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第258話 『可愛い蜘蛛さん』




 デルガルドさんの家に、大樽10樽を荷車に積み込んで向かっていた。すぐ届けてくれるって事だったから、私とジボールも荷車に乗せてもらった。


 ……もらっていた。


 なぜ、過去形になっているかというと、酒屋の従業員のドワーフが御者をしてくれているのだが、その荷車に最初、私とジボールも乗せてもらっていた。


 でも、荷車に乗ってすぐにどうしてもある事が頭から離れなくなり我慢ができなくなってしまった。それは、この荷車を引く大きな蜘蛛に騎乗できないかという事だった。


 目の前を歩く大きな蜘蛛を見ていると、どうしようもなくなって早速聞いてみる。


 すると酒屋さんとジボールは、物凄い驚いた。きっと、今までそんな事を言い出す冒険者なんてこの王国にはいなかったのだろう。


 でも、乗って大丈夫なら是非乗ってみたい。


 すると酒屋さんは、にこりと笑って「どうぞ」と言ってくれた。私はそれを聞いて、直ぐ様荷車を飛び降りた。


 この大きな蜘蛛は特に大人しいらしく、人間に対して攻撃性も無い上に、ちゃんと調教されているので騎乗してもいいと言ってくれた。私は歓喜の声を上げて、大きな蜘蛛の背に跨った。



「よろしくね、蜘蛛さん」



 それからは、大きな蜘蛛に抱き着いている。毛がモッサモサで気持ちいいし、特に嫌な臭いもしない。そして、大人しくひたむきに頑張って荷を運んでいるその後ろ姿は、とても愛らしく思えた。


 暫くそれで、街中を進んでいると至る所から笑い声や驚く声が聞こえてきた。


 この大きな蜘蛛は、それ程ここでは珍しいものではないみたいだけど、ヒュームの冒険者の娘がその大きな蜘蛛の背に張り付いている姿はなんとも珍しいようで、街を行きかう人達の視線はかなり突き刺さっていた。


 だけど、私はいっこうに気にしない。


 だって、こんな荷を運んだりして人間と共存している蜘蛛の魔物なんて、今まで見たことがなかったんだから。


 ガンロック王国で、馬のように大きくて早く走る鳥――クルックピーを見た時は、ルシエルが大興奮していたから、それを見て無意識に気持ちを押さえていたけど、私だってこういう生き物は大好きだ。


 今はルシエルとは別行動中だし、ルキアがいればちゃんとお姉さんを演じて見本にならなくちゃだけど……だけど今は、単独自由行動中。なので、暫しハメを外して存分に戯れようと思う。エヘヘ。


 荷車からジボールが叫んだ。



「アテナは、きっと荷運び蜘蛛を見て悲鳴をあげると楽しみにしてたのに!! ぜんぜんや!! ぜんぜんビビらへん!! おもんないわ!!」


「ウフフフ。そりゃビビらないよ。だって、こんなに可愛いいい子なのに」



 そう言って、一生懸命荷車を引く蜘蛛の背を優しく撫でた。



「そういえばこの子達の名前、荷運び蜘蛛っていうの?」



 リンド・バーロックの本にもこの蜘蛛の事は記されていなかった。っという事は、最近になって利用され始めた魔物なのかもしれない。



「せや!! 荷運び蜘蛛って皆言うとる!! でも、正式名称はソイルスパイダーや!!」


「ソイルスパイダー?」


「そや!! このノクタームエルドの大洞窟には、地底湖や湧き水が流れて川みたいになっとる場所があってな!! 更にそこに土が溜まって色々な植物が生えとる場所があるんや!!」


「もしかしてそこに生息しているの、この荷運び蜘蛛は」


「せや!! そこにおったりする!! そういうとこには、ダンジョンフルーツや食べられるキノコなんかが生えとって、そういうもんを好んで喰うらしい!! もちろん、蜘蛛やから肉も喰うらしいねんけど、果実とか好きな蜘蛛やからか、大人しいのかもしれへん!!」


