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第287話 『ルキアは、頼られるようになった。』




 決着はついた。


 するとブラワーは、なんと私に握手を求めてきた。そして、私を誇り高き戦闘民族ドゥエルガルの一族に迎え入れると言ってきた。私は慌てて、これまでの経緯と私が他の冒険者とパーティーを組んでいて、今も冒険を続けているし、それを中断するつもりも無い事を説明した。


 それにはゴーディやテディだけでなくブラワーまで残念がった。


 それなら、今晩はここで泊まれとも言われた。でもそれもできない事を伝えた。夜までにはドワーフの王国へ戻り、ベップさんというドワーフが経営する宿に向かわなければならない。そこで、アテナ達と合流する事になっている。


 だからそもそもの話と言うか、ゴーディが私に頼みたかった計画について話を戻した。



「ゴーディ、それで計画っていうのは?」


「ああ。それな。実は、今いるこの俺達の住処からそう遠くない場所……洞窟に、金鉱を見つけたんだ」


「え? 金鉱? 凄い、金鉱ってゴールドの金でしょ?」



 ゴーディが頷くと、横に座っているブラワーとテディも頷いた。



「それでな……」


「いや、もういいゴーディ。ここからはこのブラワーが話す」


「なんだよ! 俺が話し始めたんだろ! ルキアには俺が話す!」


「うるさい! ルキアに話すのは俺だ!!」


「なんだと、どうやら痛めつけられたいらしいな!」


「はは! お前ごときがこのブラワーに勝てるものか! また、放り投げられたいらしいな!」



 ゴーディとブラワーが、また喧嘩を始めだしたので間に入って止めた。


 このまままた殴り合いにでもなったらどうしようと思ったけれど、「お願い、二人ともやめて」というと、あっさりと二人は引いた。


 それが不思議に思えた。ゴーディは兎も角、ブラワーは私に対してもあんなに高圧的だったのに、今はまるでその正反対。いったい、どうしてしまったんだろう。勝負に勝ったから、私の事を認めてくれたという事なのだろうかと思った。



「じゃあ、間をとってテディ、続きを説明してくれる?」


「ああ、いいよ。まあつまりなんていうか……ドワーフに比べて探索能力も採掘能力も劣る俺達がついに念願の金を見つけたんだよ。あれをどうにか採掘すれば、俺達ドゥエルガルの生活は潤う」


「それじゃあ私に頼みたいって事は、その金の採掘のお手伝いって事? 夜までにそれが済むならもちろん手伝うけど……でも、それなら王国から採掘に慣れたドワーフを呼んで手伝ってもらった方が良くない?」



 ブラワーはむすっとした表情で言った。



「ドワーフは信用できねえ! 俺達ドゥエルガルの力を頼っておきながら、俺達を王国から追い出した。それに、手伝わせれば奴らは必ず半分以上の取り分を要求してくるに決まっている」


「それじゃ、私にできる事なんて……」



 テディが言った。



「金は、自分達で掘ることにした。ルキアに頼みたい事は、ドワーフの王国で誰か金の取引をしてくいれる者を紹介してもらえないかという事と、金があるその場所には、魔物がいるからそれを退治するのを手伝って欲しいんだ」



 そういう事だったんだ。やっと、ゴーディが冒険者の力を借りたいと言っていた訳が解った。冒険者は言ってみれば、魔物退治のエキスパート。


 でも、ドゥエルガルだって戦闘が得意な種族のはずだけど……そのドゥエルガルが冒険者に頼らなくちゃいけない程の魔物って、私なんかが行っても役に立たないんじゃないのかな。



「ひとつ皆に言っておきたいんだけど、私は凄くないよ。冒険者として駆け出しみたいなものだし、半人前で……ドワーフ王国に戻れば、アテナやルシエルって言う凄く強くて頼りになる私の仲間がいて……」



 ブラワーが言葉を遮った。



「そんな奴ら知らん!! だいたい、そんな事言うなんて、俺は半人前に負けたって事になるのかよ!! 俺は信じねーよ、そんなの!! ドゥエルガルのリーダー、ボーグルの弟に勝ったお前は凄い戦士なんだ!!」



 戦士じゃなくて、冒険者なんだけど……という言葉を飲み込む。だけど、なんだかそう言われて嬉しく思った。ゴーディが続ける。



「誰でも言い訳じゃない。俺達はルキアに助けて欲しい。ルキアだから、信じられる。金もルキアなら好きなだけ持っていってもいいと思っている」



 そうだそうだと、テディや他の子供達の声もきこえた。


 山奥に住んでいる普通の村人だった私が、まさか別の地でこんなにも慕われる事があるだなんて。


 できる事なら、なんとかしたい。でも、アテナやルシエルがいないのに、魔物なんて。葛藤する。



「どうしよう、カルビ?」



 ワウワウ!!



 カルビは尻尾を振ってみせた。よ、よーし。



「私、夜までには一度王国に帰らなきゃなんだけど、その洞窟はここから近いの?」



 ゴーディは、にやりと笑った。



「ここから、1時間も歩かない場所だよ。心配しなくても、道は俺が案内する。危険な魔物がいて、既に仲間が何人かやられているからな。だから少数精鋭、俺達だけでやる」


「俺達だけって……」



 ゴーディの横で、テディとブラワーも笑った。……っていう事は、4人……それにカルビ。このパーティーでその魔物を退治しに行くということだろうか。


 ゴーディ、テディ、ブラワーは早速魔物討伐の準備を始め、それが終わると出発すると言った。本当に私達だけでそんな魔物退治なんてできるのだろうか。それに、魔物がなんなのかも聞いていなかった。


 ゴーディが私の肩をポンと叩く。



「大丈夫。俺達は魔物には負けない。前回も退治しようとした時、ブラワーは魔物共を圧倒していた」


「ども? どもって複数いるの? それに圧倒していたのに退治できなったの?」


「そうだ。圧倒しても倒す事ができないんだ。だから、冒険者の力が必要なんだよ」


「そ、その魔物って?」


「倒しても倒しても、起き上がってくるアンデッドだ。俺達は今の今まで、アンデッドと戦った経験がほとんどない。だから、冒険者の経験と知恵を貸して欲しい」



 まさかゴーディ達の言う魔物って言うのがアンデッドだとは思ってもみなかった。それなら物理攻撃に頼るドゥエルガルが困っている理由にも納得ができる。でも、私だって戦った事が無い。


 役に立つ経験が無かったか、頑張って思い出してみても、浮かんでくるのはロックブレイクの時のキノコ採取依頼で襲ってきたキノコに操られたゾンビだけだった。


 

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