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第247話 『吊り橋』




「ヤーーーッホオオオオーーーウ!!」



 ホウホウホウホウ……



 まるで野生児のように、崖下に向かって大声で叫ぶルシエル。声が、鳴り響いて木霊している。



「気を付けてね、ルシエル。落ちたら大変だよ」


「解ってるって。大丈夫、大丈夫。まったくアテナは心配性だなあ」


「ルシエルはそう言っていつも、なんかしらしでかすでしょ。気を付けるのに、それに越したことはないの」

 


 ミューリが更に向こうの方を指して言った。




「あそこ見てー。大きな吊り橋があるでしょ。あれを渡ると、いよいよドワーフの王国だよ」



 確かに大きな吊り橋が見える。


 その向こう岸の更に向こう側、そこには石材で造られた大きな建築物が見える。本当に、もうすぐだ。


 ミューリやファムにとっては、馴染みの風景かもしれないけれど、初めてここへ来る私達にとっては、こんな大きくて底が見えない崖とそれに架かる吊り橋は圧倒的だった。



「じゃあ、あの吊り橋を渡ろうか」


「はい! ちょっと怖いですけど行きましょう」


「おおーーっ!」



 ワオンッ



 フフフ。ルシエルはもとより、ルキアもカルビも張り切っている。


 ミューリに先導されるがまま、吊り橋の方へ歩いた。


 吊り橋の手前までやってくると、そこには、武装したドワーフが二人立っていた。


 恐らくは王国の番兵だという事は見て取れたが、一応ミューリに聞いてみようと思った。すると、先にルキアがファムに聞いてくれた。



「ここにいる武装したドワーフの方々は、この吊り橋を守っているんですか?」


「そう、守っている。正確には、この吊り橋とこの渡り終えた先にある王国を守っている。この辺には、危険な魔物も出現するからね。王国近辺だと言っても、油断はできないんだ」


「そうなんですね。でもこうして強そうなドワーフさんが見張ってくれていれば安心ですね」



 吊り橋を渡る直前に、ミューリが番兵をしているドワーフに気さくに声をかけた。



「お疲れ様でーす」


「おうん? ミューリか? 戻ってきたんかん?」


「っそ! ファムと、僕らの友達も一緒だよー」


「そういや、ミューリとファムを王様が探していたぞん?」


「あ、そう。じゃあ、後で城に寄ってみるよ」



 番兵達は、頷いて手を振った。


 挨拶も済んで、吊り橋を渡り始める。


 フフフ、いよいよね。


 吊り橋の幅は、一度に馬車が余裕で3台並んで走れる位の幅があった。そして、要所要所に何かしらの金属が使われており、使用されているロープも金属製の物……ワイヤーを使っているようだった。


 これなら、ちょっとやそっとじゃ落ちないだろう。

 

 この辺には魔物も出現すると言っていた。もしも大型の魔物や、ロックブレイクで討伐したアシッドスライムのような群れが押し寄せても、、絶対に崖下に落ちない耐久度の吊り橋になっているようだ。



「しかしすっげーなあ、この吊り橋。こんな大きな崖にどうやって、作ったんだ? これも、ドワーフ達のなせる業ってやつなのか。ふーん、ふーん、すっげーなあ」



 吊り橋の両サイドには柵が無い。


 一応、落果防止なのか手すり代わりに太いワイヤーが、端から端まで張ってある。そのワイヤーを両手で掴んで。崖底を覗き込むルシエル。身を乗り出して崖下を眺めるので、今にも落っこちていきそうな気配がしてならない。そんなルシエルを、私とミューリが引っ張った。



「気を付けてよ、ルシエル。本当に落ちないでよ」


「解ってる、解ってるってーーえ。オレもそれ位、ちゃんと解って用心してやってるからよー、大丈夫だって。大丈夫。ハハハハハ」



 ルシエルの大丈夫っていうのは、あてにならない。


 私は、そんなルシエルの言葉を無視して、ルシエルの腰のベルトをずっと握っていた。身を乗り出している間は、離せない。


 ミューリ達の依頼でキノコ採取に行った時も、マイコニッドが山程いる穴の中に落ちて行っちゃったんだから。


 いっその事、ルシエルの首に、首輪と専用のリードが欲しいと思った。


 橋の真ん中まで渡った辺りで背後から馬車が迫ってきた。


 その後続には、何十頭もの馬が続く。騎乗しているのは、あまり柄の良さそうな連中では無い感じ。そして、かなりのスピードを出していて直進してくる。


 このままじゃ――道を譲らないとぶつかる。



「馬と馬車が来ているわ!! 皆端によって!! 橋の端に……」



 橋の端ってセリフは、ボソボソと誰も聞き取れないような声でこっそりと言った。


 皆の顔を見ると、誰も私のさりげなく言ったダジャレに気づかずに、迫ってくる馬と馬車の為に立ち止まって端に寄っている。



 ――いや!! 一人だけ、気づいていたのがいた!!



 ルシエルだけが、信じられないというような、まるで会った事もない遥か昔に亡くなったご先祖様に遭遇してしまったような顔をしてこちらを見ている。


 私はそんなルシエルに気づかないふりをして、馬車を避けた。


 すると、物凄い勢いで直進していた馬車は、私達のいる場所を通り過ぎた所……吊り橋の丁度真ん中位の位置で停車した。馬車の後を追っていた馬に乗る者達も、合わせてその場に停まる。


 なんだろう?


 停車した馬車の中から、シルクハットに蝶ネクタイをした男がメイドを二人従えて降りてきた。それを見てルキアは、目を丸くする。ルシエルについては、身を乗り出した。



「あああ、あの人……アテナ、あの人ってあの人じゃないですか?」


「あいつ、どういうつもりだ? また性懲りもせずオレ達に襲い掛かってくるつもりか?」



 馬に騎乗していた男達が下馬して、蝶ネクタイの男を守る様に密集する。



「これはこれは、こんな所であなた方にお会いするなんてね。これは天がこのわたくしに、復讐する絶好の機会を与えてくれたのに違いないでございますよ!」



 やっぱりそういう展開になるか。


 地底湖でシャルロッテに会った時に、なんとなくこの男の顔も脳裏にちらついていたけれど……やっぱりこの男も、ノクタームエルドにやってきていたか。


 私は剣を抜くと、目の前にいる蝶ネクタイの男へ向けて構えた。


 そう……ガンロック王国でミシェルとエレファを攫おうとした男――蝶ネクタイの、ちょび髭の男に!!







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇マイコニッド 種別:魔物

キノコの魔物。キノコに手足が生えており、顔もある。トコトコと歩き、毒の胞子を散布する。大きさは様々。


〇ドワーフの王国への吊り橋 種別:ロケーション

とても巨大な吊り橋。鉄など耐久性のある金属が建設に使用されていて、ドワーフの鍛冶職人の技術を結集して造られた。その為、物凄く丈夫。大きくそこも見えない程の深い崖にかかっている。ノクタームエルドの名所の一つでもある。観光で訪れると、まず「すげーー」って声をあげる所。

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