表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

243/1412

第243話 『迫り狂うゾンビースト その2』



 目が合った。ヘルハウンド達がこちらへ駆けてくる。


 ボクは杖を握り、身構えながらもその数を数えた。


 1、2、3……全部で30匹以上はいそうだ。



「これ全部、メロが一人で作ったの?」


「え? もしかしてバレてた?」


「……話す気が無いならいいよ。君がそういう自分のした事の後始末もできない人間なんだなと思うだけだからね。それとも、これは何かの実験かい?」


「そ、そんな実験だなんて。あの魔導都市マギノポリスの天才魔法使いマリンの研究に比べたら、自分なんて、とても実験しているだなんて言えませんよ。こんなのただのお遊びですよ。へへへ」


「遊びで、こんなヘルハウンドをゾンビ化させたりクライド・ゴート達をゾンビ化させたりしているのであれば、それは遊びでは済まされないよ」


「済まされないって、自分だって色々やってたんじゃなーいの?」


「……ハア」



 溜息を吐いた瞬間、何匹ものヘルハウンドが束になって襲い掛かってきた。



「どりゃああああ!!」


「たあああ!!」



 ボクやメロではない、誰かの声。


 魔法を詠唱し、襲い掛かってくるゾンビ化したヘルハウンドを倒そうとした刹那、何人かの冒険者達が武器を手に現れ、ボクの代わりに魔物達へ攻撃した。


 戦士風の男、狩人、武道家、魔法使い、聖職者の5人がボクの隣に一列に並んだ。皆、ロッキーズポイントで見た顔だ。



「【ウォリアー】のジェムスだ。このまま何もせずにってのもな! 後味が悪いだろ」


「あたしは、レイン。【アーチャー】よ。あなた一人じゃ危険だわ。あたしも助太刀してあげる」


「拙僧はヴァスド。しがない【モンク】だが、いないよりはいいだろう」


「儂は【ウィザード】のオルンじゃ。ゾンビーストと聞いて、儂の出番じゃと判断した。ゾンビには火が有効じゃてな。助力しよう」


「サナリスだ。【クレリック】の力が、必要になるだろう。聖なる力は火よりもゾンビに有効だ」



 5人の冒険者。ロッキーズポイントで確かに彼らを見たが、それぞれが別々のテーブルにいた記憶がある。つまり、この5人は……



「全員、パーティーを組んでいる仲間と言う訳ではない。だが、ロッキーズポイントに迫り狂う魔物共を倒そうという気持ちは同じ」



 6人目。その男は【ウォーリアー】ふうのドワーフだった。



「ここはボクだけで大丈夫だ。皆は店に戻って戦いが終わるまで立て籠っていてくれればいい」



 そう言うと、ドワーフは溜息をついた。



「ワシらは腐っても冒険者だ。このノクタームエルドさんでもお隣のガンロックさんでも、それなりにやってきた。舐めてもらっちゃ困るよ、お嬢さん。魔法使いのお嬢さん一人、ゾンビースト共の前に押し出して、ワシらベテランが後方で指をくわえて見ているなんてできる訳ねーだろがよ。な?」


「あっ! 待ってよ!」



 そう言ってドワーフは、迫り狂うゾンビースト化しているヘルハウンドの群れへ突っ込んだ。他の5人の冒険者達もそれに続く。


 【クレリック】のサナリスが神聖系法術を唱えた。



「悪しき者達よ。冥府に帰るが良い。《神聖攻撃法術(ホーリーアタック)》!!」



 グオオオオオオ!!



 ある程度の効果はあるようだが、サナリスの神聖系法術ではヘルハウンドを完全に消し飛ばす事はできなかった。


 恐らくこのゾンビーストという魔物は、ゾンビであってゾンビではない。メロが作ったものだとすれば、それは人為的に作られた魔物だという事。人造生物。

 

 通常のアンデッドの倒し方では、倒せないという事も十分に考えられる。



「きゃあっ!」



 【アーチャー】レインの悲鳴。彼女の放つ、矢を浴びながらも何匹かが怯むことなく襲い掛かる。大きく開いた口。牙。



「させないよ! 《貫通水圧射撃(アクアレーザー)》!!」



 ボクは水属性魔法貫通水圧射撃(アクアレーザー)を詠唱し、レインに飛び掛かろうとするヘルハウンド達をあわやという所で打ち抜いた。


 倒しきれなかった他のヘルハウンドは、ドワーフと【ウォーリアー】のジェムズ、【モンク】のヴァスドが蹴散らす。



「なかなかやるのう、魔法使いのお嬢さん。どうやらワシはお嬢さんの事を見くびっていたいたようじゃ」


「そうなんだ。じゃあこれで、ボク一人に任せてくれても大丈夫なんだって解ってくれたかい? ここは、ボクとそこで棒立ちして何の役にも立っていないメロに任せて、皆は店に避難していてくれ」


