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第239話 『ローザの戦い その1』



 まず、新手の方へ向けて斬りかかった。


 しかし、新たに現れた小柄な女はさっと軽やかに避けると同時に、何か手に持っていた武器を怪力女の方へ放った。怪力女はそれを、キャッチ。小柄の女が投げた武器は、メイスだった。いわゆる金属製の戦棍。


 怪力女はそれを受け取ると、早速私目掛けてブンブンと振り回してきた。



「なんて、奴だ!! 本当に、力任せの攻撃だな!!」



 避けて反撃しようにも、小柄な女も同時に攻撃をしかけてきて邪魔をしてくる。そして、2人とも強い。いったい、なんなんだこいつらは?


 逃げて行ったドルガンド帝国の兵士を逃がす為に立ち塞がった事から推測すると、こいつらは同じく帝国軍かもしれない。


 しかし気になるのは、身のこなしにしてもこの戦い方においても、アサシンのような気配もする。


 小柄な女の武器は鎌。両手に鎌を持ち、それで交互に攻撃してきた。


 フードで顔は隠れているし、目線はおろか目もその表情も見る事ができず、いまいち何処を攻撃してくるか読めない。


 しかも、両手に持つ鎌の攻撃速度が怪力女より圧倒的に素早く、完全に避けきれず剣で弾いて対処するしかない。このまま1対2を続けると、そのうち追い詰められて致命傷を負わされるだろう。


 せめて、2対2であれば!! 


 そう思うやいなや頭に浮かんだのは、今行動を共にしている仲間達では無く、アテナやルシエルの顔だった。



「くっそ!! どうしようも無い事ばかり考えていても仕様がない!!」



 こうなったら、さっさと一気にどちらかを倒して、どうにか1対1にもっていくしかない。


 今、こうしている間にもメイベルが、アレアスやテトラ達を呼びに行ってくれているはずだ。だがこのままでは、とても持ちそうにない。


 怪力女と小柄な女が同時に合わさって突っ込んできた。その時だった。私は、技を繰り出せるように素早く構えた。


 ここだ!! ここで、仕留めてやるぞ!!


 ――放つ!



「うまい具合に合わさったな! 貴様ら二人、もしくは一人をこの技で倒させてもらう。ソードスラッシュ!!」



 両足、膝、腰――瞬時に溜め込んだ力を一気に爆発させて、敵目掛けて横一線に駆け抜けると共に斬り裂く。



 ギイイインッ!!



 金属音!! 二人とも倒せたのか!? 


 剣による大きな一撃と共に二人の間を閃光一線に駆け抜けた。


 技が見事に決まったかどうか、確認するために振り返る。


 するとボトリと言う音と共に二人の所持していた武器が、綺麗に真っ二つになって地に落ちた。


 ――やった!! 武器を破壊したぞ!!


 かろうじて二人がかりで、同時にソードスラッシュを受けて私の渾身の一撃を防ぐことができたのだろう。だが、引き換えに二人は武器を失った。


 つまりこれでもう一度同じ技を放てば、二人には私のソードスラッシュを再び防ぐ術はない。


 ここで決める!! そう思ってもう一度技を放つ体勢になった。


 刹那、二人がなりふり構わず強引に突貫してきた。

 

 しまった! 技を出す前に!! しかも、早い!!


 小柄な女が素早く私の懐に飛び込んでくると剣と腕をがっしりと抑え、怪力女がタックルをするように腰と片足を掴んできた。


 脱出しようと身体を捻ろうとしたが、遅い。この二人に身体を拘束されてしまっている。


 怪力女がまず叫んだ。


 声は魔法か魔道具か何かは解らないが、本人本来のものでは無いだろうという事は容易に想像できた。



「よっしゃ、いくぞーー!!」


「おう!! いくぜーー!!」


『必殺!! ビッグザマウンテンボム!!』



 なっ!! 小柄な女も喋った……っていうか、二人同時に!?


 二人がかりで身体を完全に押さえつけられ、そのまま力任せに宙に抱え上げられると、容赦なく思いきり地面に叩きつけられた。息の合った合体技!!



「うっ!! がはっ!!」



 ――呼吸ができない。それに、叩きつけられた衝撃で、胃の中の物を吐いた。


 すると、小柄な女に腕と顔を踏みつけられ、怪力女にがっちりと足を掴まれた。


 まさか、私の膝を折る気か!?


 転がって逃げ出そうとすると、顔を蹴られた。くそっ! このままでは!!



