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第272話 『エルフVSドワーフ』




 ユリリア達に新しい仲間が加わった。


 ウイングカイトという、鳥系魔物の使い魔。


 試しに指を檻の近くへ持っていくと、噛みつこうとしてきた。なかなかの気性、そして闘志を持っているようだがこれを慣れさせる為には、それに見合った根気が必要になるだろうな。


 考えてみれば、カルビの時もそうだった。カルビは最初、他のウルフ達と群れでオレに襲い掛かってきた。


 思い出すと懐かしい。カルビもあの群れでは、上手く馴染めてなかった。それで、単独でオレの後を追ってきたあげく、ニガッタ村までやってきてしまったんだっけな。


 オレとカルビの絆を結んだのは、あのミャオにすすめられて購入した極上のサンドイッチ。フフフ……


 そういう解りやすい何か、共通するものがあればきっとユリリアとこの鳶……ウイングカイトとの結びつきも強くなるはず。……うん?



「そろそろじゃあ、次のお店に行こうかな」


「そうね、楽しみ!」


「ルシエルさんも、一緒に行くでしょ?」


「行くって何処へ? また食いもん屋か? それなら、まだもう少し時間もあるし、一緒に行くぞ」



 メール達は、にこりと笑った。ぬぬ!! やはり食いもん屋か! 


 丁度、バザーまで歩いて色々商品を見て回ったお陰で、その前に食べたワーム丼ももう腹の中で既に消化しきっていた。これなら次に何がきても、きっと美味しく食べられるぞ。さあ来い、さあ来い!


 メールが先を指さした。



「こっちです、ルシエルさん。ここをもっと先まで行くと、私達の行きたかったお店があるんですよ」


「ほう、それはめちゃ楽しみだな。それはいったいどんな料理が出てくる店なんだ?」


「ウフフ。それは、行ってからのお楽しみです」



 メールがこっちを振り向いてそう言った刹那、メールは後ろから何者かに突き飛ばされた。



「きゃっ!!」


「メール!!」



 ミリーとユリリアがメールの名を叫ぶと同時にオレは、突き飛ばされたメールを抱きとめた。そして、睨みつける。



「なんだあ! こんな所で突っ立ってやがって!! ヒュームのメスか!!」


「なんだと? いきなり死角から突き飛ばすなんて、どういう了見だ?」



 見ると、そこには7人の小人? いや、ドワーフがいた。でも今まで街で見たドワーフとは違う。灰色の肌をしている。それに人相も悪く、こちらを見る目には十分な敵意が感じられた。そのうちの一人が進み出て言った。



「貴様らこそ、どういう了見だ? ここはオラ達の縄張りだぞ。そこへヒュームやエルフが入り込んで来るなんて不快だぜ。特にエルフは嫌いだぜ」


「残念、オレはエルフじゃねえ。ハイエルフだ」


「じゃあ、もっと嫌いだぜ! ハイエルフの姉ちゃん!! ぺっ!」



 灰色のドワーフはそう言って足元に唾を吐いた。


 なんて、腹の立つ奴なんだ。お好み焼き屋の店主や、ワーム丼の店員のドワーフ達とは全く雰囲気が違う。まるで、オレ達を目の敵にしているような感じだ。



「おい、それはそうと謝れよ」


「あん? なんだと?」


「聞こえねえのか。謝れって言ってるんだよ。もう少しで、突き飛ばされて怪我していたかもしれないだろ?」


「もう、ちょっと……ルシエルさん。もういいですから」



 メールが必死にオレの腕を引っ張る。しかし、こういう奴らってのは、オレは我慢できんのだ。



「おい、メール!! 離せ!! こいつ、ちょっと解らせてやる!!」



 オレは腕にしがみついているメールを引きずって、態度の悪い灰色のドワーフに詰め寄った。


 すると、灰色のドワーフ達は斧やら槌やらの武器を出して構えた。へえ、やっぱそう来たか!


 いいだろう、こっちの方が解りやすいしオレ好みの展開だ。オレは、メール達に少し後ろへさがっているように言うとナイフホルスターからナイフを抜いて構えた。



「うわあああああ!! エルフとドワーフが争っているぞお!!」


「なんだ、なんだ!!」


「喧嘩かん? 喧嘩なのかん?」


「皆ー!! ちょっとこっちきてみろー!! 面白そうな事になってんぞ!!」



 周囲にいた人達が野次馬に変わる。オレと灰色のドワーフ達が揉めている事に気づき始めて距離を取り囲んだ。くっそー、他人事だと思って……全員から見物量をふんだくってやりたい。


 オレと7人の灰色のドワーフがいる場所をぐるっと囲んできた野次馬によって、あっという間に人だかりができていた。


 オレが生まれ育ったエルフの里では、周りにいたエルフ達はそういった荒事が大嫌いで、嫌悪している節があった。だけど、ドワーフというのは喧嘩が好きな種族らしい。


 フフフフ、祭り感覚なんだろうか。俺はハイエルフだが、どちらかというとドワーフ達のノリの方が解りやすくて好きだなと思った。


 一番偉そうな奴――メールにぶつかってきた灰色のドワーフが前に出た。



「ここまで因縁つけられりゃ、誰だって腹が立つ。その綺麗に整った顔が痣だらけになって腫れ上がるが、それに懲りたらもう二度とオラ達に逆らうんじゃねえやな」


「ルシエルさん……」



 心配そうな表情をするメール達に、ウインクしてみせる。



「まっかせろい! ちょっとこのおっさん達、ぶちのめして反省させてやるからよ。まあ、これから美味いもん食いにいくんだからさ、もう少し運動して腹減りにしておいた方がいいってもんだ」


「エルフごときが、舐め腐りやがって……」


「さあ、つべこべ言ってないでかかってこいよ」



 ワワーーーーー!!


 ルシエルのそのセリフで、周囲に集まっている野次馬たちが歓声をあげた。


 ははは! 盛り上がってきたぞ! なんと言ってもストリートファイトだからな。


 ウハハ。それにしてもなんて、ノリが良くていい国なんだ、このドワーフの王国はますますオレ好みだと思った。これで、いつでも大空が拝めて草木があれば完璧なんだけれどな。



「後悔させてやる!!」


「その言葉、そっくりそのままお返しするぞ。だから、はよこい!」



 灰色ドワーフの額に青筋が浮き出ているのが解った。街の喧嘩は華だ。さあ、やってやんよ。


 灰色ドワーフ達が、武器を握り直して攻撃をしてくる体勢をとった。すると今度は、数十人の別のドワーフ兵達が大声を張り上げて割り込んできた。



「貴様ら、何をやっておるかあああ!!」



 あっという間にドワーフ兵に取り囲まれ、そして灰色ドワーフ達は明らかに不味いという顔をした。


 オレはどうしようか? ってメール達に視線を送ったがメール達もどうしていいか解らないといった感じで動揺している。


 不味いな。このまま、捕らえられて牢にぶち込まれるような事になれば、あとでアテナにどやされる。きっとルキアもうるさいぞ。きっとあの小さな手で、ポカポカ叩いてくるに違いない。ルキアのポカポカなんて、ぜんぜん効かねーけどな。


 ルキアの事を一瞬思いクスっと笑うと、オレは一生懸命にこのピンチを乗り切る為にどうすればいいだろうかと脳を高速フル回転させた。


 

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