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第270話 『バザー広場』




 ――――ドワーフの王国。中心街から南東に位置する場所に、メール達の行きたがっていたバザーが開かれていた。


 ここにはドワーフ達やこの国に訪れた冒険者、それに行商人といった感じの者達がバザーに並んだ商品を物色して回っている。


 中には、オレ達のような観光目的でこの王国へ来ていると思われる、明らかに楽しそうにはしゃいでいる者達もいた。


 これだけのグルメと、名工職人がいる国。そりゃ、至る所から人が大勢やってくるのも頷ける。


 メールとミリーが早速、ドワーフがやっている店に飛びついた。並べて売っているアクセサリーに興味津々だ。


 そう言えば、アテナもこういうものを見るの好きなんだよな。オレは花より団子って感じだけどな。



「うわーー、綺麗!!」


「私、これ買おうかな。どうしよう。どう思う、メール」


「ミリー! 迷ったら買う! 折角、このノクタームエルドくんだりまで来たんだもんね」



 メールのノクタームエルドくんだりと言った言葉がふと頭に残る。


 そして、メールやミリーと一緒になってアクセサリーに飛びつくという事はせず、オレと同じく二人の様子を見守っているユリリアの姿も少し気になった。だから、思った事を聞いてみた。



「ユリリア達も、オレ達と同じく冒険者なんだろ? そういや地底湖で一緒にキャンプした時に聞きそびれていたけど、何処からこのノクタームエルドにやってきたんだ?」


「私の出身地は、実はあの二人とは違うんです。もともと私はオラリオンの住人だったけど、カナディア王国に移り住んで、そこでメールとミリーと知り合いました。……メールとミリーとは、住んでいた家が近所で……それで仲良くなると二人が冒険者を目指していると聞いたんです。それから二人の話をしている内に、私も一緒にやってみたくなって……それで冒険者になって一緒に旅をしているんです」



 オラリオン騎士王国。騎士王が国を治めている国があるという噂は、聞いた事がある。


 ――なるほど、ユリリアは、そこで産まれたのか。


 どんな国かは、他に知らないし行った事もないけれど、騎士王国という位なのだから、想像するにきっとローザみたいなのが沢山いるイメージ。


 ……ローザめえ! ローザの奴、今頃何しているのかな……大怪我とかして、ベッドで寝たきりとかなってなきゃいいんだけどな。


 急になぜだかローザを思い出してしまって、心がくすぐったくなった。


 あとあれだ。カナディア王国も名前くらいは知っているぞ。クラインベルト王国からは、遠い国だ。名前くらいしか知らんからな。ワハハ。



「なるほどなー。じゃあ、だいぶん旅して来たんだな」


「はい! でも、メールとミリーがいれば、楽しい旅には違いないです」



 ユリリアはそう言ってにこりと微笑むと、オレの手を握って引っ張った。



「メールとミリーは、まだ暫くアクセサリーを見てるみたいだし、私達は私達であっちを見てみませんか?」


「あっち? あっちって、あっちか? どっちだ?」



 ユリリアが指す方を見ると、何か動物が入れられた檻が山積みになって並べられている場所があった。あれも店。


 そこには、ターバンを巻いた如何にも胡散臭そうな怪しいドワーフがいて、その檻に入れた動物を売って商売しているようだった。



「へえー、あれはなんだ? 沢山なんかいるな。ペットか家畜を売っているのか? でも、なんだか禍々しい気配も僅かに漂っているようだが」


「わあ。流石、ルシエルさんですね。ハイエルフだけあって、魔の力に敏感なんですね。実はあれは、魔物なんですよ」


「え? 魔物! そんなの買って何するんだ? 食べるのか?」



 ユリリアは、笑った。



「ルシエルさん、食べることばっかりーー」


「え? エヘヘへへ、そう?」



 でも、そう言えばあのワームだってめちゃくちゃ美味しかった。いつか食べたファイヤーリザードの肉で作ったカレーだって絶品だったし、ブラックバイソンやグレイトディアーだってその肉は、美味しいと知られている。しかし、実はその正体は魔物だ。


 森林ウルフもめっちゃ美味かったってアテナが言っていたよな。そう考えると、バザーに檻に入れられて並んでいる魔物を見て食材と考えるオレは別におかしくないはず。それ以外に何かあるのだろうか?


