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第250話 『ドルフス・ラングレン その2』




 ラングレンを、勢いよく背負い投げた。


 その大きな身体は、金属製の吊り橋に叩きつけられ、勢い余ってワイヤーを潜り抜けて崖下へ落ちた。


 しまった!! 


 このラングレンという男爵が並外れた怪力を持ち合わせていたから、掴まれ反撃されないように、思いきり投げ飛ばしてしまった。


 翼があれば別だけど、こんな底が見えないような崖下に落ちたらまず助からないだろう。


 私は咄嗟に自分で投げ飛ばしたラングレンの方へ、跳んだ。


 悲鳴を上げて吊り橋から落下するラングレンの片腕を両腕で掴む。



「うぐう!!」



 ――駄目!! 重すぎて引っ張られえる!!


 助けようとしたラングレンもろとも私も崖下に落下しそうになったので、足をワイヤーに絡ませる。


 ラングレンに加えて自分の体重に勢いよく引っ張られ、絡ませたワイヤーが強く足に喰い込んで圧迫した。足に激痛が走り、たまらずに私は声をあげた。



「ああああーー!!」



 驚いた表情のラングレン。それにポールや他の者達も、戦いを中断してこちらに注目している。


 引っ張られ、私の身体も吊り橋から落ちそうになった。足に絡ませた金属製のワイヤーが、ギシギシと音をあげ強く絞めあげる。骨が折れそう……っていうか、切断されそう。歯を思いきり喰いしばる。


 このラングレンを掴んでいる手を離せばラングレンは、崖下に落ちていく。そうすれば彼は、確実に助からない。だから、絶対にこの手を離せないと思った。



「あああああーー、くっ!! 駄目だ! 私だけの力じゃ、とてもじゃないけどこの巨体を引き上げられない!!」


「も、もういい!! 離せ!!」


「いや!! それは断るわ!!」


「離せって言ってるだろ!! じゃないと、お前の足は、自分で巻き付けたそのワイヤーに引き千切られるぞ!!」



 ラングレンは、何度も離せと言った。このまま二人で死ぬよりは、一人でも生き残った方が合理的だと思ったのかもしれない。でも、大丈夫。私には、こんな時に頼りになる仲間がいるから!!



「アテナーー!!」


「ルキア!! お願い、私の身体を引っ張って!!」



 急いで助けに来たルキアが私の身体を引っ張った。そして更にその後ろで、カルビが私の身体を引くルキアの服を噛んで引っ張っている。



「アテナ!! 待ってろ、今行くからな!!」


「アテナちゃん!! ちょいまち! すぐ引き上げてあげるからね!」


「アテナ、少し我慢して!!」



 ルシエル、それにミューリとファムも全力で駆けてきて、私とラングレンの身体を引っ張った。


 ルシエルが悲鳴をあげる。



「くっそー!! こいつ、何キロあるんだ!! めちゃくちゃ重いぞ!! おい、てめーら!! こいつはてめーらの仲間だろ!! ぽーーっとしてないで手を貸さんかい!!」



 ラングレンとポールの引き連れていた部下達にルシエルが怒鳴ると、言われた男達は戸惑いながらもルシエル達に手を貸して、吊り橋から落下しそうになっていた私とラングレンを引き上げてくれた。


 戦いは一時中断し、ポールや魔法を使うメイド達も茫然として成り行きを見ていた。


 そして少しすると、後方からポール達とは別の馬車が駆けてくると、私達の前で停車した。


 誰だろう?


 確認しようと足からワイヤーを外して、立ち上がる。すると、ワイヤーを絡めていた右足に激痛が走り、転んでしまった。



「アテナ!!」


「いったーーい。……だけど、大丈夫、私は大丈夫よ」



 ルシエルが肩を貸してくれたので、それでもう一度立ち上がる。


 停車した馬車の中から私達の知っている顔、貴族令嬢が姿を現した。



「あら、アテナ。それに皆さん、こんな所で奇遇ですわね。……ポール、ここで何をやっていますの? あなたには、ドワーフの王国へ先行して王への謁見の準備を整えて欲しいと命じましたのに」


「え? いや、その……吊り橋を渡ろうとしたのでございますが、ここでにっくきアテナ一向に遭遇しましたのでございますよ。それで、アテナ一向に道を塞がれ、いつぞやのお礼とばかりに、わたくしの馬車を襲撃され応戦していたのでございますよ!!」



 ポールのその嘘に、ルシエルが怒った。



「こら、ちょび髭!! 嘘をつくな!! お前らがオレ達を見つけて襲ってきたんだろーが!!」


「ヒイイ!! ほら、シャルロッテ様!! 見てください!! まるで、蛮族のようなエルフでございますよ!! 助けてくださいでございますよ!!」



 シャルロッテに縋りつくように訴え続けるポール。そんなポールにシャルロッテは一瞥すると、私の方へ近づいてきて言った。



「ポール男爵の行った事は、本当ですの?」


「なんだと!? シャルロッテ!!」



 シャルロッテにも怒りを露わにしたルシエル。そんなルシエルを宥めて落ち着かせると、微笑んで言った。



「シャルロッテ? あなたは、どう思っているの? あなたが思っている通りでいいよ」



 そう言うと、シャルロッテはフフっと軽く笑った。



「ドルフス・ラングレン男爵。ポール男爵の言っていることは本当?」



 ドルフス・ラングレンは、首を横に振った。



「我々が仕掛けました。そして、俺は、崖下に落ちかけた所をアテナに助けられました。そのせいで、アテナは右足を負傷してしまいました」



 ポールを睨みつけるシャルロッテ。


 ポールは何か言い訳をしようとしたが、シャルロッテは首を横に振り、溜息をついてポールの言葉を遮った。



「アテナ、それに皆さん……今回はうちのポールやドルフス達がお邪魔をしたようで、申し訳ありませんでしたわ。それにドルフスを助けて下さいました事も――」


「シャルロッテ……」


「ですが、これからドワーフの王国に入国すれば、わたくし達はどちらかというと敵対関係になるかもしれませんわ。もちろん、場合によっては……って事ですけれども」



 ルキアがシャルロッテに駆け寄り言った。



「そんな敵対関係だなんて……私達地底湖で一緒にキャンプもした仲じゃありませんか!」


「それはそれ、これはこれ……ですわ。地底湖では、わたくしはプライベートでした。ですが、このドワーフの王国へやってきたのはヴァレスティアナ公国の使者として、きていますの」


「つまり、ヴァレスティナ公国が王女誘拐の次に、今度はまた別の何かを企んでいると。それが何かはまだ解らないけど、今後私達がその計画の邪魔をするのなら、敵になるってことね」



 シャルロッテは、にこりと満面の笑みで微笑んだ。

 

 そして、ポールを睨みつけると再び馬車に乗り込んで、この場にいる部下達全員を率いて吊り橋を渡っていった。


 ドルフス・ラングレンは、立ち去る時に私の顔を見て、何か言いたげな表情をしていた。


 その表情に気づいた私は、特に何も言わなくても解っているよという思いで微笑んで返した。


読者 様


当作品を読んでくださいました読者様、評価、ブクマ、イイね、感想をくださった方々、ありがとうございます。

物凄く励みになっております。凄く、嬉しいです。


毎日なんとか、アップしようと現在頑張って書いてはいるのですが、気が付けば250話にもなっておりました。

しかも、3章に至っては当初、50話程の予定だったのですが、気が付けば……(笑)


まだまだ頑張って、少しでも皆様に面白いと言って頂けるような作品を書いて参りますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。

(; ・`д・´)

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