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第248話 『二人の男爵』




 私は、ちょび髭の男を睨みつけて言った。



「あなた達がドワーフの王国に、いったい何しに行くのかは知らないけれど、悪事を働かないって言うのであれば、過去の事は水に流すわ」


「これはこれは、何とも寛大でございますな……アテナ王女」


「ア、アテナ王女……やっぱりアテナちゃんは……」


「アテナって王女様なの? ニックネームかなんかじゃないの?」



 ちょび髭男の発言に、ミューリとファムが驚いた。

 

 ミューリには、地底湖でシャルロッテとの会話も聞かれていたみたいだし、もはやバレバレかもしれないと思っていたけれど…………これで、完全に私の正体がばれちゃった。


 うーーん、でも考えてみればシャルロッテにもバレてたもんね、ちょび髭が私の事を知っていたとしても、まあ頷ける。こうなる事は必然。


 だけど、まさかこんな所で公にばらされてしまうとは……


 私は後頭部を擦りながらミューリとファムに言った。



「黙っていてごめんなさい。私、実はクラインベルトの第二王女なんだ。エヘヘ」


「ええええーーーー!!!!」



 ミューリとファムは、飛び上がった。ルシエルはなぜだか解らないけれど、私が自分の事を王女だと明かすと自慢気にしている。



「でも、お忍びと言うか……普通に旅をしたいし、私が冒険者だというのも本当だから、今まで通り普通に接して欲しいんだけど……だめ?」


「もちろんいいよ! っていうか、僕はシャルロッテとの会話、聞いちゃってたしね。アテナが王女様でも、僕らが友達である事には変わりはないさ」


「ファムも同じ。アテナはアテナ。それに言ったように、ファム達はドワーフ王の事をもう一人の父だと思っている。だから、別にアテナが王族だったとしても、それ程驚かない」



 ルシエルがケラケラと笑った。



「ハハハハハ。その割には、飛び上がってたじゃねーか」


「ノリで飛び上がっただけ。ファムは驚いてない」


「どうだか」


「本当! ファムは飛び上がっていない!」


「おかしいなあ。オレの目には、さっき驚いたファムが10センチ位浮いていたように見えたがな。ハハハ」


「浮いてない! ファムは、浮かない! ルシエルとは、胆力が違う! その程度でファムは驚かない!」



 ちょび髭という敵を前にしながらも、ケラケラ笑いながらファムをいじるルシエル。そのルシエルを見て、ミューリがはっとする。



「ま、まさかルシエルやルキアも王族って事はないよね? それなら本当に驚きなんだけど」



 首を慌てて横にぶんぶん振って否定するルキア。それを横目にルシエルが溜息をつき、思い詰めたような表情で言った。



「騒ぎになるから、できればこのまま隠しておきたかったが……バレてしまったなら仕方がない。実はオレ…………エルフのお姫様なんだ。今まで皆に黙ってて、すまんこってす」



 ………………



 この場にいる全員がルシエルに注目していたが、それを聞いて茫然とした。


 私は、はっと我に返りちょび髭男との会話に戻った。



「それでーー」


「おーーい、おーーいアテナーー。オレ、お姫様だったんだよーー。聞いてる?」



 ミューリもファムも、もうルシエルの言葉を無視している。ルキアは、そんなルシエルをジト目で眺めていた。



「それで、ちょび髭さん。私達になんのよう? 戦うっていうのであれば、それはそれでうけて立つけど――だけどここじゃ危険だから、吊り橋を渡り切ってからにしてほしいんだけど」


「ほほう。それは、なぜでございます?」


「だから危険だって言っているでしょ? だって、ここ落ちたら死んじゃうよ」


「ホッホッホッホ。それは、確かにそうでございますが、こうも考えられませんか? 逆に言えば、どんなに強者でも、この吊り橋から突き落としてしまえばそれだけで、勝つ事ができるのでございますよ」



 え? まさかこのちょび髭!



