが雪崩れ込んでくるって事ですか? それならヘリオスさん、なんとかなりませんか?」


「もうとっくに、何とかしようとしているよ。だから、調査してリザードマンが悪さしそうとか知っているんだろ? とりあえず、それはまあなんとかするから一旦置いといて、マリン・レイノルズ。お前はちょっとツラを貸せ。あっちで話があるからついてこい」


「え? ボク?」


「そう、ボク」



 ボクはヘリオスという名の老剣士にそう言われ、ロックブレイク南に位置する誰もいない空洞まで連れていかれた。


 彼が何者なのかこれから話してくれるが、まだ彼の事は剣の腕がバケモノクラスという事だけで、他の事は何も知らない。


 一人でほいほいと言われるがまま、そんなまだ知り合って間もない剣士について行くのはどうかと思うが、自分の方が圧倒的に強いという確たる自信があったので大人しくついて行った。魔法は、剣よりも強い。


 ヘリオスはかなり有名な冒険者で信頼があるのか、「じゃあこの娘を少し借りる」とラコライに言うと、彼は頷いてボク達の後を追って来るというようなことはしなかった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ヘリオス・フリート 種別:ヒューム

謎の老剣士の正体。SSランクの伝説級冒険者。アテナやモニカの師匠。ノクタームエルドで活動し始めたリザードマンと地竜に気づき、この地までやってきて調査している。マリンの尋常ではない魔法能力にも、興味を持つ。

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