第266話 『合金素材 その6』
――――ドワーフの王国。その遥か地底にある採掘エリア。
私はそこへ、マグマンド鉱石を採りにやってきていた。このヨルメニア大陸でも一番と言われる程の鍛冶職人達がいるドワーフの王国で、デルガルドさんという物凄い鍛冶職人に出会い、二振りの剣を作ってもらう事になったからだ。
デルガルドさんの話では、採掘エリア51と何処かに記してあるからそれを見つけて、その場所へいけばいい……そこで最も良質なマグマンド鉱石が手に入ると言っていた。
ドルフスのお陰で、予期せぬドワーフ王子達一行との遭遇から、身を隠してやり過ごす事ができた私は、早速のその場所の案内の書かれた立札を発見し、中へ入ってみていた。
それにしても、辺りは暑くて汗が止まらない。
汗を拭いながらも案内通りに洞窟を進み続けると、また拓けた場所に出た。周りは、溶岩の海に囲まれていて、崖がある。
崖下を覗くと、やはり溶岩が近くを流れていた。そしてその近くに、その溶岩と同じ色をして輝く鉱石があるのを見つけた。間違えない。あれがマグマンド鉱石だ。
「結構な高さがあるなー。まあ、でもお目当ての物を手に入れる為には下に降りて行かないとね」
ジボールから貸してもらったフック付きロープを取り出すと、崖近くの岩に引っ掛けてしっかりと固定。それからロープを崖下に垂らした。
「さあ、降りて行こう」
しっかりとフックが掛かっているか十分確かめた後、ロープを握って崖下に降り始めた。
ゆっくり、ゆっくり――慎重に降りていく。崖下は溶岩が流れており、もしも落下するような事があったら大変な事になる。しっかりと、一挙手一投足を確認しながらロープを伝って下に降りて行った。
すると、ある事に気づく。
考えてみれば崖の下は煮えたぎった溶岩が流動しているんだから当たり前の事なんだけど、マグマンド鉱石を目前にしてその事を考えていなかった。
ロープで下に降りる程、熱いのだ!! 下から舞い上がってくる熱で、特に背中とお尻が燃え上がるんじゃないかという位に熱くなっている。
「あちちち。デルガルドさん、こんな事言ってなかったなあ。これは結構大変だよ。水属性、もしくは氷属性魔法が使えれば、上手く使って熱さを軽減させれそうだけど。使う事ができないんだから、いくら言っても栓無き事だよね。ここは、一気に行った方がいいね」
苦しみは一瞬の方がいい。思い切ってスルスルスルっと下に降り、マグマンド鉱石のある近くの足場に着地した。
足場の近くには、溶岩が流れていて蒸し風呂どころじゃない熱さだった。それに伴って身体中から大量に発汗もして、着ている服も髪もビッショビショ。まるで、頭からバケツの水を被ったみたいになっていた。着ている服が張り付く。
「ひいーーー。熱い!! 熱いよ!! いつまでも、こんな所にいられない。ひょっとして、ドワーフってこういう場所でも作業できる耐性を兼ね備えているんじゃないの? だからデルガルドさん、こんな事言ってなかったのかもしれない。ヒュームの私にはつらすぎるよ」
マグマンド鉱石の近くへ行き、それを見下ろすとピッケルを取り出してそれ目掛けて振り下ろした。
気が狂いそうな位に暑くて熱いけど、マグマンド鉱石を傷つけないようにしっかりと慎重にピッケルを岩へ入れていく。
カツーーンッ、カツーーン!!
カランッ!!
「よし! とりあえず、一塊ゲット! 本音を言えば、少しでも早くここを脱出したいけど……また来なきゃなんて事にならないように、もう少し採掘しておこう」
頑張って、これだけあればいいだろうと言う以上の量を採掘した。これで、良し。
満足した私は、身体中から流れ出る汗を拭いもせずそのままにロープを掴んで、ここへ降りてきた崖上目指して昇り始めた。
「ううう、熱い……急いで上にあがらないと日干しみたいに……ん?」
崖下に垂れたロープを中間まで登った所で、私は自分の臀部に飛び上がる程の痛みを感じた。
「いったーーい!! って言うか熱い!! 熱い熱い、あちちちちち!!」
火傷のような痛み。振り返って見てみる。
すると、あまりの熱さのせいで発火したのか、それとも流れる溶岩から何かが飛び火してきたのかは解らないけれど、兎に角私のお尻に火が点いていた。
危うく握りしめていたロープから手を離しかけたけど、思い直してぎゅっと握って壁に足をかけて一気に崖上まで昇って這いあがった。
「あちちちちち!! っもう!!」
崖上まで昇りきった私は、慌てて火のついていた自分のお尻を両手で擦った。
いたたたた……物凄くヒリヒリしているし、お尻の真ん中の部分に大きな穴が開いてしまったようだ。いや、お尻にはそりゃあるんだけど、パンツに穴が開いてしまったという事。スカートとマントは大丈夫みたいだけど、最悪だよ。
うううう……どうしよう。
よく考えれば想定できた事かもしれないけれど、本当にうっかりしていた。
私の下着以外の装備は、着ている服とスカートも含めて火や雷、冷気などにも耐性のある一級装備だった。
ジボールから借りたこのロープも火が付かなかった所を見ると、こういう場所でも採掘作業できる専用の耐性のあるロープなのだろう。
まあ、こういった場所で作業するドワーフが使っているロープだもんね。当然と言えば当然か。
だから想定もしていなかった。まさか下着だけが、燃えるなんて思ってもみなかった……くすん。
「さてと……もう起きてしまった事はどうにもならないしね。いくら悔やんでも仕方がない。それに、これでデルガルドさんが必要だと言った鉱石は全て集め終わったんだから、これでようやく剣を生成してもらえるしね。急いで戻ろう」
私は、火傷してヒリヒリしている自分のお尻に回復魔法ヒールをかけて癒すと、もと来た出口の方へ歩き始めた。
それからデルガルドさんのもとへ鉱石を抱えて戻るまで、やっぱり気になちゃって何度もお尻の焼けて穴の空いた部分を擦っていた。
ドワーフの王国に、私に会うサイズのパンツがあればいいんだけれど。
――そんな事を考えていた。
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〚下記備考欄〛
〇アテナの装備 種別:防具
アテナの普段着ている服は、特注品でとんでもなく良い素材がクラインベルト王国でも一流の防具職人によって使用され作られている。火や冷気などの耐性だけでなく、物理攻撃による衝撃や斬撃なども多少は緩和する力も付与されており、マントに関しては一級品かそれ以上の品だと思われる。因みに下着は、普通の市販のものなので破ろうと思えば破けるし、火に晒されれば燃える。