「きゃああああああ!!」


「なんだ、なんだ? どうした? 何の騒ぎだ!!」


「おい!! 賊か? 誰か、こっちへ来てくれ!!」



 ――誰かの声。


 そうか、小屋を破壊したから、その騒ぎで村の人達が……


 朦朧する意識の中で、小柄な女が怪力女に、何かを言ってもめている様子が見えた。


 もしかして騒ぎが大きくなる前に、逃げようとか言っているのか? そんな事を思っていると、怪力女の方が私の身体を跨ぎ、腕を振りかぶった。殴られる。


 その予想通り、顔面に強烈なパンチを浴びせられた。


 その一撃で、完全に意識を失ってしまった。






 ……ローザ? ……ローザ? 


 遠くで、私の名前を呼ぶ声がした。


 …………意識が…………


 あの、怪力女……強烈な一撃だった。いったい何者なんだ?


 朦朧とする意識の中で、私のその問いに誰かが答えた。



「何者? ローザ。お前は騎士だ。立派な王国騎士。自分の役目を忘れてしまったのか? 私やお前はこの国の騎士である。その使命は、クラインベルト王国の平和を守る盾であり、国王陛下に仇なす輩を打ち倒す剣であるはずだ」



 盾……剣……



「そうだぞ、ローザ。パパは、子供の頃から陛下と共にあり、陛下の為に剣を振るってきた。そしてまたその陛下もパパが望む国づくりに励まれ、外敵から多くの者を守ってこられたのだ。お前は、そんなクラインベルト王国の平和を守る、由緒正しき騎士の一族の一人だ。パパの自慢の娘だ。王国の為、陛下の為にお前も誇れる騎士として励んでほしい」



 そうだった。私のパパは、王国騎士団の団長だった。子供だった時の私の憧れ……それが大好きなパパだ。


 私もパパみたいな騎士になりたかった。それで、それに必要な勉強や剣の稽古も死ぬ程した。まさに一心不乱に頑張る日々。そして、それがいつの間にか実を結び、私も王国騎士団の団長となった。


 もちろん、七光りと言われれば否定できない所も多かった。


 パパは昔から陛下の為に力を注ぎ、近衛兵長のゲラルド・イーニッヒ様同様にその力を示し、国に貢献してきた。


 そんな偉大なパパの娘である私が騎士団長になれたのは、そういうパパのこれまで尽力してきた力も大きく関係している。


 騎士団長になる為に努力はしてきたつもりだったが、決して自分一人の力で達成できたものでない事は理解していた。


 また、騎士団長になってからも、副長のドリスコやライル……ブレンダ。優秀な部下達にも、恵まれ助けられてきた。


 フフフフ……私は恵まれている。



「どうした、ローザ? 何かパパはお前に可笑しな事を言ったかな?」


「ううん、違うのパパ。私は、パパや皆がいなければ何もできないんだなって思って。『青い薔薇の騎士団』なんて、笑ってしまう。クラインベルト王国の外に出てみれば、すぐにこの有様。慣れ親しんだホームでないと、私は戦えない。パパや部下達の助けがないと、何もできない」


「そんなことはないぞ。お前は正真正銘パパの子だ。頑張れ。頑張ってそれを証明するんだ。お前なら、なんでもできる。パパは、この愛する国やローザ……お前やママ、そして陛下を守るために尽くしてきた。お前はお前で大切な事があるはず。それに尽力するんだ」


「そんな事を言ったって、私……パパみたいにできないよ」


「はっはっは。大丈夫。なんて言ったってお前は、パパの自慢の娘だからな。パパの言う事を信じなさい。お前はパパよりも優れているよ。……さて、そんなお前はなんの為に、その誇りを賭けるのかな?」



 パパの問い……朦朧とした意識の中で、パパの言った事を考えた。すると、パパだけでなくママや陛下、ドリスコやライルにブレンダ……皆の顔が浮かんできた。



 そして、最後に私の目の前に現れたのは、アテナだった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ドリスコとライルとブレンダ

クラインベルト王国、国王陛下直轄騎士団『青い薔薇の騎士団』団員。ローザの頼もしい部下達。ドリスコは副長で、ライルは隊員中一番の料理上手。ライルの実家は、飲食店なので休日は店を手伝っているらしい。ブレンダは、女騎士でローザのような強い女騎士に憧れ目指している。※ブレンダは、正確には従騎士。


〇ソードスラッシュ 種別:剣術

ヨルメニア大陸には、いくつもの剣術があるがその中でも、広く知れ渡っている剣の技。アテナの【居合】に似ているが、ソードスラッシュはタメを作った所から突き刺すように斬り裂く技。薙ぐではなく、突く動作に似ている所から発動する技なので磨けば見切りにくい。


〇ビッグザマウンテンボム 種別:体術

薄汚れたローブを着た二人が同時に発動する技。小柄な方がその素早い動きで相手の動きと武器を抑え、もう一人の大柄の方が力ずくで相手をぶっこ抜く。そこから二人掛かりで地面に叩きつけるツープラトンの威力は絶大。

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