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第236話 『夜中の素振り』




 メイベルは、まだ一人でクヌギの木の下で飲んでいると言った。


 私は彼女に、美味しいバーボンを飲ませてもらった事へのお礼を言うと、再び村の中を歩き始めた。


 すると、少し歩いた所で自分の足どりが覚束ない事に気づいた。


 ……結構な量のお酒を飲んでしまったようだ。それで酔っぱらっているのかもしれない。


 ふいにテトラの事が気になった。ミリス達と、酒場で食事をしているはず。



「そろそろ、私も皆の所へ行ってみようかしら」



 テトラ達がいる酒場へと向かう。


 その途中、村の広場で剣を振る人影を見つけた。――あれは、ローザ騎士団長。



「ローザ、精が出るわね」


「きゃっ!! セ、セシリア!!」



 きゃっ? 



「あら、とても可愛らしい声を出すのね、ローザ騎士団長」


「ちょ、ちょっと驚いただけだ。お、お化けかもしれないだろ? それと、騎士団長は不要だぞ」

 


 お化け?

 


「それで……ローザ、ここで何をしているのかしら?」



 ローザは、ニヤリと笑うと剣を振って見せた。



「見た通り、剣の稽古をしている。私が私であるがために、日々の稽古は欠かせないからな。良かったら、セシリアも振ってみないか?」


「いえ、私は別に……」



 いいえと、答える間もなくローザは自分の振っていた剣を私に握らせた。重い。そしてその辺にあった枝を拾うと私の隣に並び、その枝を剣に見立てて振るった。



「まずはその剣でを振ってみろ。――違う、両手でしっかり柄を握って振るんだ。そうだ。上手いぞ」



 言われるがままに剣を振ってみた。


 今までナイフやボウガンなどの武器は使った事はあるけれど、その戦闘方法を学んだことは一度として無い。そして、剣に関していえば剣術を習うどころか握った事もこれが初めてだった。



「なかなか筋がいいな。王宮のメイドというのは、皆戦闘の才能があるのか?」


「なかなか、誉めるのが上手ね。でも、ちょっと楽しいかもしれない」


「よし、次は突いてみろ」



 そういうとローザは、私の目前に立ち、枝を武器に見立てて構えて見せた。



「剣を構えろ。そうだ。構えた時の切っ先は、相手をしている私の喉の辺りにあわせるんだ。そうだ、いいぞ。それで、突いてこい」


「え? 突いてこいって? それは本気で言っているの? だとしたら、危ないわ」


「大丈夫だ。私は幼い頃から、騎士団長であった父に剣術を教え込まれていた。相手がアテナや、セシリアの相方のテトラならこんな事は言えないが、今日初めて剣を握るセシリアの相手ならばまず問題は無いと断言できる」



 にこりと笑い手招きするローザ。


 褒めるところは褒め、注意するべき所は的確に注意する。そして、教わっている方は、もっと上手くなりたいと思ってしまうように上手に教えてくれる。流石、騎士団長だと思った。


 騎士団長なら普段から部下を訓練したり、稽古させたりしている。教え方も上手だし、そういう事に慣れていても不思議ではない。だけど、ローザは特に優れた騎士だと思った。



「よし、じゃあ私を突いてみろ」


「いきなり突いてもいいの?」


「ああ。タイミングはセシリアの好きな時でいいぞ」



 ローザがそう言い終えると同時に剣を突いた。


 いくら剣術の達人だと言っても、これは避けられないと思った。だから喉ではなく肩を狙った。ローザの驚いた表情。



「え?」



 次の瞬間、私の剣は宙に飛ばされていた。突く瞬間に、ピタリと私の剣につけられたローザの持つ枝が、私の剣を絡め取ったのだ。


 剣はくるくると回転して宙を舞い、落下する場所へローザはさっと先に移動して、その剣をキャッチした。



「セシリアはなかなか凄いな。剣術や武術の経験がないのに、なぜ君が『闇夜の群狼』やドルガンド帝国の兵士相手に戦ってこれたのか解ったよ」


「私もローザがどういう人なのか……そうね、私はメイドなのだけれど、あえて武人風に言うと、剣を交えて解ったわ」



 そういうと、ローザは笑った。



「それはそうと、皆の所へは行かないのか? 皆、酒場で酒を飲んだり料理を楽しんでいるんじゃないかな」


「ええ。これから行こうと思っていた所なのよ。ローザは、いかないのかしら?」



 ローザはにこりと笑うと、再び剣を振った。



「私はもう少しだけここで稽古をしてから、皆のいる酒場へ行こうと思っている。だから心配しないでセシリアは、先に行っていてくれ」


「解ったわ。……それはそうと、さっきローザはアテナ様の事をアテナと呼び捨てにしていたようだけれど」



 ローザの振っていた剣が止まった。



「別にそれに対して、様をつけなさいとか、王女とか殿下をつけなさいとかそういう事ではないの。あなたは、アテナ様と暫く冒険者として旅をしたと聞いたわ。私やテトラも、アテナ様の事をお慕いしている。だから、ローザがアテナ様と旅をした話が本当であれば、その時の事を色々と聞きたいと思って」



 そう、ローザがアテナ様と少しの間、冒険の旅に出た話は聞いた。


 アテナ様は、クラインベルト王国の第二王女であらせられるのだけど、王族ではなく冒険者に憧れて城から旅立ってしまわれた。


 アテナ様の姉であるモニカ様も、今はドルガンド帝国との戦争の関係で王国北部にいらっしゃる。


 近くにいらっしゃらなくても、普段から二人の王女を、お慕いする私達メイドは今もお二人が元気でいられるか常に気になっていたのだ。


 だから当然、アテナ様がずっと憧れていた冒険者に実際なった今、どういう生活をされているのか気にはなっていたし、知りたいとも思っていた。


 その事を、ローザに話すとローザはアテナ様と一緒に冒険した日々の出来事を話してくれた。


 私はメイベルからもらったお酒がまだ身体に残っているのか、ちょっと火照った感じでそのローザが嬉しそうに話すアテナ様の話に耳を傾けた。 


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