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第241話 『白衣のストーカー』 (▼マリンpart)




 ――――ロッキーズポイント。


 ノクタームエルドの手前に位置する休息場所。ここまでやってくる事ができた。


 ここまでくれば、もうすぐリアのお姉さんがいるという大洞窟に足を踏み入れる事ができる。名前は、ルキア。可愛い良い名前だ。


 ルキアは猫の獣人だというし、リアにきっと似ているだろうから見ればすぐ解るだろうと高を括っていた。



「巨大迷宮か……確かに興味深いが、お腹が減ったよ。ご飯を食べたい……」



 ぐーーーーーっ



 ボクのお腹が、ついに何か食べさせろと悲鳴をあげた。


 巨大迷宮もいいけど、腹ごしらえをしたい。


 それに、ノクタームエルドという大洞窟に挑む準備をしっかりとここで整えておいた方が良いだろう。考えも無しに行動しても、碌な結末にはならないだろうからな。



「自分も、けっこーお腹減っちゃったからここに寄ってくならその考えに大賛成。ヒャハハ。じゃ、中に入ろうよ」



 このかなりおかしな白衣の女は、突如ボクの目の前に現れたメロという。【サイエンティスト】を名乗り、なんとも不可解で不愉快な女だ。



「なぜ、君がボクについてくる?」


「え? なんで? なんでって自分ら、パーティーでしょ? 自分はマリンの掛け替えのないのない仲間でしょ、もしかして忘れちゃったのん?」


「君と組んだ覚えはないよ。勝手に決めないでくれるかな」

 


 ………………



 暫し固まるボクと、メロ。


 このメロことメロディ・アルジェントは、あれからずっとボクについてくる。まるで、ストーカーだ。


 そろそろここいらで、いい加減何処かへ行って欲しいものだ。


 この女は、かつてボクが一緒にパーティーを組んだけど裏切って、ボクを殺そうとしてきたので返り討ちにした冒険者達を、実験なのかなんなのかは解らないが、ゾンビにして蘇らせた。


 いくら、かつてボクを騙して殺すつもりだった奴らだと言っても、一度は仲間として組んでいた連中だ。二度も殺すことになるのは、中々に不愉快な事だった。


 そんなボクの気持ちを知っているのか知らないのか、このメロという女は自分のやった事に気にもかけない。


 そういう所が、まず信用できる者とはかけ離れた存在だと思った。


 テトラやセシリアとはまったく違う人間。テトラとは、何度か戦いもしたが、彼女の内面には変わらない暖かいものを感じる。


 だけどメロディ・アルジェントからは、感じない。暖かさの代わりになんかこうドロっとした何か黒いものを感じる。



 カランカランッ



「いらっしゃいー! お好きな所へどうぞー」



 ロッキーズポイントという休憩所へ入った。


 酒場、そしてその隣にモーテルがあったが、まずは腹ごしらえをしたいので、酒場の方へ入店した。


 店主に声をかけられると、ボクは軽く挨拶がわりに頷いて一番奥の誰もいないテーブルに座った。


 周りを見回すと、店内はそれなりに広く何人もの客がおり、食事をしている者や酒を飲んでいる者、仲間とノクタームエルドで入手したのか戦利品を確認している者などいた。


 ドワーフもいるな。そういえば、ボクはルキアを追ってドワーフの王国がある場所に足を踏み入れようとしているのだったな。


 隣の椅子に荷物を置き、杖を立てかけた位のタイミングで、正面の椅子にまるでずっと一緒に行動している仲間のようにメロが座った。



「はいー、メニュー。何食べようかなー?」



 店の中は、冒険者やドワーフ、行商人のような者達ばかりだった。だから、白衣を着ているメロの服装はこの場所ではかなり目立っており、周囲の客もチラチラとこちらを見ているように思えた。



「ねえ」


「ほえ? なんぞ?」


「ボクは一人で食事にしたいんだ。だから、君は君で、向こうで食べればいいじゃないか。あっちへ行け」


「そんなー、いっけずーん。マーリンのいっけずーん!」


「マーリンと呼ぶな! ボクは、マリンだよ!」


「フフ。やっと、マリンがむきになる顔を見る事ができたよ。Sレアだよね、Sレア! プシシシシ」



 なんだ、こいつは…………

 

 気が付くと、かれこれメロに出会ってから、ずっとボクの眉間に皺がよっていた。


 確か、眉間の皺っていうのはずっとそうしていると、痕が残ってしまうと聞いた事がある。……それは困る。もしそうなったら、メロのせいだ。



「ねーねー、何注文すんの? おせーてよ、ねえねえマリンたんは何頼むのーん?」


「……少し、黙っててくれないか。静かに何を注文するか考えたいんだよ」


「えーー? えーー? 何頼むのよー。なんぞ、なんぞー?」



 それからもメロの嫌がらせは続いた。


 本人は自覚しているのか解らないが、こんなものは嫌がらせ以外の何ものでもない。


 もうメロの事は無視をして、メニューを見つめた。そして、食べたいものを決めてオーダーする。



「すいません、注文いいですか?」


「はーい。どうぞ」


「えっと……厳選されたコッコバードの卵を使用したスペシャルオムライス、ホワイトヌーの欲張りステーキ、特大馬鈴薯のチーズガーリックじゃがバタ1皿、シェフの荒くれサラダ、あとパンとライス両方」


「畏まりました、飲み物はどうされますか?」


「うーーん。オレンジジュース」


「畏まりましたーー。ではこちらのお客様は?」



 ボクの注文した量に驚いたメロは、暫くボクを一点に見つめていたがすぐに我を取り戻して、注文し始めた。



「自分は、ブラックバイソンのフィレステーキとライス、サラダ、ドリンクのセットで。ドリンクは、アイスコーヒーくださーい」


「はーい、畏まりました」



 注文し、オーダーが出てくるまでメロはボクの顔を見つめてニコニコとしていた。


 ボクの方は、そんなメロがなんとなく気持ち悪く感じたので、サイドバックから魔導書を出すと、完全にメロを空気のように無視して読み続け、注文が出てくるまでの時間を潰した。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇マリン・レイノルズ 種別:ヒューム

Ⅽランク冒険者。水属性魔法が得意なウィザード。テトラ達がルーニ誘拐事件の時に出会い、仲間となる。それから救出まで共にし、一緒に王都まで行く。それから一旦別れるがカルミア村の件で再会。その後、ルキアの妹リアが生存していた事をルキアに知らせてあげる為、またテトラ達と別れルキアのいるノクタームエルドへと一人向かう。


〇メロディ・アルジェント 種別:ヒューム

愛称は、メロ。テトラと別れルキアのもとに向かうマリンが旅の途中に出会った白衣の女。怪しすぎて、マリンはどうもこの女を信用していない。いったい何者?


〇魔導書 種別:アイテム

マリンの愛読書。クラインベルト王国、ルリランの森近くにある古代の墓場で見つけたもの。何かの封印魔法が施されており、普通には読むことができない。マリンは、それを少しずつ解読しながら読んでいる。だが、彼女にとってはルービックキューブや知恵の輪で遊ぶが如く行っている。


〇ロッキーズポイント 種別:ロケーション

クラインベルト王国やガンロック王国方面からノクタームエルドに入ると、最初に目にする休憩所。酒場とモーテルが一緒になっており、外には馬小屋も兼ね備えている。店は、ドワーフや冒険者、行商人に人気でいつも混みあっている。

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