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第292話 『襲撃! ゴブリン軍団!! その1』




 襲撃を受けた所は、草木が所々に生い茂っている拓けた場所だった。そこに今まで見たこともない位の数のゴブリン達が現れた。ざっと見ても、100匹以上……もっといる。


 ゴブリン達は棍棒や槍、手斧や短剣といった武器で数に頼って襲い掛かってきていた。既に前衛に向かっているボーゲン、メイベル、ディストルは下馬して戦闘に入っている。


 メイベルはマンゴーシュで襲い来るゴブリン達を突き殺し、ディストルは持ち前の怪力で愛用のスレッジハンマーをブンブン振り回し、束になって襲い掛かってくるゴブリン達をまとめて吹き飛ばしていた。


 ボーゲンは、近くにいた手斧を持っていたゴブリンを殴り倒すとその手斧を奪い、両手に持って次から次へとゴブリン達を倒していった。そして、私とミリスも馬車から飛び出して、全員が戦闘に加わった事を確認すると声を上げた。



「アレアス、ダルカン、ミリス、テトラは馬車と馬を守れ!! メイベルとディストルは、この俺様についてこい!! ボス猿を倒しに行くぜ!!」


「りょーかい!!」


「おう!!」


「解った!!」



 この中では、Aランク冒険者はボーゲンとメイベル。その二人のどちらかが指揮を執って戦うのがいいと、皆思っているようなのでそれに自然と従った。



 ギャウギャウギャーー!!



「えいやああ!!」



 一度に何匹ものゴブリンが襲い掛かってくる。それを涯角槍で跳ね除け、打ち返して突き刺す。背後から襲われても、すぐに石突きを打ち込んで対応する。私は周囲に集まてくるゴブリン達を相手に、スカートの裾が舞い上がる位に勢いよく、くるくると回転しながら流れる様に次々と打ち倒していった。


 アレアスもロングソードを巧みに使い、その横でダルカンがオークのような巨躯のゴブリンと奮闘を繰り広げている。ミリスが、魔法を詠唱した。



「聖なる力よ! 皆に俊敏なる力を与えたまえ!! 《敏捷性向上術(アジリティアップ)》!!」



 バフ魔法! 眩い光が私やアレアス、それにダルカンを包み込む。すると、ゴブリンの攻撃に更に早く対応できるようになり、素早く動けるようになった。これなら、ちゃんと用心して戦えば、まずゴブリンレベルの魔物の攻撃なら喰らわない。



 ギャギャギャーーー!!



 ゴブリンの雄叫び。その方をみると、遠目にもわかる位の一回り大きなゴブリンが何十匹もの仲間を引き連れてボーゲン達と死闘を繰り広げていた。



「死ねや、ゴブリン共め!! うらああ!!」



 ボーゲンは敵から奪った手斧を、その一回り大きなゴブリンの頭部を狙って勢いよく投げつけた。しかし、直撃すると思った刹那、ゴブリンはその攻撃を見事にかわした。外れた手斧は、その更に後ろにいたゴブリンの首へ突き刺さる。



「っかーー!! 流石、ボスゴブリンだぜ。でも、あいつをやれば、この群れは一気に勢いを失うぞ」



 ボーゲンがそう言うと、今度はメイベルとディストルが同時にそのボスゴブリン向けて突撃をした。


 ゴブリン達は二人を止めようと何十匹も立ちはだかり壁になるが、二人の冒険者はまるで台風のようにゴブリン達を次々と吹き飛ばしていく。

 


 ギャギャギャー!!



「あっしらを襲った事を後悔……っあ!! っあ!! 後悔させてやるーぜーーえ」


「うらうらうら!! どきゃーがれ!! てめえら雑魚に用はねえんだよ!!」



 とんでもなく二人とも強いと思った。


 でも、Aランクのメイベルの強さはまあ納得もできるけど、ディストルはEランク冒険者のはず。冒険者でEって言ったら一番下……っていうかFが見習いみたいなものでEは下級冒険者だとセシリアが言っていた。なのに、ディストルの強さはそれを遥かに凌駕していた。


 もちろん冒険者ランクっていうのは、その冒険者の強さだけを計ったものではないのだろうけど、それでもとても下級冒険者には見えない。



『ダッシャーーー!!』



 メイベルとディストル二人同時の雄叫び。


 気が付くと、二人はボスゴブリンのもとまで辿り着いていて、ディストルがその手に持つかなり重量のありそうなスレッジハンマーをボスゴブリンの脳天に振り下ろしていた。


 ボスゴブリンは、咄嗟に棍棒を振り上げてガードしようとしていたが、ディストルの一撃はそのゴブリンの棍棒をへし折りボスゴブリンの頭蓋を潰した。



 ギャアアアア!!



「ハッハーーー!! どうだ見たか!! やってやったぜ!!」



 ボスゴブリンが一撃でやられたのを見て、周囲に残ったゴブリン達は一斉に蜘蛛の子を散らしたように逃げ始めた。


 その光景を見て、アレアスやダルカンは武器を収めた。でも、メイベルとディストルは逃げるゴブリンを追いかけてはその背を斬り、叩き潰してとどめを刺して回っていた。



「も、もういいんじゃないですか? ゴブリン達も十分に懲りたんじゃないでしょうか?」



 そう叫んで二人を止めると、ディストルは私を睨みつけた。私はその目に一瞬硬直する。するとそれを目てボーゲンとミリスがすぐに間に入り込んできた。



「もう、いいじゃない! そんなに怒る事? テトラちゃんのいう通りよ。あまり、カッカしないで」


「仲間割れはやめろ、ディストル!! だが、テトラも悪い。おめえ、ゴブリン舐めてねーか?」


「え?」


「ゴブリンは雑魚だと思ってるだろって聞いてんだよ!」


「ひ、っひい!!」


「ちょっと、ボーゲン!! やめて、それ以上テトラちゃん虐めると私が許さないわよ。ねっ! アレアス、ダルカン!!」


「俺達を巻き込むなよー。でももういいだろ?」



 頭をポリポリとかいてそう言うアレアス。ダルカンも頷いているのを見て、ボーゲンは舌打ちして言った。



「おい、狐娘!! これはほんの一部だ! これだけの群れ、絶対この近くにゴブリンキングがいるぞ。今、俺達は何匹か逃したからな。きっと奴ら、仲間をもっと連れて逆襲にくるぞ」



 私はボーゲンの言葉を聞いて、なぜディストルやボーゲンが怒ったのかその理由に気が付いた。

 

 私はゴブリン達を逃げしてしまった。逃がしたゴブリンは、また私達のもとに襲いに来る。大勢の仲間を引き連れて……

 





――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


敏捷性向上術(アジリティアップ) 種別:支援系魔法

魔法の力によって、自分自身や対象の敏捷性を向上させる。複数にかける事はそれ程難しくないので、パーティーにこの魔法の使いえる者がいると重宝される。

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