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第273話 『灰色のドワーフ ドゥエルガル その1』




 ドワーフ兵に囲まれてからは、もしこのまま捕らえられて牢に入れられでもしたら、アテナにこっぴどく怒られるかもしれない……という事だけ考えていた。


 アテナは、怒ると結構怖い時があるんだよなー。


 だから、今のこの状況の事よりも、アテナにバレた時の言い訳を何度も頭の中で、シュミレーションしていた。



「でも、オレはメール達の為によう……あれじゃん? 仲間がほら、馬鹿にされたら黙ってられりんじゃん? そう思うらりん?」


「怒ってるんだから、ふざけないで」


「は、はい……」


「だからって、単独行動してすぐにこんな問題起こして言い訳ないでしょ。もうこんなすぐ騒ぎを起こすなら、これからルシエルは単独行動は当分禁止にするからね」


「当然の結果ですよ。アテナに心配ばかりかけて。ルシエルはちょっと、反省してください」



 ワウウワウワウーー!!



 想像の中で、アテナとルキアにどんな感じで怒られるかという事まで頭に浮かんでしまった。


 ついでに、カルビにも怒られていた。ちっきしょーー! カルビめ!! モフモフの分際でこのオレに説教をするとは!! めちゃ許せんよなー!!


 こうなったら再会するなり、うんとお腹をモフモフしてやるぜ。ついでに、ルキアもだ!!


 でもアテナは怖いからやめとこう。うん。


 しかし、そんな事よりこの場をなんとか、乗り切らないと。でも、メール達を連れては、この場から逃げられない。逃げても、こいつらは大声をあげて追いかけてきそうだ。そうしたら、結局騒ぎになるだろうし。

 


「貴様ら、喧嘩をしているのか? ああ?」



 ドワーフ兵の隊長らしき男がそう言うと、灰色ドワーフ達は頷いた。



「そうか、そうか。でも、見るとこれはエルフの娘一人に屈強なドゥエルガルの戦士7人がよってたかってっていうのも、どうかと思うが……どう思う? エルフよ。この喧嘩は成立していると思うか? 俺らから見て、リンチに見えるがその点はどうなんだ?」



 想像した展開の斜め上に行く。なかなか面白い事をいうドワーフ兵だと思った。しかし、灰色のドワーフは、ドゥエルガルと言う種族なのか。


 ドゥエルガル達は、ドワーフの隊長にそう言われ、気まずそうに俯いた。オレはドワーフ隊長に言ってやった。



「リンチではない。オレは友達がそこのそいつに傷つけられかけたから、怒ってるんだ。喧嘩で解決できるなら、オレとしては願っても無い事だし、こいつらには負けない」


「な、なんだと!! このクソエルフ!!」


「なんだよ!! クソドワーフ!!」



 隊長はそのやり取りをみて、大笑いする。周囲に集まった大勢の野次馬達も笑っていた。



「そうかそうか、じゃあエルフの娘。この喧嘩は1対7だけど成立していると言うわけだな?」


「ああ! 成立だ、成立しているぜ! だけど、なんだあんた? 喧嘩するのを許してくれるのか?」



 隊長は再び大笑いすると、答えた。



「俺達ドワーフは、喧嘩好きだ。それにエルフとドゥエルガルの喧嘩とあっちゃ、尚更だ。このドワーフの王国でそれを聞いて、止めようとするドワーフなんてまずおらんだろう。いるとすれば、あんたが若い娘だから気の毒に思ってとかだろうね」


「悪いな。これでもオレは、114歳だ。エルフの中では若い方だがな。……それで、喧嘩の続きをしていいのか?」


「お互い合意の上ならかまわんぞー! 許可する。ただ、武器の使用はならーん。死者が出るのは、流石にまずい。素手でやってもらうが……それでもやるか?」



 ここまで来たら、引き下がれん。それに周囲に集まる野次馬共のオレ達を見る目も気になる。それがなんなのかも気になるし、ここはやってやるぜ。


 ドゥエルガル達は手に持っていた斧や槌やらを道のわきの方へ投げ捨てた。隊長はそれを見てニヤリと笑うと、斧を抜いて上に勢いよく掲げた。



「それじゃ、喧嘩再開だ!! エルフがグロッキーするか、7人のドゥエルガル全員がグロッキーするかで決着だ。さあ、野次馬共!! どっちが勝つか賭けろ!!」


「うおおおお!! 俺はドゥエルガル共に金貨10枚だ!!」


「俺は大銀貨3枚!! ドゥエルガル達にだ!!」


「ワイは、ワイはエルフたんに金貨1枚や!!」


「いいいい一枚かよ!! もっと賭けろよな!!」



 駄目だ、突っ込んでしまった……


 なるほど、こいつら賭けをするために、オレ達の喧嘩に集まってきてやがったのか。とんでもねえ奴らだなー、まったく。


 まあ、いい。そういうのは、オレ好みだしな。それに、王国警備兵の公認という事であれば、都合もいい。遠慮なくやれる。


 オレはまずやられるつもりはないし、相手をやっつけても警備兵公認となれば何もオレにお咎めはないし、アテナに怒られる理由も無いわけだからな。アッハッハッハ。



「ル、ルシエルさん! 私達も!!」



 メール達が参戦しようとしてきたので、俺は顔を激しく左右に振って制した。大丈夫、大丈夫だから。任せてろって!


 ドワーフ隊長が、被っていた兜を脱ぐとそれをメイスで思い切り叩いた。大きな金属音。それが戦いのゴングだ!!


 さあ、喧嘩が始まった!! ――町人達の歓声。



「エルフが調子ぶっこいてんじゃねえぞ!! うおおおお!! これでも喰らえ!!」



 ドゥエルガルの一人が殴り掛かってきた。野次馬たちの歓声は、更に大きなものへと変わる。俺は声を大にしてメール達に叫んだ。



「メール、ミリー、ユリリア!! 頼む!! オレに全財産賭けてくれ!! オレに皆の元気をわけてくれえええ!!」


「わ、わかりました!! 任せてください!!」



 賭け金を集めて回っているドワーフに、所持金を渡す3人を確認する。


 3人が賭けに参加した事を見届けると、殴り掛かってきたドゥエルガルの攻撃をすっと避けて、上段廻し蹴りをその顔面にお見舞いした。


 ドゥエルガルと言ってもドワーフなので、背丈が低く容易に頭部を蹴る事ができる。ぎゃっと悲鳴をあげて派手に倒れるドゥエルガルと同時に、周りの声も「ワワーーー!!」っとあがった。あれ、メール達も何か騒いでいる。



「ルシエルさん!! 駄目です!! そんなに足を上げちゃだめですよ!!」


「パンツ!! パンツが丸見えですよ!!」


「え? うそ?」



 そう言えばそうだった。オレの履いているスカートってこんなに短かかったっけか。


 普段、魔物などと戦闘になっても森とか荒野とか、ひとけの少ない場所がほとんどだし、周りもアテナやルキア……身内ばかりで気にもしてもいなかった。


 こんな大勢のおじさん達の前で、確かに大股あげてパンツ丸出しで戦うってのいうのも行儀が悪い。流石のオレでも恥ずかしい。


 オレはメール達の方へ振り向いてオッケーっとばかりに、親指を立てた。


 しかし、目前のドゥエルガル達は、オレのスカートやパンツの事なんかよりも、一撃でノックダウンされた仲間を目にして驚いていた。


 ドゥエルガル達は、お互いで「行くぞ!!」っと言ってタイミングを合わせて残り6人全員で襲い掛かってきた。


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