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第231話 『賊に占領された村 その2』




 偏見なんてものではなかった。一般的な認識では、盗賊団は、ほとんどが男なのだ。


 盗賊団があったとして、その半分が女だなんていうのは極めて珍しい。


 私自身が女だから、最初は全く気付かなかったというか気にも留めなかったけれど、ローザに言われてはっとした。確かに盗賊団にしては、女が多すぎる。



「おい! ソアラ!」


「随分と馴れ馴れしいじゃないか、ダッガン!」


「エイティーン! デカブツ女は、お呼びじゃねえ、さがってろ」


「あんだとー⁉ ダッガンてめー!! 口の利き方に気を付けねえと、解らせる事になっぞ!! ああ?」



 仲間割れ? 


 どちらにしても、女盗賊と男盗賊の間で仲が悪いように見える。



「ダッガン、妹を虐めないでくれる。それにそんな事より、ソアラはあなたに超ムカついているんだけど」


「ああ⁉ なんでムカつくとか言われなけりゃなんねーんだよ! 何がだよ!!」


「あんたが言った事を思い出してみ。『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』がこの国を占拠した今、それに便乗して村々を襲えばいい金になるって言ったでしょ? でも見てよこれ、この村を! ぜんぜんなんないじゃない。この村の人達全員、貧乏人なんだけど。ソアラ、超呆れてんだけど!」


「そんなの俺様の知ったこっちゃねえよ!! たまたま襲った村がそうだったんだ。それについては、実際襲ってみるまでわかんねーだろがよ!!」



 物影に身を潜め、村人達の情報が出てこないか盗賊達のやり取りに、ずっと耳を傾ける。


 するとローザが私の脇をつついてきた。脇の下は弱いのでビクッとしてしまった。



「は、はい。なんでしょう」


「この村を占拠している盗賊団が何者か解った」


「え? 本当ですか?」


「ああ。見た顔だ。あの馬鹿みたいな顔で、如何にも盗賊面をした男は、ダッガン・デカッドー。『爆裂盗賊団(ばくれつとうぞくだん)』の首領で、メルクト共和国並びにクラインベルト王国付近を荒らしまわっている盗賊団だ。何度か、捕縛しようとしたが逃げられた」


「ば、爆裂盗賊団(ばくれつとうぞくだん)って名前……強そうな名前ですね」


「はは。逃げ足以外は大した連中じゃない。むしろ、要注意なのはあの女達の方だな。自分の事をソアラって呼んでいる女、あれが『女盗賊団アスラ』の首領、ソアラ・アンパリロー。それと、ダッガンに突っかかっていた筋肉質のデカい女が、ソアラの妹のエイティーン。その後ろにいる、華奢な女もソアラの妹でハムレット・アンパリロー。女だけで集まって作った女盗賊団だ」


「なるほど。この村を襲った盗賊団は『爆裂盗賊団(ばくれつとうぞくだん)』と『女盗賊団アスラ』の二種類。だから、この村にいる盗賊団の半分が女性だったんですね」

 

「そうだ。しかも、『女盗賊団アスラ』の方は、間違いなく強敵だぞ。私は戦った事がないが、クラインベルト王国やガンロック王国にまでその名が知られている位だ」


「でも、あの三姉妹とダッガンという男を倒せば私達の勝ちですよね。それならきっとできます! 村人を助ける事ができるはずです」


「確かに今、おあつらえ向きに目の前に盗賊達の頭目が集まっているんだから、行ってササってやっつければ簡単に事が片付くかもしれないが。ふむ、どうするかな」



 ローザは、自分の顎を触り、考える素振りを見せた。


 目の前にいる賊は、頭目を合わせて20人もいない。


 以前、セシリアとクラインベルト王都のスラム街酒場に真正面から乗り込んだ時より、圧倒的に数が少ない。


 まあ、あの時はアーサーが助太刀してくれたけど。それでも、今はローザがいる。



「きゃあっ!!」



 唐突に、何者かに後ろからお尻を触られた。


 悲鳴をあげかけた刹那、ローザとその私のお尻を触った何者かに口を塞がれた。振り返ると、私のお尻を触っていたのはボーゲンだった。



「よっ。お楽しみかい? でも覗きってのは、声をあげちゃいけねえ。バレんだろうがよ」



 ローザがボーゲンを睨みつける。



「この子はあんたの女じゃないだろ? 尻を触るなら、ちゃんと話をつけるか対価を払って了承を得ろ」


「まあいいだろ? 減るもんでもないんだしよ。お前みたいなガキのケツを触ってやってんだ。逆に礼を言って欲しいもんだぜ」



 バーンさんが信用していて、自分の弟分って言っていたけどなんて人なんだろう。例えるならバーンさんと、対極?


