表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

280/1435

第280話 『獣人覚醒』




 ゴーディと呼ばれたドゥエルガルの少年は、棒をブンブンと乱暴に振ってきた。


 咄嗟に避ける事ができたけど、もしもあんなに思いきり振った棒に当たったらどうなるのだろうと考えると、どうしても身体が硬直して上手く動かない。



「何処までも追ってくるってんなら、例え女でもこれでぶっ叩いてやるからな! 嫌なら、回れ右して消えちまえ!」


「嫌! あなた達は、あのお店から食べ物を盗んだでしょ。それをちゃんと、返してお店の人に謝らまいと駄目!」


「生意気な猫娘め!! それなら叩いて解らせてやる!」


「やっちゃえ、ゴーディ!」


「きゃああっ!」



 クラインベルト王国のカルミア村で、私は生まれ育った。いつも優しいお父さんとお母さんがいて、可愛くていつも何事においても一生懸命に頑張るお姉さん思いのリアという妹がいた。


 その頃は、魚獲りや畑仕事、毎日のお料理のお手伝い……それ位しかできなかった。


 他の村や街にも行った事がなかったし、私達の住むカルミア村は獣人が集まり寄り添って暮らす小さな村で、外の世界の事はほとんど話に聞くだけで何も知らない。


 でも、そんなある日……人攫いの盗賊団がいきなり私達の住むカルミア村へやってきて、それから私達の人生は大きく変わった。


 その盗賊達に、村の人達は沢山殺された。私の家族も……


 私も友達のクウ達と一緒に、人攫いの盗賊団に掴まって奴隷として売り飛ばされかけた。レーニとモロは、その奴隷として売り飛ばされる途中、力尽きて死んでしまった。私は、絶望しどうする事もできなかった。生きる事自体を、放棄しようとしていた。とても悲惨な現実を受け止める事なんてできなかったから。


 だけどその時、アテナが私達を見つけて、助け出して救ってくれた。私は、その時にアテナに感謝するとともに、アテナのような尊敬できる冒険者になりたいと思った。アテナのように強くなりたい! それが冒険者になりたいと思った一番の理由。


 アテナのように強くなれば、カルミア村を襲って私の家族や村の人達の命を奪い、村を焼いた盗賊団に仕返しできる。


 そんな思いが無かったと言えば嘘になる。だけど、もう無かった。カルミア村を襲った盗賊達が憎くないと言えば嘘になるけど、そんな事よりも私もアテナのように強くなって、奴隷にされて売り払われようとしていた私のような子達を、今度は私が目にした時に助ける事ができる存在になりたと思った。


 だから、それからアテナやルシエルと色々冒険し旅する途中、暇を見つけては強くなるためにはどうすればいいかを教わった。


 まずは、剣とナイフの使い方。


 剣は持っていなかったから、木の枝で練習を重ねた。ナイフはバーンさんから頂いたもので練習した。

 

 バーンさんから頂いたナイフは、物凄くいいものだったけど、かなり大型で重量もあった。最初はその重さと大きさに素早く振る事ができず上手く扱えなかったけど、何度も使っているうちに次第に上手に扱えるようになってきた。


 バーンさんは、私みたいな女の子が使うには大きすぎるナイフだと言っていたけど、でも獣人ならきっと上手く扱えるとも言ってくれていた。今はその通りだと思っている。


 武器がある程度扱えるようになってくると、アテナが相手をしてくれるようになった。組手。お互いに向き合い構えて打ち合って練習する。その時に、色々動き方を教わったのだけど、習っていくうちに今まで感じた事も無い程に早く動けるようになった。


 実際に魔物など、敵と戦う事になった場合、身体が緊張で硬直して上手くは動けない。でも、練習の時は自分でも驚く程素早く正確に動ける。


 もちろんアテナが本気を出してなんかいない事は解っているけど、アテナの枝を振る動きがスロウに見えて足運びも手に取る様に解った時もあった。


 もしかしたら、これが……バーンさんが言っていた獣人の秘めた力なのかもしれないとも思った。



「だああああ!! このやろう!! てやああ!! ちくしょー!!」



 私は、ゴーディの攻撃を全て避けていた。


 クラインベルト王国でも、ガンロック王国でも、そしてこのノクタームエルドでもキャンプや休憩をする時に暇があって、アテナがいいって言ってくれれば練習をしていた。それがようやく実戦で、どれ程身についているのかっていうのが、解り始めてきている。


 ファイヤーリザードや、アシッドスライム、キノコに洗脳されたゾンビ。冒険者になって、アテナやルシエルと旅をして、他にも色々なものと戦い経験を積んだ。


 練習と経験を積み重ねてきて、私は冒険者として一人前じゃなくても、ようやくそれに近づいてきているのかもしれない……そう実感している。



「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ!! な、なんで当たんねーんだああ!! 当たればこんな女、一発なのにいいい!!」


「そうだね、当たったら一発だね。でも、力任せでそんな闇雲にブンブン振り回しても当たらないんだよ」


「うるせーーーええ!!」



 突っ込んできた。この攻撃に合わせて、カウンターで棒を跳ね上げようとした。刹那、カルビが走ってきてゴーディという少年の足を絡ませた。



「うわあっ!! くそ、足が!!」



 少年は体勢を大きく崩して、前のめりに私の方へ覆いかぶさるように倒れ込んできた。


 私は危ないと思って、咄嗟にナイフを放り出して少年を受け止めようとした。


 少年の方も、何とか倒れ込むまいと思ったのか、それとも私を押しつぶさないようにと思ったのか、咄嗟に両手を突き出した。



 ぷにっ



 ゴーディというドゥエルガルの少年の両手は、私の胸を鷲掴みにしていた。



「きゃああああああ!!」



 あまりの事に我を忘れて叫んだ。ゴーディは慌てふためき、後ろへ転がって地面で頭を打った。


 私の顔は、真っ赤になっていた。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ゴーディ 種別:ドゥエルガル

灰色ドワーフの少年。ドワーフの王国、ルキアの見ている前で泥棒をした。


〇テディ 種別:ドゥエルガル

灰色ドワーフの少年。ゴーディと共に、泥棒をする。ゴーディと仲が良くていつも一緒に行動をしている。


〇バーン・グラッド 種別:ヒューム

エスカルテの街の冒険者ギルド、ギルドマスター。アテナ達やテトラ達とも親交がある。ミラール達と共にバーンのもとへは行かず、冒険者としてアテナと共に行動すると言ったルキアに、選別として立派な短剣をプレゼントした。もと、Sランク冒険者で、かなり強いと思われる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