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第283話 『ドゥエルガルの国とルキア その2』




 ――――ドワーフ達の祖先の話。


 ドワーフ達は、もともとヨルメニア大陸のもっと北の大地に住んでいて、そこからこのノクタームエルドにやってきたそうだ。


 他種族に比べ腕力に恵まれておりタフで、それに似合わず手先が器用な種族。背丈はヒュームの子供位の大きさで短足。だから、炭鉱や鉱石を掘り出す坑道作りなどの作業はお手の物。掘り出したものを加工しては武器や防具、アクセサリーなどを作りだす事にかけても得意としていた。


 だからこそ、そう言った自分達種族の能力が十分に発揮する事ができる、鉱石などの天然資源が豊富なノクタームエルドは、ドワーフ達にとって他に無い土地だった。


 ノクタームエルドに眠っていた天然資源は、鉱石、魔石、宝石、それに金銀など。それらは、ドワーフ達に巨万の富をもたらした。


 そして、持ち前の武器や防具など作り上げる鍛冶技術も、世界的にノクタームエルドにドワーフありと知らしめることができた。


 しかしそれは、ドワーフとドワーフの亜種族ドゥエルガルの間に更に溝ができる結果をもたらした。


 ドゥエルガルは、灰色の肌をしており、ヒュームと同じ肌の色であるドワーフとは、まずそれが違って見えた。そして、その能力も違っていた。


 ドゥエルガルは、ドワーフに比べると手先が器用ではなく乱暴で攻撃的だった。どちらも酒好きという共通点はあるものの、お互いの種族が喧嘩になるとだいたいはドゥエルガルの方が先に手を出すという事もしばしば。


 だがドゥエルガルは、ドワーフに比べ器用さや鉱石などを掘り当てる能力や技術が低い代わりに、戦闘能力にかけてはドワーフを凌駕していた。だから、最初はドワーフ達が築いた富を守る役目として、その役割を果たし共存する事ができていた。


 しかし後に王国で、ドゥエルガルの集団がドワーフの一家を襲って惨殺するという事件や王国にやってくる旅人や、行商を襲うという事件が発生し、ドワーフ達はドゥエルガルを恐れだしたのだ。陰で蛮族や血を好むドワーフとも呼ぶようにもなった。


 その結果、ドワーフ達のドゥエルガルに対する恐怖は次第に募り、それは全ドゥエルガル達に向けられるようになった。


 やがてドワーフは、ドゥエルガルという種族自体を差別し、王国から追放する事を望んだ。もちろんドゥエルガルはそれを良しとせず抵抗したが、その頃にはドワーフは、持ち前の器用さを生かして作った強力な武器や装備を完成させ量産すると、その戦闘能力においてもドゥエルガルを凌駕し、国外へ追いやれる程のものになっていた。


 その後、ドワーフ達はドゥエルガル達に対して、これまで一緒に協力し、このドワーフの王国を守ってきた功績も考慮して、王国に住む事は許されないが、他の冒険者や旅人同様に入国する事は許されたのだ。


 ゴーディは、更に語ってくれた。



「俺達は王国のドワーフからは、蛮族やら血を好むドワーフと言われ差別されている。だから、食べ物もろくに売ってもらえなかったり、それを買う為の金を稼ぐにしても、雇ってももらえないんだ」



 それなら、何処かもっと暮らしやすい場所へ移って暮らせばいいのでは? などと思ったが、私はそれを口にする事はできなかった。


 ドワーフの王国同様に、ドゥエルガルがこの場所を自分達の国としてやってきたのも、昨日今日では無いのだから――もう何十年も昔からの事。それだけ強い思いで、この場所で暮らしてきたのだろうから、そう簡単に決断できるものでもないし、こんな王国から近い距離に住処を築くのも、ドワーフの王国から一方的に追い出された事に関する不満の意思表示であるかもしれない。


 何にしても、私なんかがこの人達の生き方に、簡単に口を出せる事ではないと思った。



「でもな、ルキア! ついに、なんとかこの生活を一気に脱却する方法を考えたんだ。でも、俺達だけじゃ心細い。それで、ルキアにも手を貸して欲しいんだ」


「私なんかが役に立てる事なの? 他の大人に頼んだ方が……」



 ゴーディは私の腰に差している、バーンさんから頂いた大型のナイフを見つめた。



「大人は駄目だ。俺達子供がやるんだ。それに、ルキアは冒険者なんだろ? 使い魔だって連れている程の冒険者だ。なら、この俺達の計画にはうってつけだ」


「私は別に凄くないよ。冒険者だけどまだFランクだし……」


「腕っぷしなら俺達もそれなりに自信がある。だからルキアには、冒険者としての力が借りたい」



 私の力なんて大したことはない。でも、それでも役に立つというのならと思った。



「うーん。それで、ここに住んでいる皆の飢えが解消されるなら喜んで手伝いたいと思うけど……計画ってなに? でも、盗みとかそういう人を傷つける事は駄目だよ」


「それなら大丈夫だ。実はな、俺達この住処の近くの洞窟でな……」



 刹那、横から何者かが近づいてきて、ゴーディをいきなり殴りつけた。転がるゴーディ。私は咄嗟にゴーディに覆いかぶさり、その殴りつけた相手を見る。


 そこには、ゴーディやテディよりもやや年上といった感じのドゥエルガルの青年が立っていた。



「よくもまあ、よそ者にぺらぺらと、喋ってくれるもんだ!!」


「ブ、ブラワー!!」



 テディが叫んだ。



「ままま、待ってくれ。この子は違うんだよ。この子は、俺とゴーディが盗みを失敗して捕まった所を助けてくれて、それでここの皆に食糧まで」


「そうよ、このお姉ちゃんは私達に食べるものをくれたんだよ……」


「うるさいっ!! どけ!!」



 突如現れ怒り狂うドゥエルガルの青年は、ゴーディに続いてテディを殴りつけ、一緒に私の事を説明してくれようとした女の子に平手打ちをした。テディも女の子も倒れると、周りにいた子供達は皆その場で固まってしまった。


 どうしよう、アテナやルシエルがいてくれたら……違う。そんなんじゃない。これは、私がそうしようと思って来てこうなったんだから、私がちゃんと責任をもってこの人を説得しなきゃ。



「私は冒険者のルキア。ゴーディとテディを、どうかぶたないで。もちろんその女の子も駄目」


「ほう、それでなんだ? 嫌だといったら、どうするんだ?」


「それは……」



 どうしよう? 怖い……そう思った刹那、ゴーディが立ち上がって言った。



「やめてくれ、ブラワー。ルキアは俺とテディの恩人で俺達の友達だ。それに冒険者なんだ。俺達の計画も手伝ってくれる。だから……」


「ゴーディ!! お前、ちょっと黙れ!!」



 そう言って、ブラワーという青年は腰にぶら下げていた手斧を抜くと、私にそれを向けた。


 私はすぐに弁明しようとしたけど、ブラワーの攻撃的な表情は、そんなものをはなから聞く気がないという事を示していた。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ブラワー 種別:ドゥエルガル

灰色ドワーフの少年。ドワーフの王国近郊にあるドゥエルガルの住処、そこに住むドゥエルガルのリーダーの弟。ドゥエルガルの子供達の中では、ブラワーがリーダー的な存在。ブラワーは、ドワーフの王国に住むドワーフはもちろんの事、それ以外の種族も嫌っている。性格も、プライドが高い。

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― 新着の感想 ―
[一言] 話は聞かん、子供に手を出す・・・ブラワー見てると迫害されるのも無理はないというか、迫害されるだけの理由はあるな
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