第256話 『ドワーフorジャイアント』
私達が住んでいるこのヨルメニア大陸には、色々な種族の人間が住んでいる。
例えば私やミューリやファムは、ヒュームという種族で、ルシエルはエルフの中でもより強い精霊力を持つと言われているハイエルフだ。
ルキアは獣人で、獣人によってもまた色々と種類がある。
例えばルキアは猫の獣人だけど、その友達のミラールが狼、ロンが犬、クウが狐で、ルンが狸とバラバラだ。それぞれに特性がある。
そういえば、私に凄くよくしてくれた王宮メイドにテトラという子がいたけど、彼女も狐の獣人だった。しかも、とびきり可愛い女の子で尻尾が4本もあるという珍しく神秘的な力を感じる獣人。
しかしなぜ今更ながら、種族というものに対して一旦考えてみたいと思ったのだろうか。
その理由は、目の前にあった。
デルガルドという凄腕鍛冶職人の家の扉を見たからだ。
デルガルドという鍛冶職人は、ジボールと同じくドワーフらしい。ドワーフと言うのは、先程例をあげたヒュームやエルフと同じく種族の名前。
背丈はヒュームの子供位の大きさで、体格はずんぐりした感じ。
女性も一緒で、男性は立派な髭を蓄えているものがほとんど。手足は短く筋肉質で、その体格と鉱石を好む性質を生かして炭鉱や鉱山などの採掘場で鉱石や宝石を採掘したり、それらを使用して剣や防具、装飾品などを作って生計を立てている者がほとんど。なので、器用でもある。
酒好きで、気性は荒々しい。
まあでも、気性が荒々しいっていうのは、どうかと思うけど。少なくとも私が出会ったドワーフのほとんどが温厚。
しかしながら、一般的にそういう風なイメージがドワーフに定着しているという事は、冒険者には穏やかなドワーフが多いだけで、職人気質の人は荒々しいのかも。ジボールみたいに……ぷぷっ
「何を笑ってん⁉ ほれ!! 扉をノックせいや!!」
「ノ、ノックって普通にすればいいの?」
「あん? そんなん見たら解るやろーが!!」
あれ? 心の声を聞かれた? そんな訳ないか。
そんな事よりも、なぜ私がこんな事を言ったのか。
そう、デルガルドという職人の家の大きさもそうなんだけど、扉が巨大で普通に叩いていいのか解らないからだ。家の扉というよりは、城門。
このサイズの扉に普通にコンコンとノックして、気づいてもらえるのだろうか。
そして、物凄く疑問に思っている事なんだけど、ドワーフはがっちりして筋肉質の身体をしていても、一般的に背丈は小さいのだ。ジボールもそうだし、ギブンさんや他のドワーフもそうだった。…………だから、この巨大な扉は尚更奇妙に感じた。
私がいつもでも戸惑っていると、ジボールは背負っている大きな木槌を手に持ち、巨大な扉の前に立った。そして、おもむろに振りかぶる。
ドーーーン!!
