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第298話 『闇夜の刺客 その3』




 相手の攻撃を利用しての放つカウンター攻撃の必殺技、方円撃(ほうえんげき)方円撃(ほうえんげき)を狙おうとした瞬間、距離をとられた。

 

 棒を両手に持ち、連続して打ち込んできたローグウォリアーは、急に何かを察知したように、後ろへバク転して距離をとったのだ。こう警戒されていると、カウンターは放てない。


 そして、今度は選手交代とばかりに、ビーストウォリアーが持ち前の怪力で、丸太を振り回して突貫してくる。



「本当にあれは女かよ!? まるで戦車を相手にしているようだ!! もしくは、トロル」


「き、きますよ!!」


「チッ! 下がれ、狐女!!」



 ボーゲンは、そう言って回避しようとしたが、私は足を止めて突貫してくるビーストウォリアーと向き合った。



「任せてください!! 私が受け止めます!!」


「ちょ、おい!!」



 ドシーーーン!!



 大きく振りかぶったところから思いきり振ってきた丸太を、涯角槍で真正面から受け止めた。尻尾は2本光を放っている。――――それで互角のパワー!



「なに!? この私と張り合えるだと?」


「う、嘘だろ? と、止めやがった!! そんなひょろっこい身体の何処に、そんなパワーがあるんだ?」


「うぐぐぐぐぐ!! ボーゲン!! 早く、お願いします!!」


「言われんでも、わかってる!!」



 ボーゲンは腰に巻いていた鞭を取り出すとそれを放った。ビュンっとビーストウォリアーの足首に巻き付けると、ボーゲンは勢いよくその鞭を引っ張った。



「ぐわっ!!」



 ドスーーーンッ



 足を取られて、派手にひっくり返るビーストウォリアー。ボーゲンは装備しているホルスターからナイフを抜くと、ひっくり返っているビーストウォリアー目掛けて飛びかかった。


 しかし、直前でローグウォリアーに邪魔される。



「くっそ! やっぱり手ごわいな、こいつら……いったい、何もんなんだよ」


「早く起きろ、ビーストウォリアー!」


「お、おう……」



 むくりと起き上がると、再び2対2の図式になって睨みあった。



「せいやああっ!!」



 ボーゲンが鞭を放った。ビュンという音と共に鞭が近くに落ちている木の枝に巻き付く。



「これでも喰らえや!!」



 枝の先はへし折れていて、尖っている。ボーゲンは鞭でそれを振り回して、ローブの二人を攻撃した。


 ローグウォリアーは、その攻撃をさっと二回三回と避けて見せる。ボーゲンは、狙いを大きな身体のビーストウォリアーに変えた。


 枝が命中するかもというところで、ビーストウォリアーは丸太をブンブンと振って弾いた。しかし鞭は、しっかりとビーストウォリアーの腕に巻き付いていた。



「ハッハーー!! お前らが相手しているのは、Aランク冒険者の俺様だぞ。ちょっと舐めすぎているんじゃないのか」


「バカめ!! 腕力は圧倒的にこちらの方が上なんだ!! こんなのは、意味がない」



 ビーストウォリアーはそう言って、鞭が巻き付いている方の腕を思いきり引いた。その反動で、鞭を持っていたボーゲンも勢いよく引っ張られビーストウォリアーの方へ飛んだ。



「終わりだ! バーン・グラッドの弟分、ボーゲン・ホイッツ」


「ボーゲン!!」



 ビーストウォリアーが自分の方へ飛んでくるボーゲンに狙いを定め、丸太を思いきり振りかぶった。助けに入らないとと思ったが、ローグウォリアーが私の方へ棒を交互に打ちこんできて邪魔をする。



「うわおおおお!! ま、まずい!!」


「死ねええええ!!」



 丸太がボーゲンに直撃した――っと思った瞬間、鞭はボーゲンによってナイフで切られていた。ボーゲンは、ビーストウォリアーが振った丸太の上を踏んで跳躍すると、その向かってくる一撃を見事にかわしていた。