 しかも、何もしていないのにお尻を触られた私の方が睨みつけたい立場なのに、ボーゲンの顔を見ると逆に睨まれてしまった。


 怒ってもいいはずなのに、私はすぐに顔を伏せてしまった。うう……



「兎に角、この子にセクハラするな。可愛いから、ついつい手が出てしまう気持ちは解るが、任務の妨げになるし私が許さん」


「それなら、ローザ。あんたの尻なら撫で繰り回してもいいのかよ?」


「ああ? いいぞ。できるもんならやってみろ。ただ、その後はどうなるか私は知らんぞ。言っておくが、私は手加減というものを知らんからな」



 微笑を浮かべるローザに、ボーゲンの額から汗が滴りおちた。



「そんなくだんねえ事より、これからあいつらやっつけんだろ? だったらどうするんだ? 今、仕掛けるのか?」


「できれば村人の安全を先に確保してからにしたい」



 チャリッ



 ボーゲンは、何処からか手に入れた鍵を目の前でちらつかせた。



「これなーーんだ?」


「鍵……これはなんの鍵だ?」


「村人ならもう見つけたぜ。村外れにある納屋に纏めて閉じ込められている。賊共が話しているのを盗み聞いた。既に納屋へも確認しに行ってみたし、その納屋にかけられている鍵も手に入れた」


「そうか、それなら話は早い。じゃあ悪いがボーゲンは、また納屋へ行ってくれ。そして納屋を開放して村人達を逃がしてやれ」


「逃がすって、何処へ逃がすんだよ」


「何処へでもいい。でもできるなら、街道の方へでも連れ出せ。そこまで避難させれば安心して盗賊どもを駆逐できる。できるな?」


「へっ。本当は納屋へはあんたらに行ってもらって、盗賊達の方は俺様が始末してやりたかったんだがな……解った騎士団長様に譲ってやんよ。つまんねえ役回りだが、村人は任せろ」



 ボーゲンは舌打ちすると、納屋があるという方へ駆けて行った。


 たった一人で私達と別行動しているうちに、この村に捕らわれている村人の場所の把握や、そこの確認を終えて鍵まで手に入れてくるボーゲン。


 冒険者として優秀でない訳がない彼の働きに心から凄いと思ったけれど、これまでの事を考えるとなんだか複雑な気分になった。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ダッガン・デカッドー 州別:ヒューム

クラインベルト王国、メルクト共和国、ガンロック王国の国境付近を中心に荒らしまわる盗賊団『爆裂盗賊団』の頭目。


〇ソアラ・アンパリロー 種別:ヒューム

女盗賊団『アスラ』の三姉妹の長女であり、頭目。女盗賊団『アスラ』は、全員女性の盗賊団なのだが、とても手強く何度も各国の討伐にやってきた冒険者や騎士団を撃退したり、何度も見事に逃げ延びた事がある為、かなり有名な盗賊団となった。それで、更に仲間が増えて大きな規模の盗賊団となった。全ては、アスラ三姉妹の実力であるが、長女のソアラは中でも切れ者で彼女の手腕によるものが大きい。


〇エイティーン・アンパリロー 種別:ヒューム

女盗賊団『アスラ』の三姉妹の次女。超パワー型。三姉妹の中で、もっとも力が強く攻撃的。身体も大きく、ムッキムキ。


〇ハムレット・アンパリロー 種別:ヒューム

女盗賊団『アスラ』の三姉妹の三女。三姉妹の中では少女のように、小柄な体格。ゴシックドレスのような服に身を包み、鞭を巧みに扱う。暴走するエイティーンのブレーキ役と、二人の姉のサポート役を見事にこなす。

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