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第308話 『ビルグリーノの一団 その2』




 女盗賊の攻撃は直線的だった。真っ直ぐにこちらに駆けてきて、剣を振ってくる。涯角槍。私がそれを弾くと重ねて弐の剣、参の剣と振ってくる。


 私の振るう槍と、彼女の剣が交差し打ち合う度にその速度も攻撃の重さもお互いに増していき、息があがってくる。だけど、苦しさの反面なにか心地良さのようなものも、上手くは言えないけど何か高揚させられ込み上げてきていた。


 なんだろう、この感じ。



「立派な槍を持っている時点で、ただのメイドでは無い事は明白だが……なるほど、なかなか手強いな!!」


「あなたこそです!! 迷いのない剣筋、幾度となく鍛錬したのであろう剣の技、見事だと思います!!」


「なにを!? 減らず口を!! 行っておくが私の本気は、まだまだこんなものではないぞ!」



 女盗賊はそう言って、剣を上段に構えた。ピリっとした感覚。きっと何か大技が来るのだと解った。



 ――緊張!!



「我が奥義!! 受けてみろ!!」



 言った瞬間だった。視界の外から急にボーゲンの操る馬が飛び出してきて、私が対峙している女盗賊を跳ね飛ばした。



「ええええーー!!」


「ぎゃああっ!!」


「おっと、わりい! でも、乱戦中によそ見している方が馬鹿なんだぞ」


「ボ、ボーゲン……」


「とりあえず、ビルグリーノがヤバい。あっちも手練れと戦っている。お前は、白兵戦……っていうか、正面からの戦いが得意なんだろ? 行って助けてこい」


「は、はい!」



 見回すと、アレアスもダルカンも賊と戦っていた。メイベルやディストルも、複数に囲まれている。ミリスは、騎乗しながらも敵から距離をとって援護魔法を唱えている。つまり、ビルグリーノさんの所へ今行けるのは、私しかいない。


 ボーゲンが指示した方へ向かうと、ビルグリーノさんともう一人の女性が、盗賊8人を相手に戦っていた。ビルグリーノさんが斬り込んで一人倒した後、仲間の女性に支持を出す。女性は踊り子衣装のような綺麗な服装で、両手にサーベルを持っていた。


 

「今だ! マルゼレータ!!」


「あたしに、お任せだよ!!」



 マルゼレータ。そう呼ばれた女性は、踊り子のように華麗に舞いながら敵を斬り倒した。すると、ビルグリーノさん達を討ち取ろうとしていた残り3人のうち2人が同時に彼女に斬りかかる。


 しかし、彼女は素早く回転する。身に着けていたスカートが高く舞い上がった。



「アッハッハッハ!! これでも喰らいな! レイザーワルツ!!」


「ギャアアアアア!!」



 そしてスカートの裾が落ちると、襲い掛かった二人の賊の身体には無数の切傷が浮き上がり、出血して倒れた。いったいどういう技なのか? 


 注意してマルゼレータさんのスカートの裾を見ると、そこにはスカートを一周して剃刀のような刃が装着されていた。



「アッハッハッハ! あっという間に形勢逆転!! 2体1に、なっちまったねー!! どうするさね、グリエルモ!!」



 グリエルモ? あの盗賊の名前――でも、ビルグリーノさんもあのマルゼレータさんて人も、あれだけ強ければ私の助け何て必要なかったんじゃないだろうか?


 そう思った時だった。グリエルモと呼ばれた盗賊は、素早く身を屈めマルゼレータさんへ狙いを定めると、両手に持つボウガンを連射した。



「な、なに!? 連射できるボウガンだなんて!! キャアアアア!!」


「あ、危ない!!」



 4本ある尻尾のうちの1本が光り輝く。咄嗟に九尾の力を開放し、素早くマルゼレータさんの方へ飛びこむ。


 グリエルモが、二挺の特殊なボウガンで矢を連射で放っている前に飛び込み、涯角槍(がいかくそう)を高速で振り回し矢を弾き飛ばした。


 間に合わずに叩き落とせなかった矢も何本かはあったけど、マルゼレータさんの方を見るとスカートに何本か刺さっているだけで事無きを得たようだった。


 そして私のいきなりの登場に、ビルグリーノさんやマルゼレータさん、それにグリエルモの視線は私に集まってしまった。


 私は涯角槍(がいかくそう)を頭上でくるくると回した後、左右にフォンフォンと音を立てながら回転されて見せ、正面に構えた。グリエルモの喉の辺りに穂先を合わせる。



「私は、メイベルとディストルの仲間です。つまり、ビルグリーノさん達を助けに来ました。ここからは、私も加勢させてもらいます!」


「チッ!! これだけ増えると流石に仕留めきれんな! 獣人の女、よくも俺の二挺ボウガンの矢を叩き落としやがったな。そっちのビルグリーノとマルゼレータ、それにメイベルやディストルも知っているがお前みたいな隠し駒がまだいたとはな。一応、名前を聞いておこう」


「わ、私の名前はテトラです。テトラ……テトラ・ナインテール!」


「そうか! テトラ・ナインテールというのか! 俺の名は、グリエルモ・トルク。見て解る通り、【アーチャー】だ。テトラ、お前の事は、しっかりと覚えた! 貴様も要注意人物だと記憶に留めておこう!! じゃあな!!」


「待て!! 仕掛けてきておいて、みすみす逃がすかよ!!」



 ビルグリーノは、そう言って手にしていたシミターを大きく振りかぶって投げた。しかし、グリエルモはそれをサッとかわして逃げ出した。


 最初に私が戦っていた女剣士も、他の賊達と一緒にそれに続いて逃げた。


 私は追いかけるべきかどうしようかと迷ったが、ボーゲンが戻ってくると「もういい」と首を振ったので、追わなかった。


 こうして、私達一行は偶然にも味方の一隊と合流する事ができ、襲撃されている彼らを守ることができた。


 ここからは、このビルグリーノさん率いる攻撃部隊と共にトリケット村を目指す。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇覆面女剣士 種別:?

ビルグリーノの一団と戦闘を繰り広げていた賊の一人。賊にありがちな喧嘩殺法ではなく、洗練された剣術を使用する謎の剣士。その剣術は、洗練されたもので手を合わせたテトラも刃を合わせているのに、楽しいと思える程であった。何者?


〇マルゼレータ 種別:ヒューム

ビルグリーノの一団の一人。スカートの裾についた無数の剃刀で攻撃する『レイザーワルツ』という技を使う。ナイフの腕も相当なもので、一団内でもマルゼレータの姉さんと一目置かれている。いつもビルグリーノの傍らに侍っている。


〇グリエルモ・トルク 種別:?

覆面の賊のリーダーと思しき男。ビルグリーノの一団を強襲する。両手に持つ計二挺のボウガンを連続で放つ事ができる。矢の装填方法は不明だが、ボウガンは特殊な物でカートリッジが付いている所からそこに何本もの矢が装填されていると思われる。またかなり身軽で、トリッキーかつ素早い動きから繰り出されるボウガンの矢は恐ろしく脅威。クラスは、アーチャー。

 

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