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第297話 『闇夜の刺客 その2』




 凄まじい力で圧倒され、後方へ押されていく。そして木に叩きつけられると、私は大柄の女と木に挟まれる形になった。



「ぐっ……こ、このままじゃ。押し潰される……」



 全力で押し返そうとしたけど、それを遥かに上回るパワーで押されている。背にしている木がミシミシと唸り声を上げ始めた。



「へへへ……」



 苦悶の表情をすると、私を押し潰そうとする大柄な女の微かな笑い声が聞こえた。ううーーー、負けたくない!!


 大柄の女との力勝負を続けていると、その後ろから小柄な女がその辺に落ちていた棒を拾ってこちらに向かってきた。


 私の身体は、完全に木に押し付けられていて身動きができない。このままじゃ、あの棒で殴られる。



「うわああああ!!」



 必死になって抵抗した。4本ある尻尾のうち2本が光り輝き始める。


 ぐぐぐぐっと、体当たりしてきている大柄な女の身体を少しずつ押し返す。でも、間に合わない。大柄な女の後方から小柄な女がヒョイっと姿を現し私目掛けて棒を振り上げた。


 私は目を瞑って歯を食いしばった。くる!! この一撃を耐えないと!!


 覚悟した瞬間だった。棒を振り上げた小柄な女は、真横へ吹っ飛んだ。私を押さえつけていた大柄な女も、何かに掴まれて投げ飛ばされた。



「ぐはっ!!」



 地面に叩きつけられる大きな音と共に、すぐに立ち上がる大柄な女。その横で、棒を構える小柄な女。


 あわやという所で、私を救ってくれたその何者かに目を向けた。すると、そこには不敵な笑みを浮かべたボーゲンが立っていた。



「ボボボ、 ボーゲン!!」


「ったく! 何か、かかるとは思っていたがまさかこっちがかかってくるとはなー」



 かかる? かかるって……それって……もしかして、私を囮に……


 助けてもらった感謝の気持ちと、囮にされたという複雑な気持ちの感情が混同して、どういう顔をしていいのか解らなくなった。無表情で、ボーゲンを見る。



「もしかして……私一人に狩りに行かせたのも、囮にする為だったんですか?」


「おうよ、そういう事だ。でも、俺様がちゃんと見張っていたからな。大丈夫だったろーが」


「ず、ずっと私をつけてきていたんですか?」


「そうだって言ってんだろーがよ。お前がパンツ丸出しで、坂を転がっていく姿もちゃんと見てたぜ。くくく。それに、こうしてちゃんと助けにも出てきただろう? 感謝しろよな」