 そう言ってみると、ユリリアは更に笑った。なぜ?



「あっはっは。ルシエルさん、食べる事ばかり考えているなーって思って」


「し、失礼なり! そ、そんな事ないぞ!! 食べたら、そのあと眠くなるし、そしたら寝る事だって考えるだろ? それにあれだぞ! あれだ! 時にはもっと難しい事を考えている時もあるんだぞ! ほんとだぞ! ほんとあれなんだぞ!!」



 なぜか、オレは必死になっていた。



「あっはっは。ええ、解ってますよ。ただ、ルシエルさんも可愛らしい人だなと思って。だから、ぜんぜん馬鹿にしているつもりなんて、ないんですよ。私達全員、ルシエルさんやアテナさん、それにルキアちゃんの事が大好きですし尊敬しています。サヒュアッグからも、助けて頂きましたし恩人でもありますよね。冒険者としても、キャンパーとしても先輩だと思って慕わせて頂いているんですよ」


「う、うん。そうか! それなら、良かった。オレを尊敬か……よし、それならなんでも言ってくれ。力になるぞ!」



 エルフの里では、こんな事はなかった。


 オレを尊敬するとか大好きだとか、言ってくれる人も……里の皆は、オレから距離をとっていたし、他の仲間を見るような目ではオレを見てはくれなかった。


 あの目……今でも忘れない。オレは、エルフの里でオレにできる事をしてきたつもりだった。でも、その全てが裏目に出た。だれもオレを認めてはくれないし、存在自体を煙たがられているようでもあった。


 里の皆がオレの事を邪魔者と言い……陰では、呪われし者と囁かれていた。


 …………


 ……でも。

 

 でもそんなある時、思い切って里を飛び出してアテナと知り合い、一緒に旅をするようになってから、大きく全てが変わった。


 ルキアにカルビという仲間ができた。三人とも今やオレの大切な親友。ハルやミリス、ヘルツとそれにチギーという友達もできた。ミューリやファムともかなり親しくなったし、それに今度はオレの事を尊敬してくれるという者達もできた。


 ……凄く嬉しい。オレは幸せ者だと思った。



「それで、あの魔物が見たいのか? 欲しいのか?」



 ユリリアは頷いた。そして、檻の並べられている所へ駆けよっていく。並んだ檻に入れられている魔物をオレも見てみると、それがなんの用途で売られているのかやっと解った。


 ――カルビ。


 この魔物達は、カルビと一緒だ。ここで、売られているのは使い魔にできる魔物なんだ。



「なるほど、そういう事か。ユリリア」



 にこりと微笑むユリリア。


 ユリリアは使い魔を欲しがっているのだと気づいた。


 





――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ハル 種別:ヒューム

クラインベルト王国、アテナ一行が仲間と合流する為にニガッタ村へ向かった時に出会い仲良くなった冒険者。ルキアの耳を事あるごとにハムハムする。現在は、林檎が実ったトレントを探している。


〇ヘルツ・グッソー 種別:ヒューム

ボウガンが得意な冒険者。ルシエルとは、狩り共でクラインベルトやガンロックでも行動を共にすることがあった。


〇チギー・フライド 種別:ヒューム

ガンロック王国、カッサスの街で行われているクルックピーレースの選手。槍の腕前は確かなもの。レースでアテナやルシエル、ヘルツとも戦う。その後、ミシェル王女とエレファ王女の依頼でアテナ一行をノクタームエルドの入口まで馬車で御者をして送っていった。


〇オラリオン騎士王国 種別:ロケーション

ヨルメニア大陸の北部に位置する騎士が統治する国。騎士王と呼ばれる、騎士の中の騎士がいる。テトラの代わりにマリンは、リアが元気でやっている事をルキアに伝える為、ノクタームエルドへ向かっている。その途中エミリア・クライムネルというオラリオンの騎士に出会った。


〇カナディア王国 種別:ロケーション

仲良し三人組の一人、ユリリアの故郷。メールとミリーも実家は、オラリオンから現在は、移り住んでカナディアにあるという。ルシエルは、カナディア王国に行った事はないが、名前くらいは知っているらしい。

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