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第303話 『ゴブリンキング その1』




 洞窟内に入ると、更にゴブリン達の死体がそこら中に転がっていた。これをメイベル達は、たった二人でやったのだろうか。でも、メイベルに至ってはボーゲンと同じくAランク冒険者。それを考えると、この位の事をやってのけるのも、普通なのかもしれないと思った。



「気を付けろー、狐女。そこら中にゴブリン共の死体や武器が転がっている。またそれに躓くとかっていう、お約束のドジ展開は止めてくれよ」


「ちゃ、ちゃんと気を付けてますよ! ……って、あ!!」



 そう言った傍から、私はその辺に転がっていた棍棒に蹴躓いた。正確には、ぎりぎり踏みとどまったので転んではいない。



「えへへへへ……」



 誤魔化す感じでボーゲンを見ると、呆れた顔で溜息をつかれた。うっうーー。

 

 ボーゲンは洞窟内の壁に掛けられている松明を一つ手に取ると、それを私の方へ放った。受け取ると、ボーゲンは自分の分の松明も手に取った。再び、洞窟内の探索を始める。


 しかし、洞窟内は悪臭がしてとてもつらい。ボーゲンを見ると、不機嫌な表情はしているけど、いちいちそんな事を気にしていられないといった様子だった。


 ウウウウウウウ……



「何か、向こうで聞こえるな。行ってみるか。ついてこい、狐女」


「そ、その狐女ってやめてほしいです。ちゃんと、名前で呼んでいただけませんか?」


「ああ? こんな時にうっせーな!! 知るか、黙ってついてこい、狐女!」



 私はシュンとして、ボーゲンの後に続いた。


 洞窟を奥に進んで行くと、あちこちに白骨化した死体が転がっていた。あれは、ゴブリンじゃない。人間の亡骸……


 ボーゲンは、その辺に落ちていた手斧を手に取ると、もう一方の手で帯刀していた剣を抜いた。声が聞こえる!! 誰かが戦っている声だ!!



「すぐそこだ。こっちへこい、狐女!」


「は、はい!」



 突き当りを曲がる。すると、そこにはまた沢山のゴブリンの死体が転がっていて、その中心にはメイベルとディストルが武器を手に取り立っていた。


 ディストルは、まだ息のあるゴブリンを片手で掴み上げている。しかし、こちらに気づくと、容赦なくその掴んだゴブリンを地面に叩きつけた。叩きつけられたゴブリンは、まるで潰れたトマトのように弾けた。


 血に塗れるメイベルとディストルに、私は暫くあっけにとられたように、言葉を失ってただ茫然と見つめていた。



「よう! ミリスは何処だ? ゴブリンはこれで、全部か?」


「いや、ご覧の通り大概はあっしらが退治しやしたがね、まだ奥に大物がいやすよ。ミリスはきっとそこにいやしやすね」


「ほう、面白い。その大物ってのが、ゴブリンキングか?」



 頷く、メイベル。ディストルはおもむろにタオルを取り出すと、自分に飛び散った鮮血を拭った。



「よし、じゃあここからは4人で進もう。後衛は俺様とメイベル。前衛はパワー型の二人に任せた」



 パ、パワー型? 最初、私はそれを自分の事を言われているのだと気づかなかった。


 すると、再びバシンっとボーゲンにお尻を叩かれる。



「いたい!! 痛いですってば!」


「ぼっとすんな!! パワー型ってのは、おめえとディストルだろがよ!! 急げ、ミリスがピンチだ!!」



 そうだった、ミリスを助けないと。


 左手に松明、そして右手に持つ涯角槍(がいかくそう)を強く握ると、ディストルと並んで洞窟を更に奥へと進んだ。


 最奥まで行くと、30匹程のゴブリンと、その後ろにトロルのような巨大なゴブリンが3匹待ち構えていた。その中の1匹は特に凶悪な顔で、恐ろしい姿をしており巨大な鋸のような剣を手に持っていた。


 私は、その巨大な剣を持つゴブリンこそが、ゴブリンキングなのだと悟った。



 グアアアアアオオオオオオオオ!!!!



 凄まじいゴブリンキングの雄叫び。こ、鼓膜が破れそう。皆、耳を塞いだのを見て私も頭の上に生えている耳を慌てて塞いだ。


 ゴブリンキングは、雄叫びを終えるとこちらを凄まじい形相で睨みつけ、巨大な剣もこっちへ向けた。すると、横から4匹のゴブリンが巨大な石斧を運んできてゴブリンキングに手渡した。


 ゴブリンキングは、その巨大な石斧を手に握るとニヤリと笑い、唐突に振りかぶってこちらへ向かって投げてきた。


 危ないっ!! 


 九尾の力を解いて、跳んでくる石斧を止めないと!! そう思った刹那、先にディストルが前に出た。


 そして、愛用のスレッジハンマーを両手でしっかり握り、ブンっと勢いよく回転するように振って石斧を見事に叩き落とした。叩き落とされた石斧は、その衝撃で少し砕けている。


 ゴブリンキングのパワーと先制攻撃――ボーゲンもメイベルもそれに目を奪われている様子だったが、でもそんな事よりも私は、ディストルのそのパワーの方に驚いていた。確か、Eランク冒険者って言っていたけど……



「あっしがね」


「え?」


「Aランク冒険者のあっしが、ディストルと組んでいるのにはそれなりの理由があるんでやんすよ。そうなったストーリーがね、あるんでやんす。ディストルは確かにEランク冒険者でやすが、戦闘力にかけてだけは、Aランクレベルなんでやんすよ」


「そ、それって……」


「そんな事より、テトラ。あれを見すでやんす。あのゴブリンキングの後ろ、横たわっているのはミリスでやんしょ」



 メイベルの言葉に私は、すぐに反応した。見ると、確かにミリスがいる。気を失っているのかゴブリン達の後ろの方で横たわっていて動かない。



 グオオオオオオオオ!!



「くるぞ!! 全員でかかってくるぞ!!  狐女とディストルは、何も考えず正面から行ってゴブリン共を相手に派手に暴れろ!! 俺様は援護するから、メイベルは隙を見てさっと行ってミリスを助け出してこい。得意だろ、そういうの?」



 ボーゲンの言葉にメイベルは、くっくっくと笑って頷いた。



「よし!! じゃあいけ!! ミリスを助けたきゃしっかり暴れて注意を引いてこい!! 狐女!!」



 よ、よーし!! できるだけ暴れて気を引く!! 


 私は手に持っていた松明を投げすてると、涯角槍(がいかくそう)を両手で握り、ディストルと並んでゴブリン達に向かって突撃した。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ゴブリンキング 種別:魔物

ゴブリン達の王。身体も大きく頭も通常のゴブリンよりも賢い。そして、何より大きく違うのは、統率力。ゴブリンキングがいる辺りには大量のゴブリンがおり、それを率いて村や街を襲う場合もある。


〇ゴブリンジャイアント 種別:魔物

ゴブリンの亜種。ゴブリンとは、人間の子供程度の背丈で力も人間に劣るが、ゴブリンジャイアントはトロルのように身体も大きく力も強い。ただ、能力はトロルよりで知能は通常のゴブリンと変わらない。

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