 なんて人だろうと思った。本当に、こんな人がバーンさんの弟分で信頼に厚い人なのだろうか? 私には信じられないと思った。



「う、ううーーー」


「頬を膨らませている暇があるなら、先にこっちを片付けようぜ。こいつらまだやるつもりだぜ」



 ボーゲンはそう言って、私の涯角槍(がいかくそう)を手に取るとこっちへ放った。私はそれをキャッチして、怪しげなローブに身を包む二人に向かって構えた。



「2対2だ。リーティック村でローザをやったのも、お前らだな。女盗賊団アスラのメンバーか? それとも、闇夜の群狼(やみよのぐんろう)か?」



 ボーゲンが尋ねると、ローブに身を包む二人は、くっくっくっと笑い始めた。そして小柄な女が、なんと口を開いた。



「エスカルテの冒険者ギルドのギルドマスター、バーン・グラッドか」



 濁った声。そういうアイテムを使っているのか、魔法を使用しているのか、それともそういう技をもってしているのかは解らないけど、意図的に声を変えている。



「ちげーよ。俺様はそのバーンさんの一番弟子であり、弟分でもあるボーゲン・ホイッツだ。クラインベルト王国の冒険者界隈じゃ少しは名の知れたAランク冒険者よ」


「なんだ、違うのか」


「それでそちらさんは、一体誰なんだよ。誰の回し者だ?」



 ボーゲンの言葉に、二人ともまた身を震わせて笑っている。



「どうせお前らが現れた理由なんて、ここで俺様とこの狐娘を始末する気でやってきたんだろ? なら何処の誰からの回し者って位は話してくれてもいいだろ? ええ?」


「名だけ答えてやろう。お前らを葬る者の名だからな。しっかり心に刻め。我が名はローグウォリアー」


「私は、ビーストウォリアーだ」



 大柄の方、ビーストウォリアーと名乗った女は自分の名を言うやいなや、自分の立っているすぐ隣の木をいきなり殴ってへし折って見せた。


 そして、ズシンと音を立てて倒れた木を持ち上げると、先端部分も膝蹴りでへし折り即席の丸太棒を作った。それを巧みにブンブンと振り回した後、脇に抱えて構える。


 なんと、ビーストウォリアーは丸太を武器にしている。


 小柄の女、ローグウォリアーもその辺に落ちていた棒を拾い、両手に持って二刀で構えた。


 ――来る!!


 暗闇の広がる森の中、緊張が走る。光はカンテラと、ゴブリンの持っていた松明……そして月明かりだけ。ボーゲンの方をちらりと見ると、彼は私に言った。



「油断するなよ、狐女! 俺様程じゃないにしても、こいつら二人ともかなりの手練れだぞ!! 一応、お前……あのアーサー・ポートインや闇夜の群狼(やみよのぐんろう)幹部のバンパを仕留めたんだろ? 俺には今、頼もしい仲間が一人いるとカウントしてもいいだよな?」


「期待に応えられるかは解りませんが、私も殺されたくありませんので、本気で戦います!!」


「よし、十分だ」



 何処かで獣の声が聞こえた。それを合図に、ボロボロのローブに身を包んだ二人が動いた。



「来るぞ!! 抜かるんじゃねえぞ!!」


「はいっ!!」



 ビーストウォリアーが丸太を正面に突き出すと、小柄なローグウォリアーが跳躍しその丸太の上に飛び乗った。そして一直線にこちらに駆けてくると両手に持つ棒を交互に振ってきた。


 ボーゲンが動く前に私は先に前に飛び出して、その攻撃を涯角槍(がいかくそう)で弾いた。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇アーサー・ポートイン 種別:ヒューム

クラインベルト王国の騎士。テトラ達がルーニ誘拐事件の時に、救出に向かっている時に正体を偽って仲間になり、最後の最後で手柄を横取りしようとした。レイピアの達人で、瞬時に数十人の敵を突き刺し倒す剣術の前にテトラは苦戦を強いられたが、最後に倒すことができた。現在はローザ・ディフェインに逮捕されクラインベルト王国の城の牢に入れられている。


〇バンパ 種別:ヒューム

闇夜の群狼の幹部。クラインベルト王国で、奴隷売買の為に人里離れた村など襲い、誘拐などしていた。村を襲う時に、殺人や略奪も働いていたがルキア達を奴隷として運んでいる時に、アテナに見つかり阻止される。その後、アジトにいた所を他の仲間と一緒に、テトラやバーン達に討伐され逮捕された。


〇ローグウォリアー 種別:?

闇夜の群狼と思われるが正体は不明。ボロボロのローブに身を包み、仮面をつけ声を変えている。身軽で、その辺にある棒など武器にする事もあり、多彩な攻撃を好む。相方のビーストウォリアーとの合体技、ビッグザマウンテンボムの破壊力はとんでもない。


〇ビーストウォリアー 種別:?

闇夜の群狼と思われるが正体は不明。ローグウォリアーとは、一緒に行動をしている。身体が大きく筋肉質で、パンチで生えている木をへし折る。猪突猛進タイプに見えるが、パワーの桁が外れている為、とんでもなくおっかない。

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