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第278話 『ベップの宿』





「毎度ありゃーーっしたあ!!」




 げぷっ!



 ラーメンを一心不乱に貪り、堪能せしめると食事を終えて店を出た。


 大盛で注文したにもかかわらず更に新たに麺を湯でてもらって、残っているスープに投入するという【替玉】まで、追加注文してしまった。お陰で腹も心も大満足だった。



「ふう、久々にここのラーメンを食ったけど、やっぱ美味いわ」



 ノエルの話しぶりから、以前にもこの店に何度か来たことがあるのだろうなという事は推測できた。



「それじゃ、腹も落ち着いたしあたしはこの辺でお暇させてもらうよ」


「え? 何処かいくのか?」


「そりゃ行くだろうが。お前だってこのあと、予定があるんだろーがよ」



 空を見ても暗くなっているのか明るいのか解らない。ずっと、洞窟の中だから。


 でも、ユリリアはアテナのつけていたような腕に装着するタイプの時計をつけていて、それをオレに見せてくれた。


 ――時計の針は、もう18時を回っていた。


 そうだな、オレにもこの後予定がある。アテナ達と宿で合流しないと。



「ノエルやユリリア達はどうするんだ?」


「あたしは、自分の家に帰る。この王国はあたしの本来住んでいる場所だからな。当然、住んでいるうちがあると言う訳だよ。ルシエル、お前とはそのうち白黒決着をつけたい。またその時が来たら喧嘩の続きをしようぜ」


「ええーー。なんで、また喧嘩……オレはあんまりそういうのは、嫌なんだけど。後腐れある喧嘩は嫌だー」


「フン。それと、この後……宿でミューリとファムとも合流するんだろ? よろしくしてやってくれよな。あいつらは、優しい奴らだから」


「ああ、解ってるって。オレも、オレの仲間も皆ミューリとファムの事が好きだし、もう友達だよ」



 ノエルは少し微笑むとパンパンになった腹を擦りながら、何処かへ歩いて行った。ノエルもオレ同様に替玉を追加注文していたから、お腹が妊婦さんのようになっていた。


 そういえば、喧嘩喧嘩っつってったけど、ノエルはオレが灰色ドワーフ……ドゥエルガルと喧嘩になって一方的に集団で襲い掛かられ危なかった所を助けてくれたんだっけな。


 今度あったら、改めてお礼を言わなければと思った。



「それで、ユリリア達はどうするんだよ? オレはアテナ達とベップっていう名のドワーフが営んでいる宿で今日は宿泊するつもりなんだ。なんもないんだったら、良かったら一緒にどうだ?」



 オレの言葉にユリリア、メール、ミリーは顏を見合わせて頷いた。メールが言う。



「それじゃ、私達もご一緒させてもらおうかな」


「うんうん、いいね。でもその宿、私達3人が泊まるにしても、空きはあるのかしら?」



 ユリリアが、手に持つ籠に入っているウイングカイトを見つめる。そう言えば、使い魔オーケーの宿かもきいてない。でもそれは大丈夫だろう。



「そのユリリアの使い魔はきっと大丈夫。うちにもカルビがいるからな。だから、きっと大丈夫な宿だ。それと、部屋が空いているかどうかは解らんけども、もし無理でもなんとかなるんじゃないか? ミューリやファムがいれば宿に顔も効くかもだし、駄目なら駄目でオレ達と一緒の部屋で眠ればいいさ。どんな部屋かしらないけどな」



 アハハハと笑うと、3人とも頷いた。



「さて、じゃあもういい時間だし、そろそろ宿に向かうかー」


「それで……ルシエルさんは、その今日泊まる宿の場所を知っているんですか?」


「うっ……名前は知っているけど細かい場所ってなると…………ちょっと聞いてくる」



 ミリーの言葉にドキリとした。


 3人に笑われながらももう一度、ラーメン屋の店内を覗いて店員を探して目を合わせると手招きした。そして、ベップというドワーフが経営する宿を場所を聞いてみると、知っていたのでそこへはどういうふうに行けばいいのか教えてもらった。


 3人のもとに戻ると、オレは宿への道を伝えた。



「ここからあの角を曲がって少し進むと、大きな通りにでるらしい。それを北へ真っ直ぐ。すると、大きな十字路があるからそれを右折して最初の細い道を北へもっと歩いて行くと、大きな宿が見えてくるらしい」


「それが、ベップさんていうドワーフが経営している宿ですね」


「そうだ、じゃあ行こうぜ」



 親指を立てて言った。そして、4人でその場所を目指して歩き始めた。


 だけどいざ大通りに出てみると、さっき皆にちゃんと説明してみせたはずのオレがどう向かえば辿り着けるのか解らなくなってしまった。


 ま、まいったな……


 少しきょろきょろとしていると、察したのかユリリアが前に出て、あっちだと指をさして教えてくれた。


 助かった。聞いた話を忘れる前に皆に話しておいて良かったと思った。


 もし話していなかったら、またラーメン屋に戻って頭を下げてもう一回道を教えてもらわなきゃいけない所だった。


 大通りを歩いていると、凄いものを見つけた。


 ――巨大な蜘蛛!!


 ドワーフがそれを連れて歩いている。


 その巨大な蜘蛛は、馬やロバのように大きな荷物を背に乗せて運んでいたのだ。オレがびっくりしていると、メールがクスクスと笑った。



「なんだあのでかい蜘蛛は!! 荷物を運んでいるぞ!!」


「あれは、ノクタームエルドに生息しているソイルスパイダーって魔物で、この国のドワーフ達は、荷運びに利用しているそうですよ」


「牛馬のようなものか。なんだか、モフモフしてるし可愛いな。アテナやルキアにも見せたら喜びそうだな」


「フフフ。荷物を運ぶのに優れた蜘蛛だから、別名荷運び蜘蛛とも呼ばれているんですって」


「ふーーん、面白いな。あれだけ荷物を乗せて移動できるなら人間も余裕で乗せて動けそうだな」



 あとで、宿に着いてアテナ達と合流したら、ラーメンに加えてこのモフモフの蜘蛛の事も教えてやろう。


 そしてユリリアが示してくれる通りに暫く歩いていると、やがて石造りの大きな建物が見えてきた。


 外観には見た事もないシダ植物のようなものが所々生えていて、洞窟内ではあまり見る事もできない緑色の植物も生えている。


 この植物に囲まれた、なんかいい感じの大きな建物が、今日オレ達が宿泊する宿だ。


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