「ずいぶんだねー、マリン。自分はほとんど戦闘能力はないんだよーう」


「盾にはなるだろ。肉の盾に。まあ、そういう訳で、皆もうさがっていてほしい」



 ドワーフは、軽く笑うとボクの言った事をまるで聞いていなかったかのように自己紹介した。



「そういえば、ワシだけ名乗っていなかった。ワシはドワーフのサミュエル。サミュエル・ロイソン。よろしくな! えーーと……」


「マリン・レイノルズだ。【ウィザード】だよ」


「自分は、メロディ・アルジェント。メロって呼んでねー」



 こちらも名乗ると、サミュエルは頷いた。


 そしてまたヘルハウンドに向かって突撃していった。まったく、危険だと言っているのに、ロッキーズポイントへ戻ってと言ってもまるで聞く気配がない。


 サミュエルは、力強くウォーハンマーを握りしめる。


 その後ろに他の冒険者達も続き、後方からレインが弓矢を放ち、オルンがファイアボールを詠唱し放った。ヘルハウンド達を圧倒している。


 ……しょうがない。


 ボクも皆に続いて、水属性魔法を詠唱して援護をした。


 それでゾンビースト化したヘルハウンド達は、あっという間に殲滅する事ができた。


 しかし、ヘルハウンドの群れを倒すと今度は大型のグレイトディアーとトロルが現れた。


 2匹とも、やはりヘルハウンド同様にゾンビースト化している。そして更に驚いたのは、グレイトディアーの頭の横には、もう一つ別の魔物の頭がついていた。水獣ケルピーの頭部。


 それは例えるなら双頭の大きな魔犬オルトロスというよりは、キマイラの方が近く思えた。


 グレイトディアーとトロルは、黄色く濁った眼でこちらを睨むと真っ直ぐに勢いよく突進してきた。


 やるしかない。ボクは杖を正面に突き出し、構えた。








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇クライド・ゴート達

かつてマリンが一緒にパーティーを組んだ事のある冒険者達。クラインベルト王国にあるルリランの森近くにあるという古代の墓場に一緒に行った時に、クライド達はそのダンジョンに眠る宝に目がくらみマリンを殺そうとした。しかし、逆にマリンに殺される。その後、ノクタームエルドに向かう途中ゾンビ化したクライド達に再会し再び戦った。クライド達もゾンビースト同様に、通常のゾンビとは違うふうになっていた。メロの研究? だとすれば、目的は?


〇ジェムズ 種別:ヒューム

たまたまロッキーズポイントに立ち寄っていた冒険者。クラスは、ウォーリアー。クラインベルト王国のリオリヨンからノクタームエルドを目指してやってきていたようだ。好きな女性のタイプは、気が強く情に厚い姉さんタイプ。家庭を持っても冒険者という職を許してくれる家族だといいと言っているが、まだ相手もいない。


〇レイン 種別:ヒューム

たまたまロッキーズポイントに立ち寄っていた冒険者。クラスは、アーチャー。少し姉さん肌の感じがする冒険者。気が強いイメージを持たれる事が多いが、喋ってみると割と話しやすくて社交的。好きな食べ物は、海老のフリットとエールを一緒に味わう事。以前、港町でそれを食べた時に、病み付きになってしまったそうだ。ノクタームエルドのロックブレイクで仕事を終えた所で、ロッキーズポイントまで戻ってきた所だった。


〇ヴァスド 種別:ヒューム

たまたまロッキーズポイントに立ち寄っていた冒険者。クラスは、モンク。一人称は、モンクらしく「拙僧」。遥々東方にある武術の盛んな国からクラインベルト王国へやってきた。己の修行のために冒険者になった。ドワーフの噂を聞いてノクタームエルドまでやってきた。目的も果たし、ロックブレイクでレインと知り合ったので彼女と共にロッキーズポイントまでやってきた。得意技は、一度に空へ放ったいくつもの石を拳や蹴りで地に落とす事無く砕ける事。たまに失敗する。


〇オルン 種別:ヒューム

たまたまロッキーズポイントに立ち寄っていた冒険者。クラスは、ウィザード。ガンロック王国で、他の冒険者とパーティーを組んでダンジョン調査などを行っていた。遺跡などはアンデッドが徘徊している事が多くウィザードは歓迎される。暫くそんな活動を続け、稼ぎもたまったのでノクタームエルドの方へやってきてみたらしい。マリン同様に魔導大国オズワルトの出身かどうかは、特に語らないので不明。夜眠る前と、朝起きてすぐに飲むコップ一杯の水をかかさない。それがオルン流健康法だそうだ。好きな食べ物は、煮豆。


〇サナリス 種別:ヒューム

たまたまロッキーズポイントに立ち寄っていた冒険者。クラスは、クレリック。騎士王国オラリオンから遥々とやってきた冒険者。もともとは、オラリオンの騎士団配属の衛生兵だったそうだが、転職して冒険者となったらしい。趣味は遺跡巡り。遺跡を見ては、その遺跡がどれ程の時間を刻み歴史があったのか想像し、調査しては心を躍らせているそうな。兄弟がいるようだ。


〇サミュエル・ロイソン 種別:ドワーフ

たまたまロッキーズポイントに立ち寄っていた冒険者。クラスは、ウォーリアー。ノクタームエルドの出身で、ノクタームエルドを中心に活動しているドワーフ。ロッキーズポイントの酒や料理は、かなり美味しいのでそれ目当てでたまたま立ち寄って飲んでいた。ギブンに負けない程、絵にかいたような典型的なドワーフ。THE・ドワーフ。


神聖攻撃法術(ホーリーアタック) 種別:神聖系法術

黒魔法ではない。教会が教える、神聖系法術。魔力ではなく、聖なる力を使用し術を使う。聖なる力とは武術で言う気などに近い。聖なる力を持つ光は、魔を宿す魔物にも効果的に威力を発揮するが、悪魔やアンデッドなら更に効果を発揮する。霊体にも有効。


貫通水圧射撃(アクアレーザー) 種別:黒魔法

上位の、水属性魔法。指先から光線のように細い水を放水する。しかし、高圧力で発射されている水で、岩をも貫通する威力。触れたとしても、切断されるという恐ろしく殺傷能力にずば抜けた水属性魔法。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