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第263話 『合金素材 その3』




 サラン鉱石を手に入れてから、更に別のお店を続けて二軒回った。


 一軒目伺ったお店と同じく鉱石を専門に扱っているお店でクロム鉱石を受け取り、またそこから少し離れた場所にある冒険者ギルドで、オリハルコン鉱石を受け取った。


 オリハルコン鉱石は、やっぱりこのドワーフの王国の街でも簡単に出回らないもので、その希少価値も凄まじくジボールは何度も見せてくれと言って、オリハルコンを手に取っては眺めて唸っていた。



「残る鉱石は、マグマンド鉱石ね。それじゃ、ジボールにちょっと頼みたい事があるんだけど、いいかな?」


「ワシにこの集めた鉱石を先にデルガルドんとこへ、もってけーゆー事ちゃうか?」


「うん。お願いできるなら、私はこのままマグマンド鉱石を取りに更に地底に降りて行こうと思うんだけど。そこは魔物がでるだけでなく、地形的にかなり危険らしくてモークも連れていけないから、私が戻るまでジボールに預かっていて欲しいんだけど……駄目かな?」



 ジボールは舌打ちすると、少し考える祖ふりを見せた。



「ええやろ!! マグマンド鉱石がある場所は、ワシもあまり行きたくない。それでも一緒に行ったろー思ってはいたけど、足手まといになってもあれやしな!! それなら、これ持っていけや!!」



 ジボールはそう言って、自分の持ち物からロープ一式とピッケルを取り出し差し出した。



「絶対これが必要になるから、持ってったったらええ!!」


「ありがとう、ジボール。じゃあ、行ってくるね」



 ジボールにそう言うと、私はこの王国へ最初に入ってきた時に渡った吊り橋へと移動した。


 ジボールは、吊り橋まではついてきてくれて、私が見てなくなるまでずっと、モークと一緒に見送ってくれていた。


 吊り橋を渡り終えたら、王国の西側へと向かう。すると巨大な黒い岩が立ち並ぶ場所があって、それが目印だとデルガルドさんは言っていた。


 暫く歩くと、確かにその岩はあった。その奥へ更に進むと、黒い岩に囲まれた場所があって、その中に地底へ潜れる洞窟があった。


 洞窟は坂道になっていて、先に進むに連れてどんどん地下へと潜っている。道は真っ暗で、何も見えないので懐中灯を取り出し、スイッチを入れて辺りを照らして歩いた。


 もうかれこれどのくらいだろう。


 クラインベルト王国を飛び出した時は私一人だったけど、それからルシエルやルキア、それにローザとも出会って旅やキャンプをした。ノクタームエルドに入ってからは、ミューリやファムも旅する仲間に加わった。


 だから、久しぶりにこうして一人で行動していると、結構心細く感じてしまう。それが洞窟ならなおさらだ。


 ルシエルやルキア、ミューリやファムは今もあの王国の街の中にいて、私はあの子達をおいて王国の外に出てきている。なんだか、不思議な感じ。


 そんな事を考えながらどんどん奥まで進んでみると、立札が見えた。デルガルドさんから聞いていた立札。


 ここを左に曲がって少し進むと、地面にハッチがある。そこから、更に下へ降りられるらしい。



「本当だ。あれだ、あそこから更に地下に降りられるのね」



 大きな鉄板を見つけた。近づいて、持ち上げる為に鉄板に指を入れて力を入れた。



「ぐぬぬぬぬぬ!! うおおおおおおお!!」



 ――――駄目!! もう限界!! このまま続けたら、血管が破裂しそう! 


 手を離して尻餅をついた。



「はあ、はあ、はあ。なんて重い鉄板なの。デルガルドさんからは、ここをあけるとタラップがあって、それを使えばもっと下に降りていけるって言っていたけど……こんな大きな鉄板、そもそも私の力じゃ持ち上げられないよ」



 試しにジボールから借りたピッケルを、鉄板の下へ咬ませてテコの原理で持ち上げてみた。



 ……ズズ


 

「うっ!! 駄目!! もう、駄目!!」



 少し動いたような感じがしたけれど、これ以上は無理。手を離した。

 

 マグマンド鉱石がある場所は、まだまだ地下の方なのに、こんな所で手こずっているなんて。……どうしよう。


 剣術と料理なら自信はあるけれど、私には腕力はそれほどない。頭を抱えて自分の非力さも加えて、悩んでいるとある事に気が付いた。



「あれ? 待って。別にこの鉄板を持ち上げる力が私になくても、持ち上げる方法ってあるよね。そうよ、魔法を使えばいいんだ」



 そう、私は魔法を使う事ができる剣士だった。



「そうよ、それならこの下へ行くルートの蓋になっている重い鉄板を、私一人でも動かす事は可能だわ」



 辺りを照らしていた懐中灯を、鉄板の辺りを照らせる向きして地面に置き、早速魔法を唱えるべく鉄板に向かって立った。



「鉄板を持ち上げるなら、やっぱり風属性の魔法かな」



 風の魔法を巧みに使う、ルシエルやファム程じゃないにしても、私も風魔法は使える。両手を鉄板の方へ突き出して、体内から魔力を集めるようにして魔法を唱えた。



「風よ!! 目の前の鉄板を巻き上げて!!」



 そよ風が鉄板に吹きかかった刹那、小さな竜巻が発生し鉄板を宙に押し上げた。



「やった!!」



 ガラーン、ガランガラン!!!!



「いっ!! 耳が!!」



 魔法をといた瞬間、風魔法で宙に浮いたあの重く大きな鉄板が勢いよく地面に落下し打ち付けられた。その衝撃で、凄まじく大きな金属音が辺りに鳴り響いた。耳がキーンってする。



「ううう……しまった。やっぱり風魔法がお得意のルシエルかファムがいたら、上手にやってくれたかもしれないけど……私はこれが限界かな」



 両手を自分の両耳に当てて、癒しの回復魔法(ヒーリング)を唱えた。癒しの光。キーンという耳鳴りと共に耳の痛みも、癒された。


 私は爺のスパルタ魔法教育のお陰で上位魔法も使う事はできるけど、魔法はあまり得意ではないんだよと心の中で、今一度呟いた。


 まあ、何にしても入口は開かれた。


 鉄板のあった場所に近づきハッチの中を覗き込むと、確かにデルガルドさんの話の通りタラップがあった。



「よし! 降りてみよう!!」



 私はタラップに足と手をかけると、慎重に地下へと降りて行った。


 時間にして5時間くらいでマグマンド鉱石を採って帰ってこれると言っていたけど、はたして本当にそれ位で戻ってこれるのかなと、ちょっと不安になった。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


癒しの回復魔法(ヒーリング) 種別:神聖系魔法

黒魔法とは異なり、怪我など癒すことができる魔法。クレリックやプリースト、シスターなどの聖職者が一般的には使用できる。

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