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第251話 『オコノミヤキとは……』




 ――――吊り橋で一悶着あったけれど、ついに私達はドワーフの王国へ入国した。


 ドワーフの王国は、ポール達と悶着のあったあの大きな崖にかかる吊り橋を渡ったすぐ先にあった。


 入口には、芸術的な石像があちらこちらに飾られている。


 大きなゲートがあり、そこには何人ものドワーフ兵が見張りとして立っていた。


 ゲートを潜ると、地底湖で見たものよりも遥かに巨大な大空洞が広がっていてそこには沢山の建造物があり、大きな石造りの街になっていた。


 中央には、巨大な岩山のような形をした城が聳え立っている。きっと、あそこにはこの王国の王――ドワーフ王がいるのだろう。そして、その上からこの石造りの街を眺めているに違いない。


 街には、多くの人が行き交い、ごったがえしていた。活気もある。


 私と同じヒュームも所々に見かけるけど、ほとんどの人達はドワーフ。本当にここは、ドワーフ達の国なのだと実感した。


 しかし、この城や街がある大空洞、なぜこんなに遠くまで見渡せる位に明るいのかというと、もちろんそこら中に松明や灯りが掲げられているのだが、街のそこら中に大きな泉のような場所があり、そこにはマグマが湧き出していたからだった。


 だから、空洞内はマグマに照らされ明るいけど、蒸し風呂のように暑い。先程から顔や背中を伝ってくる汗が止まらない。



「おい!! アテナ、大変だぞ!! あれを見ろ!!」



 ルシエルが尋常では無いものを見つけたような顔をしたので、その方を見た。


 いったい、何があったの? ルシエルのその血相を変えた表情を見ると、何か良からぬ大変なものを見つけたのだろうかと思った。 


 しかし、違った。


 ルシエルが指した先には、一人のドワーフが店をやっていて、外から見えるところで鉄板を使ってヤキソバを作っていた。


 恥ずかしくもルシエルの様子にシリアスになっていた私は、ずっこけた。


 いたたたた……吊り橋でポール達と戦闘になった時に、崖下に落下するラングレンを助けた。その時に、足にワイヤーを巻き付けて負った傷がまだ痛む。


 一応、回復魔法で治療はしたけど突っ張ったり捻ったりすると、かなり痛みがあるし完全回復とまではまだいかない。もう少し時間がかかる。だから包帯を巻いて、杖をついて様子を見ている。



「ちょっとー、血相を変えて言うから何かと思えば、ヤキソバじゃない」


「え? ヤキソバだよ!! でも、ドワーフが作るヤキソバって最高に美味そうじゃないか? 今使用している鉄板だってきっとドワーフが作ったものだぞ!」


「ド、ドワーフと仲が悪いっていう一般的なイメージの、エルフのセリフじゃないわね。偏見かもしれないけど、違和感が凄いんだけど……でも、確かにルシエルが言うように、物凄く美味しそうなヤキソバだね」


「なあ、いいだろ? 食っていこうぜ! なあ、いいだろー? なあなあ」



 纏わりつくルシエルを、押して向こうへやる。


 全員の意見は? って皆の顔を見る。すると、ルキアもヤキソバに見とれていた。ミューリやファムもうんうんと、頷いている。


 そして、ミューリがなぜか自慢げに言った。



「ここの親父さんの店は最高に美味いよ。僕もここへ帰ると必ずと一回はよって食べるんだ。特にヤキソバ、オコノミヤキって言う料理は絶品だ。お腹減っているんだったら、僕もオススメするよ」


『オ、オコノミヤキ!?』



 ルシエル、ルキアと3人でハモって言ってしまった。ミューリに笑われる。


 オコノミヤキって、絶対美味しいと断言できるネーミング。そんなオススメとか言われたらもう、このお店に入るしかないじゃない。


 立ち止まって鼻をくんくんさせながら、あれこれと話していると、それに気づいたお店の親父さんが手招きしてきた。



「ほら、アテナ!! 呼んでるって!! 入ろ、ねえ入ろ! 昼飯まだだし、ここで食べようぜ」


「そうね、確かにお昼もまだだし――私もそのオコノミヤキっていうの食べてみたいし……じゃあ、入ってみようか」


「やったーーーー!!」


「やりましたね。ルシエル!」



 ルシエルとルキアがハイタッチする。ミューリはトコトコトコっと素早くお店の方へ行って親父さんと何か話をし、こちらに手招きした。



「どうしたの、ミューリ?」


「入るんなら、皆一緒に入れるかの確認だよ。今、確認したんだけど、全員一緒に座れる席があるって。じゃあ、入ろうか」


「そうなんだ。ありがとう、ミューリ」



 ミューリは、全員一緒に同じテーブルでついて食事できるか確認してくれたのだった。

 

 店に入ると、結構お客さんは入っていた。そして、ヤキソバもそうだけど、何やら美味しそうなものを皆食べている。


 ふむふむ……クレープのような感じもするけど、なんだかもっちもちしていて分厚くて……皆、鉄製のヘラを使って上手に食べている。あれが、噂のオコノミヤキって訳ね。


 今思い出したんだけど、実はオコノミヤキの話は、冒険者として旅に出る前……クラインベルト王国にいる頃から耳にしていた。


 でもその物自体は、今初めて見る。なので、過去にオコノミヤキと耳にした時に一度食べてみたいなと思っていただけに、ルシエルに負けず劣らずテンションがあがってしまった。


 オコノミヤキ――それは遥か東方の国、確かキョウシロウが住んでいた国の食べ物。


 クラインベルト王国にいた頃にどうしても、このオコノミヤキが食べたくなって色々とそれについて調べたり、詳しそうな商人に聞いたりはしていたんだけど、美味しい本場のオコノミヤキを食べるのであれば、その東方の国へ行くか――もしくはこのドワーフの王国で食べると良いとの事だった。


 それじゃなぜ、オコノミヤキ発祥の東方の国は兎も角、このドワーフの王国もオコノミヤキがオススメに入る国なのか? 


 それにもちゃんと理由があった。


 かつて、東方の国を旅したドワーフがオコノミヤキの味に感動して、作り方を学びこのドワーフの王国に持ち帰ったのだという。


 そして、ドワーフの王国でも、オコノミヤキは親しまれ愛される食べ物になり、オコノミヤキやヤキソバ専用の鉄板専門で作るドワーフの職人まで現れるようになり、オコノミヤキは更にこの地で専用鉄板と共に進化を遂げ、大陸中で有名になったという訳だ。


 うんうん、人にも食(職)にも歴史ありってね。



「アテナ。座らないんですか?」


「うん? ええ、もちろん座るよ、ルキア」



 店内を見回すと、角の方に全員で座れるテーブルがあったので、そこへ座った。私は右足を痛めていたので、杖を立てかけると一番手前の席に座らせてもらった。


 ドワーフの従業員がオーダーを取りに来る。



「いらっしゃいん。ご注文は、お決まりでん?」


「そうね、じゃあ早速オコノミヤキというのを食べてみようかしら」


「オレはねーー、オレはねーー」



 店内はオコノミヤキの焼ける美味しそうなニオイが漂っていて、ルシエルはかなり大興奮している様子だった。


 そんなルシエルを見ていると、自分が笑顔になっている事に気がついた。


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