第269話 『丼』
ドンッ!!
勢いあまってテーブルを強く叩くと、早速注文。
「特選ワーム丼を四人分お願いします」
「あいよ、特選ワーム丼さんを、四人前ね! 少々お待ちくださんせー!!」
列に並びいざ店内に入ると、席に案内してもらい注文をした。そしてメール達と会話をしながら注文したものが出てくるのをソワソワしながら待っていると、ついにその噂のワーム丼とお目見えする時がやってきた。
「お待たせさんしましたー」
「わあ、待ってました!」
「いいかおりー」
「凄い美味しそう!」
メール達も、美味しそうな特選ワーム丼を目にして興奮している。オレだって、もうフライングしてがっついてしまいそうだ。これが、あのワームなのか?
目の前に運ばれてきたお盆には、特選ワーム丼の他に何かの漬物とスープもついてきていた。
どんぶりやらが自分の目の前に置かれる。
早速、ワーム丼の近くに顔を近づけてにおいを嗅いでみる。すると、甘くて香ばしい匂いがしてより一層食欲を掻き立てられた。これは、いいものだ。
食べやすいように、一口カットにされたワームの肉は、この店の秘伝なのだろうタレを満遍なく塗られていて極上の味付けがされている様子。その上には、おそらく食べられるであろう薬味の葉が細く刻まれのせられていた。
もとの素材が、巨大ミミズと言ってもいいような魔物の肉なのに、とてもワームとは思えないような上品な一品に仕上げられている。ドワーフの王国のグルメ、恐るべし!
全員分の注文した品がテーブルに並ぶと、ミリーが店員に声をかけた。
「私達、これをずっと食べたかったんです。やっと食べられるわ」
「そう言ってもらえると、ありがとさんです。食材に使用しているワームさんは、ワームさんの中でもダンジョンフルーツなども食べる少し変わったワームさんの肉を使用しておるんです。そして特選ワーム丼に使用している肉は、そんなワームさんの特に美味しいとされている……人間さんで言いますと丁度胸からお腹辺りの肉を、厳選し使用しております。それに加え、当店の先代さんから使用しておりますタレを使って丁寧に仕上げてるんです」
なるほど。このワームさんは、ただいい素材という訳ではなくお店のこの店が更に美味しくなるように工夫を重ねてきたのだなと思った。
「肉も丁度いいサイズ、一口サイズになっているし、薬味もいいね」
「肉のスライスには、このドワーフ王国でも指折りの、調理用道具専門の鍛冶職人さんに作ってもらった包丁を使用してるんです。いい食材は、いい包丁で調理する事で更に良い料理になりますからね。薬味は、岩山椒と呼ばれるもので、ノクタームエルドの山々に群生しているものを使用しました」
店員のその説明を聞いて、オレは拍手をした。メール達も「わあーー」っと言ってそれに続いたが、店員は照れ臭そうに、「ささ、冷めないうちに」と言った。
オレは両手を合わせると頂きますと言って、箸を掴んで特選ワーム丼の上にのっているワーム肉をまず一切れ、それだけで食べてみた。
パクリ……モッムモッムモッム……
「うんめえええ!! こいつは、ベラボーに美味いぞ!!」
「美味しい!! 美味しいですね、ルシエルさん」
あまりの美味しさに頬っぺたが落ちるかと思った。メールに親指を立ててみせる。これ、めちゃウマですわ!
ミリーやユリリアも夢中になって食べ始めた。まさかこんなに美味いもんだったなんて、予想を遥かに超えていた。
そして、今度は特選ワーム肉の下に敷き詰められたタレのかかったライスごと、お肉を頂いてみる事にした。
「ふむう! 特選ワーム丼、ワーム丼といかほどのものか!! 見せてもらおうじゃないか!!」
パクリッ!! モッチャモッチャモッチャ……
こ、こりは……こりはいかんぞ!!
甘くて香ばしく、そしてジューシーで柔らかなお肉が口の中でライスと一緒になって、最高の味と食感を醸し出してきやがる。これは……これは美味すぎるぞ! まさしくこれは、極上の一品。
この街に住んでいるミューリやファムは兎も角、アテナやルキア……それにカルビに食わせてやりたい。そう思える程、美味しかった。
スープも、美味しい。カットされた芋以外は、なんだかよくわからない野菜がいくつか入っているようだが、兎に角スープも美味いのだ。
何かで出汁も取っているようだが、ベースは味噌だ。味噌スープはキャンプでアテナが作ってくれる事もあるので、食べ慣れている。そして、お漬物。このワーム丼と味噌スープには、最高のお供だろう。
「っぷはーー。食った食った。美味しかったなー」
「美味しかったねー」
メールやミリーも続いて食べ終わった。
ユリリアは、オレ達に比べて少し食べるのが遅かったので、慌てずに食べればいいよと言った。
食事も終えて十分に満足すると、店を出た。さて……これからどうするか?
「確か、もう一店舗行きたい店があるんだよな」
言うと、可愛い三人娘は笑い転げた。
「ちょちょ、ちょっとまだすぐには食べられないよーー」
「あれだけ食べて、お店を出てすぐに次行くお店の話だなんて、本当にルシエルさんって面白い」
「アハハハハ」
「へへへへ……そう? じゃあ、ちょっと何処かでカロリーでも消費する? べ、別にオレはそれでもいいよ?」
メールがそれならと、街の遥か向こうの方を向いて指をさした。
「この街の南の方に、ちょっと遊べる場所があるらしいですよ」
「遊べる場所か? それはいいな」
「エルフにも、ルシエルさんのようなハイエルフという種族がいて、その他にもハーフエルフやダークエルフなどいるように、ドワーフにも色々な種族がいるみたいですよ。それで、そんなドワーフ達が種族ごとに集まって、色々なものを売ったり買ったりしているバザーがあるそうです。少しそこまでは、距離がありますけど食後の丁度いい運動になるかなって」
うーーん。確かに面白そうだと思った。ダークドワーフやハイドワーフっていうのがいるのかどうかは解らんが、いるなら見てみたい。
「いいな。それじゃ、そのバザーとやらに皆で行ってみようか」
「はい!」
仲良し三人娘は、ノリノリで返事をした。
アテナ達と合流するベップという名のドワーフが経営する宿には、夜までに着けばいい。それまで、まだまだ時間はある。
折角なので、色々と面白そうなものを見て、美味しいものを味わおうと思った。
げぷっ
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〚下記備考欄〛
〇岩山椒 種別:食べ物
ノクタームエルドに連なる山脈。そのほとんどが岩山。しかし、岩山でも僅かに植物が自生している個所もあり、そこで岩山椒が採れる。とても良いすっきりとした香りがあり、タレなど使用した料理に薬味として使用すると最高に味を引き立てる。