「へえーー、そうなんだ。可愛いだけじゃなくて、とても面白い蜘蛛さんなのね。でもやっぱり、果実好きの蜘蛛なんて可愛い」



 ジボールが頷いた。



「……この蜘蛛が気に入ったんやったら、レンタルできる店もあるで!! 後で、試してみるか?」


「うそーー!! してみたい、してみたい!!」


「そ、そうなんや。じゃあ、後で行ってみよーや!!」


「って言うか、色々と突き合わせてしまってごめんなさい。ちょっと道を教えてもらうつもりで、ジボールに声をかけたのに、こんなにお世話になってしまって……」



 ジボールには、単なる軽い気持ちで道を尋ねようと思った。


 正直、ドワーフという種族の事はあまりよく知らないし、何処の誰を見ても、立派な髭を蓄えていて気難しそうに見えた。


 まあでも、ギブンさんとか穏やかそうなドワーフがいるって事も知ってはいたけど――


 でも、どうせ声をかけるなら優しそうな人がいいかなって思って、たまたまドワーフのトレードマークの一つであるお髭に、私の髪色と同じブルーのリボンを結ったドワーフがいて声をかけてみたんだけど……


 ちょっと、正確は不器用な感じの人だけど、とても優しくて親切な人だった。それがジボール。



「……」

 

「え、なんて言ったの?」


「ええって言ったんや!! 好きで案内しとんねん!! だから、ええ!! 気にすんな!!」


「ありがとう、ジボール」



 そう言って、なぜか蜘蛛に再び抱き着いた。


 よし、もうこれはあとでこの蜘蛛をレンタルしちゃおう。それをレンタルしたら、それに乗って宿まで行く。くっくっくっく。今からルシエルとルキアが、この蜘蛛を見た時の驚いた顔を想像すると楽しみになってきた。


 ――――デルガルドさんの家に到着。


 再び、ジボールが背負っていた大きな木槌で扉を叩いてノック。すると、ゴゴゴゴと城門のように大きな扉が少し開いたので、酒屋さん達に中へ大樽10樽を運び込んでもらった。


 お礼を言うと、酒屋さんと可愛らしい縞々の大きな蜘蛛たちは、店に引き返していった。



「これは驚いた――本当に、酒を持ってきたのか」



 大きく唸るような声。



「あなたが、酒が飲みたいって言ったんでしょ? それで、剣を作って欲しいんだけど、お酒を全部あげるから飲みながらでも、私の依頼を受けるか答えを聞かせてくれない?


「いいだろう。だが、儂は酒を飲みながら仕事をする」


「え? それは別に……それでいい仕事ができるなら、私は別に気にしないけど」


「むしろ、その方ができる。だがな、酒を飲むんだったら、いいつまみがいるだろ? そう思わんか?」

 


 デルガルドさんはそう言うと、大きな扉を更に開いてその巨人のように大きな身体を現した。そして、大きなトゲ付きの金棒を手に持つと、家の外に出た。


 …………ちょ、ちょっと待って……冗談でしょ? まさか、これからつまみを調達しに行くとか言い出すんじゃないよね?


 そう思いながら、デルガルドさんの顔を恐る恐る覗き込むと、デルガルドさんはにやりと笑った。

 






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇リンド・バーロック 種別:ヒューム

およそ150年前に実在した冒険者。彼の書いた本をアテナは愛読していて、その冒険を参考に自分も冒険をしている。リンド・バーロックはクラインベルト王国出身で、クラインベルト、ガンロック、ノクタームエルドと旅を続けていて、アテナもトレースしている。


〇棘付き大金棒 種別:武器

とてつもなくでかい棘付きの金棒。デルガルドが護身用で、うちに置いているものだが……デルガルドを見る限りこんな武器がなくても……と思ってしまう。自作品です。

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