「私の事を王女って知っているんだったら、そんな事をすれば大変な事になるって思わないの? それに、あなた達の目的は誘拐ではなかったっけ?」


「王族誘拐の計画は、どれも失敗に終わり、今やご破算になってしまったのでございますよ。それに、ここであなた方を始末する事に関しては、何も問題ないのでございますよ。ここにいる全員を崖底に突き落とせば、何も証拠は残らないのでございますからね。ホッホッホ」



 なんて奴……シャルロッテとは、こんな事がなければいい友達になれそうだと思った。だけど、このちょび髭男には、黒いものを感じる。


 ミューリが前に出る。



「このちょび髭達、アテナの敵でしょ? 僕達も手を貸すよ」



 後方……吊り橋を渡ってきた方を見ると、さっきミューリが挨拶したドワーフの番兵達がこちらの騒ぎに気付いて、ここへ向かってきている。



「ミューリとファムは、番兵のドワーフ達に訳を説明して。それで、事が終わるまでここには、近づかせないようにして。ルキアも」



 しかし、ルキアは首を左右に振ってナイフを抜いて構えた。その傍らにカルビが付く。



「このままじゃ騒ぎになるけど……それでも、剣を引いてくれないのかしら?」


「ホッホッホ。あれからずっと、アテナ王女……あなた方に、仕返しを考えていたのでございますよ。ガンロック王国での王女誘拐計画に失敗したわたくしは、そりゃあもうエゾンド公爵に怒られ……」


「ポール男爵!!」



 そういえば、ちょび髭男の名前――ポールだった気がする。そのポールが、エゾンド公爵の名前を出した刹那、隣にいた大男に怒鳴られ止められた。


 それも当然だった。


 今のポールの発言は、ヴァレスティナ公国の君主であるエゾンド・ヴァレスティナ公爵が、ガンロック王国の王女であるミシェルとエレファを誘拐しようと指示をした事を意味する。


 つまり、国自体が行っていた計画だったという事を肯定してしまった発言だった。



「す、すまない。ラングレン男爵。今のは、失言だったでございますよ。しかし、ここで全員この吊り橋から突き落としてしまえば、何も問題はないのでございますよ」


「フン。クラインベルトの王女も始末するっていうのか……それには、あまり気が進まんが、こうなってしまっては、やむなしか」



 ラングレン男爵と呼ばれた大男がそう言って、大きな金棒を前に突き出すと他の男達も剣を抜いて構えた。どうやら、この戦いは避けられないようだ。



「ルシエル……できればでいいんだけど……」


「りょーかい、できるだけ不殺でいく。だとしたら、精霊魔法も使わない方がいいな。例えば突風魔法(ウインドショット)なんかで吹き飛ばしてしまえばすぐ決着つきそうだけど、吹き飛ばされた方は、崖下に落ちていくだろうからな。そしたら、浮遊魔法でも習得してるか翼でも生えてない限りまず助からないもんな」


「無理言ってごめんね。自分が危なくない可能な範囲でいいから」



 ルシエルは、にっこり笑うとポール達に向けて弓矢を構えた。


 ルキア、カルビ……そしてルシエルに続いて、私も剣を抜く。








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ポール・パーメント 種別:ヒューム

ヴァレスティナ公国の男爵。ちょび髭に蝶ネクタイがトレードマーク。ガンロック王国では、第一王女のミシェルと第二王女のエレファを誘拐しようとして、アテナ一行と戦った。その結果、撃退された為、今もアテナに敵意を燃やしている。「……でございますよ」が、口癖。


〇シャルロッテ・スヴァーリ 種別:ヒューム

ヴァレスティナ公国、スヴァーリ家の貴族令嬢。ガンロック王国ではポール男爵と共に、二人の王女を誘拐しようとした。地底湖で偶然アテナ一行と再会し、一時休戦とばかりに一緒にキャンプを楽しむ。同じ場所でキャンプをしていた冒険者の3人娘が、サヒュアッグに攫われた時に、アテナ達と協力して彼女達を救いだした。金髪縦巻ロールが印象的で、お嬢様口調。鞭を得意とし『鋼鉄鞭』というおっかない武器を所持している。


〇エゾンド・ヴァレスティナ 種別:ヒューム

ヴァレスティナ公国の公爵で、国を治めている。アテナの義理の母、エスメラルダ王妃の実父。ヴァレスティナ公国は、力を持った貴族が数多くいるがそれをまとめ上げるエゾンド。その力量が伺える。表でクラインベルト王国と同盟をし、裏でドルガンド帝国とよからぬ事を画策する。


突風魔法(ウインドショット) 種別:精霊魔法

風の下位精霊魔法。衝撃波の如き風を、手の平から瞬発的に放つ魔法。本来は対象物や攻撃対象を吹き飛ばす魔法なのだが、ルシエルはそれを地面に向かって放ち宙へ飛んだりとユニークな使い方をする。ルシエルは、いくつか使える精霊魔法の中でも特に風魔法を得意としている。

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