大きな木槌が巨大な扉に、衝突する。大きな音と振動。驚いている私に特に気にするといった様子も見せず、ジボールは繰り返し木槌で扉を叩いた。
ゴゴゴゴゴ…………
「え?」
すると、扉はゆっくりと開かれる。その扉にかけられた大きな手。もしかして、デルガルドという鍛冶職人は巨人? そんな考えが脳裏に浮かんだ。
「デルガルド!! 生きてるか!! ジボールだ!!」
叫ぶジボール。すると、扉は更に開き巨人が姿を現した。いや、もっと正確に見た目から判断すると、巨人ではなく巨人サイズのドワーフ。
巨人サイズのドワーフが目の前にいた。
「……ジボールか、なんぞ? 儂になんぞ、用か?」
唸るような大きく野太い声。ドワーフ? 巨人? こんな身体の大きなドワーフを見たことが無い。でも、シルエットは確かにドワーフそのもの。
「デルガルド!! このヒュームの女、アテナと言うが――お前の仕事を見せたれや!!」
「……仕事か?」
私はデルガルドさんの前に進み出ると説明した。
「初めまして。私、冒険者のアテナといいます。丈夫でよく斬れる剣が欲しくて……それでたまたま声をかけさせてもらったジボールに、腕のいい鍛冶職人がいるとあなたの事を紹介してもらって。それで、剣を作ってもらおうと思ってきました」
「…………」
「あの……?」
デルガルドさんは、ジトっとした目で私を無言のまま見下ろしていた。
しかし、大きな身体。ドワーフなのか巨人なのか聞いてみたいけれど、いきなり今そんな事を聞くのは、ちょっと失礼な気もするし……威圧感が半端じゃない。だから、まずは要件から伝えた。
「デルガルドさん?」
見かねたのか、ジボールが口を挟む。
「おい!! 聞いてんのか、デルガルド? 質問に答えたれや!! アテナがお前に聞いてんねん!! 遥々きとんねん!! 作ったるんやろ?」
「……必要なのは、一振りか?」
「できれば二振り欲しいかな」
デルガルドさんが私の腰の剣『ツインブレイド』に気づいた。じっと見ている。
「その剣は……なるほど、そういう事か。それで、アテナ……お前は、二刀流か?」
「うん。でも、作ってもらいたい剣は二刀流として使うものじゃなくて、それぞれで使うものを作って欲しいの」
「ほう……それで、報酬は?」
「えっと、逆にいくらぐらいになりそうかな? 少々高くなっても、支払える額のお金を持っていると思うから逆に額を提示してもらえれば嬉しいんだけど」
また、黙るデルガルドさん。
その大きな足に、ジボールは「聞いているのか!」っと、木槌で勢いよく叩いた。しかし、デルガルドさんには、まったく何も効いている様子も無く、木槌で叩かれた所をポリポリと軽く掻いただけだった。
「おいこら!! アテナが聞いてるやろが!! すぐ答えろや!!」
長い顎髭に可愛いブルーリボンを付けた、怒れるドワーフ。いや、ちょっと段々慣れてきたんだけど、ジボールは普段からこんな感じでこれが普段の彼なのかもしれないと思った。
デルガルドさんは再びジトっとした目で、私を見下ろすと大きく唸る様に答えた。
「……じゃあ、最高にいい剣を作ってやってもいい」
「本当!! ありがとう、デルガルドさん!!」
「……だが、いくつか条件がある」
『条件?』
私とジボールは、同時にハモって言った。
「まず、酒を持ってこい。上手い酒だ。それを持ってきたら仕事の話をする」
酒――クラインベルト王国にも沢山の職人がいるけれど、確かに酒飲みだったり変わり者だったり頑固者だったりというイメージがある。
巨人のように大きな身体って事を除けば、お酒が好きだったり風貌的にもよく街とかにいる他のドワーフの職人と変わらないのかもしれない。
私はデルガルドさんに「じゃあ、素敵な剣を作ってください」っと頭を下げた。
さて……それじゃいったいお酒を何処で調達すればいいんだろう。
私は、首を傾げて考えた。
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〚下記備考欄〛
〇デルガルド 種別:ドワーフ
アテナが剣を作りたいと言ったので、ジボールが紹介してくれたドワーフの王国の鍛冶職人。巨人のように大きな身体。ドワーフと言えば人間の子供位の背丈で、がっしりとしているイメージだが、トロルよりもでかいデルガルドを見て、流石のアテナも驚きを隠せなかった。ものっそい、お酒好きだがドワーフという種族はもともと大酒飲みが多く、デルガルドは巨人並みの体格なので飲む量は、とんでもない。
〇大木槌 種別:武器
ジボールの所持している大きな木槌。木製の割には、丈夫で破壊力もある。