「はっはーー!! どんなもんだ!!」


「くそ!! そうきやがったか!!」



 鞭を手放したボーゲンは両手にナイフを持っていた。丸太を飛び越え、ビーストウォリアーに接近し、彼女の腕を刺す。鮮血。ビーストウォリアーは、苦しそうな声をあげると丸太を捨てて後ろへさがった。



「くそがあああ!!」


「やめろ、ビーストウォリアー!! ここまでだ! 今回は我々の負けだ。一旦、退くぞ!」



 ローグウォリアーはそう言って、手に持ていた2本の棒をボーゲンに向かって投げつけた。そして、身を返して森の中に逃げ込む。私は、咄嗟に逃げ去ろうとする二人の前に立ちはだかった。



「に、逃がしませんよ!! 観念してください!!」


「観念するのは、てめーだよ!! 狐!!」



 言ったのは、ビーストウォリアーの方だった。


 ビーストウォリアーはそういうと、正面からこちらに向かってタックルし、私の身体に手を回し強引に持ち上げた。


 もちろん涯角槍(がいかくそう)で反撃したけどその刹那、横からすっと入ってきたローグウォリアーに涯角槍(がいかくそう)と腕を掴まれていた。


 ビーストウォリアーが雄叫びを上げる。



「よっしゃいくぞーー!!」


「おう!! いくぜーーー!!」



 私の身体は二人にしっかりと押さえつけられると同時に、抱えあげられるとそこから勢いをつけて地面に思いきり叩きつけられた。



『ビッグザマウンテンボム!!』



 後頭部を守ろうとしたけれど、そうさせないように腕も掴まれて背中から地面に叩きつけられた。まさに地面との衝突。あまりの衝撃に、息ができない。



「狐女ーー!!」



 ボーゲンの叫び声。そして、ローブの二人が逃げていくのが見えた。い、息ができない。


 ボーゲンは二人の後を追わず、私のもとにやってきて抱き起してくれた。そして、背中を優しく擦ってトントンっと叩いた。



「しっかりしろ、狐女! しっかり息をしろ! できるはずだ」



 い、息が……く、苦しい……助けて……セシリア……



「――――ゲホッゲホッゲホ……」

 

「そうだ、大丈夫だ。そのまま息をしろ。大丈夫だ、そうだ」


「ゲホッゲホッ……ゲホーーーォォォォオオオ」


「うおおおおおお!! てめえええ、狐女!! お前ええええ!!」



 もしかしたら、このまま私は死んでしまうかもと思って、凄く怖くなった。でも、なんとか呼吸はできた。ボーゲンが助けてくれた。


 でも、私はそんな命の恩人であるボーゲンに向かって、思いきり嘔吐してしまった。胃の中にあったものを、全て彼に吐きかけてしまったのだ。



「ぎゃあああああ!!」



 私の嘔吐物を浴びたボーゲンは、悲鳴をあげた。夜の森に、その悲鳴は木霊(こだま)した。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


方円撃(ほうえんげき) 種別:棒術

テトラの見せた棒術。相手の大きな振りに合わせて懐に回転しながらも懐に入り放つカウンター技。遠心力も加え、脇腹(脾臓や肝臓)や鳩尾などの急所を狙う為、威力も凄まじい。テトラが使用すると、テトラのメイド服のロングスカートが技の発動と共にフワッと舞い上がるので、技の見た目も綺麗で芸術的。まさにこういうのを武芸というのだろう。


〇ビッグザマウンテンボム 種別:体術

ローグウォリアーとビーストウォリアーの合体技。ローグウォリアーがその素早い動きで相手の動きと武器を抑え、ビーストウォリアーが力ずくで相手をぶっこ抜く。そこから二人掛かりで地面に叩きつけるツープラトンの威力は絶大。

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