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第294話 『ギクシャク……』




 あれから6度目になるゴブリンの群れによる襲撃は、無かった。でも、必ずまた襲ってくるとボーゲンは断言していた。


 私は、目的地に到着するまでにあとどれ位のゴブリンが襲ってくるのだろうかと思ってボーゲンに聞いてみた。



「知らねーよ!! 俺に質問すんな!! 自分で考えろ!!」


「うう……すいません」



 やがて森に入ると、丁度陽も落ちてきたので、キャンプを張る事になった。小川を見つけたので、その近くに馬車をとめて、馬を繋いでテントを張った。


 アレアスやダルカンが馬車から、荷の入った袋をおろしてきた。あれには、リーティック村で分けてもらった食糧が入っている。ダルカンがにっと歯を見せて言った。



「まさか、あの村でライスが手に入ったのは良かったよな」


「ああ。俺も普段はパンを食っているが、どちらかと聞かれればライス派だな。ライスを食うと、力が出る」


「そうだな! ライスはいい」



 ダルカンとアレアスの会話で、今日の晩御飯はライスにするのだと思った。私もパンも好きだけど、どちらかと言えばライスが好きなので、テンションがあがった。


 メイベルとディストルが近寄ってくる。



「手伝う事は、ありやすかね?」



 アレアスは考える素振りを見せると、メイベルに言った。



「それじゃ、今のうちに薪をもっと集めておいてくれるとありがたい。ゴブリンの襲撃がまたあるかもしれないし、焚火は絶やさない方がいいだろ」


「解りやした。早速、ディストルと薪拾いに行ってきやすね」


「よーし、任せろ。また行くのも面倒くさいしな。ちょっと多い位に集めてきてやるよ」



 ディストルが親指を立てて言った。そして、二人とも薪拾いに森の奥へと歩いて行った。


 ミリスは小川の方へ行くと、食べる分のライスを洗った。そしてそのライスを炊く為に、それを釜に入れて水を汲んだ。


 別に用意していた鍋にも、水をたっぷりと汲む。ミリス一人では、たっぷりと水の入った鍋は重く、焚火の方へ持ち運ぶのにフラフラして苦戦している。それを見たアレアスとダルカンが、走ってきて彼女を助けた。


 私はそんな光景を目にして、リオリヨンの街の冒険者ギルドから来たこの3人は、本当に仲が良いのだなと思った。急に、セシリアやマリン、リア達の事が恋しくなる。



「おい! 狐!」



 ……狐?



「おめーだよ、おめー! 狐女!」



 振り返ると自分のテントを設置し終えたボーゲンが私の方を見て、立っていた。……狐って。



「ライスと野菜のスープだけじゃ力が出ねえから、お前ちょっと行ってなんか狩ってこい!」


「ええーー、いいい、今からですか? もう暗くなりますよ」



 言い返すとボーゲンは、明らかに不機嫌な顔をわざとらしくして見せた。



「てめーー!! このアマ!! リーダーの俺様に意見しよーってのか? ああ?」


「ッヒイ」



 物凄い怒りの形相で顔を近づけて威圧してきたので、私は恐ろしくなってボーゲンから目を逸らして身をかがめた。すると、ミリスが私とボーゲンの間に入ってきた。



「っもう!! もっと優しく言ってあげなさい。テトラちゃんは、冒険者ではないのよ」



 冒険者ではない? どういう事だろう。確かに私は冒険者ではないけれど……



「なんだかその狐のメイド見てると、イライラすんだよな! なんてゆーのか、こう……解るだろ?」


「解らないわ。あなたの方が見ていてイライラする」


「なんだと!? このアマ!!」

 


 ミリスとボーゲンが私の事で、睨み合ってしまった。すると、アレアスとダルカンもミリスの横に立ってボーゲンを睨みつけた。


 メイベルとディストルは薪拾いに行っちゃったし、このままじゃ喧嘩になるかもしれない。そう思った私は、慌ててボーゲンに謝った。



「やめて、やめてください!! ごめんなさい!! 私、ちょっと行ってお肉を調達してきますね」



 すると、ミリスが顔を顰める。



「いいの、テトラちゃん? いくらエスカルテのギルドマスター、バーン・グラッドの弟分だからって、感じが悪すぎよ。なんならここで私がちゃんと、ボーゲンに言ってあげるわよ」


「いいんです、いいんです。お腹が減っていると、誰でもちょっと気が逆立ちますからね。セシリアなんて、そうなるともう大変なんですよ」


「ああ? なんだとお?」


「ヒイ……すいません!!」


「もう、ボーゲン! やめなさいってば!! いい加減にしないと、私も怒るわよ」


「ケッ!!」



 ボーゲンは懐から煙草を取り出すと、それを咥えて小川の方へ歩いて行った。



「冒険者としては、腕は一流みたいだけど、性格は難だらけよね。フフフフ」


「あははは……」



 ミリスがいてくれて良かったと思った。



「それじゃあ、私ちょっと何か獲物を探してきますね」


「ええ。でも、これから森の中はもっと暗くなってくるから気を付けてね。そうだ、アレアスかダルカンも一緒に――」


「ありがとうございます! でも私一人で大丈夫ですから! ちょっと行ってすぐ戻ってきますね」



 またゴブリンの群れが襲ってくるかもしれない。その時、ミリスと他にアレアスかダルカンの二人じゃ危ないと思った。でも、3人いればきっと大丈夫。


 私も一人なら、まあ森の中で何かに遭遇しても逃げきる自信はあるしその方がいい。


 近くに落ちていた長めの枯れ木の先端部分に、ナイフを巻き付けて即席の狩り用の槍を作る。それを手に持ち涯角槍(がいかくそう)を背負い、カンテラをもう片方の手に持って森へ入った。


 ミリスは私が一人で狩りをしに森に入る事に、心配を隠せない様子だった。


 だけど……そう言えばルーニ様を救出するためにセシリアと二人で旅していた時は、こんな事はいつも普通にしていたような気もした。


 とりあえず、ボーゲンがあっと驚くような獲物を見つけて狩って、キャンプへ戻ろうと思った。



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