第230話 『盗賊に占拠された村 その1』
村に侵入し、探ってみるとそこら中に賊が徘徊していた。それで、この村は賊に完全に占領されているのだという事が解った。
盗賊団『闇夜の群狼』かどうかは解らないけど、今ここにいる賊は、ひとつの村をまるごと占領できる程の大きさ持つ盗賊団だという事も解る。
私とローザは、賊達の目を掻い潜って更に村の奥へと侵入する。
賊に見つからないように、慎重に素早く動く。すると、すぐ後ろで気配がした。
「お前達、どうやって抜け出した?」
「え?」
「たあっ!!」
ドカッ!!
「ぐへ」
見つからないように、できるだけ身を潜めて移動していたはずだったけど、見つかってしまった。
いきなり後ろから、見回っていた賊の一人に声をかけられ武器を向けられた。
咄嗟の事で、どうしようって頭の中が一瞬真っ白になった。でも、ローザが素早く振り返って、賊の頭部に見事な上段蹴りを決めたのだ。
今はその賊は、白目をむいて地面に転がっている。
「ふう、危なかった。大声を出されたら大騒ぎになる所だったな」
「ローザ……流石、騎士団長ですね。凄い身のこなしです」
「そう? とりあえず、そっち……こいつの足をもって。他の奴らに見つからないように、気絶しているこいつを見つからない場所へ移動させておこう」
「はい!」
元気よく返事したつもりだったが、すぐにローザに口を塞がれてしまった。
そうだった。大きな声を出したら、また気づかれてしまう。うーー、ごめんなさい。
男を物影に移動させると、更にもっと村の奥へと進む。
進んでいる最中に、村内をうろつく何人かの賊に遭遇する。
しかし、その全てをローザがこっそりと音も無く倒して見せた。この人、騎士と言うかアサシンの才能もあるのでは……と思ってしまう。
「私、ぜんぜんお役に立ててませんよね。すいません」
「そうか? しかしそんな事はないぞ。後できっと、テトラの力も必要になる。その時がきたら、大いなる戦力になると期待しているから……だから、そんなに落ち込むな」
ローザが爽やかな笑顔でそう言った。
その整った綺麗な顔には、ドキッとした。ローザがもしも男の人だったら、今の表情一つで私はローザにときめいていたかもしれない。そんな事を考えていると、ローザに怒られた。
「おーい。ちゃんと聞いているのか?」
「え? あ、はい! すいません! もう一度、お願いします!」
こんな時にって、呆れた顔をされる。俯いて申し訳ない顔をすると、ローザは軽く笑ってもう一度話してくれた。
「最初に見つかって倒した賊、あいつが言った言葉を覚えているか?」
「え? ええーーと。なんだお前は? っとかでしたっけ?」
「いや、違う。お前達、どうやって抜け出した? って言ったんだ」
「ヒイイ! すいません、そうでした!」
「ははは……頼むぞ、テトラ。しっかりな」
「はひいー」
あうあうあうーーー!!
両手で顔を覆ってしゃがみこんだ。
もう、本当に私は駄目だ!! 駄目なのはいつもの事だけど、今日は本当に駄目だ!! 酷すぎる。なんでなんだろう。こんな所、セシリアに見られたらきっと凄く怒られる。
ルーニ様を救出できた事や、ゲラルド様に褒められた事。それにカルミア村の件でもそうだけど、私は昔の私を超えて生まれ変わったと思い込んでいた。慢心だった。恥ずかしい……
本当はセシリアやマリン、バーンさんに今はローザ。本当に凄い人達が、私の傍にいてくれて私を助けてくれているから、これまでの事もやり遂げられているのに。
それなのに、私は自分が成長しているって勘違いしているから……
「おい、どうした? テトラ。具合でも悪いのか、本当に大丈夫か?」
「は、はい。すいません。なんだかちょっと……」
「おい、しっかりしろ」
――え?
急に暖かい何かに包まれた。気が付くとローザに、後ろから抱きしめられていた。
ローザとはトゥターン砦での件で初めて出会い、それから今回の件で再会した。
それ位にしかお互いの事を知らないのに、私を包んでくれたローザの暖かさは、セシリアやアテナ様と同様に感じた。
――――それは、優しい温もり。
「ローザ! もう大丈夫です! ありがとうございます。なんだか私、ちょっと思ったように上手くいかないからって戸惑ってしまって」
「誰でも上手くいかない事はあるし、それが普通だ。これまでの失敗を反省し、次に活かすって言う事は、確かに正しいが……あまり自分を責めすぎるのは良くないな」
「はい……」
ローザは私の頭をポンポンと軽く触って、にこりと笑った。
「さっきの話に戻すがいいか? もう大丈夫だろ?」
「はい! もう大丈夫です」
「奴は、抜け出した? って言ったんだ。つまり――この村に住んでいる村人は、何処かで捕らえられているという事だ。ニュアンスから言っても、その捕えている場所とは、この村内の何処かで間違いないと思う」
そうだ。確かにローザが倒してくれた賊の男は、そう言っていた。
村人を何処かに捕らえているから、村でコソコソしていた私達の事を見て、逃げ出した村人だと思ったんだ。
「それともう一つ気になる事がある。賊についてだ。あれを見ろ」
ローザが指した先、そこにはこの村の酒場があり、その前には何十人ものたむろする賊達がいた。
「あっ。確かに結構人数がいますね。ボーゲンの方は大丈夫でしょうか?」
「奴らをもっとよく観察してみろ。何か気になる点があるだろ?」
「え?」
ローザのその言葉に、私はもう一度酒場の前にたむろする賊達をよく観察してみた。すると確かに私も気になる点を一つ見つける事ができた。
「あっ!」
「別におかしくないと言えばおかしくない事なのかもしれないが……私はこれまで、騎士団の任務で賊の討伐を何度も行ってきた。その記憶からいっても、今目にしている光景は珍しいものだと思う」
ローザが、おかしいと感じた事。
それは、この村を占拠する盗賊団の半分程が女だという事だった。
確かに女盗賊は存在する。
だけど、盗賊団の半分が女性っていう光景を目にした話は、私も聞いた事がないし、珍しいものに思えた。
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〚下記備考欄〛
〇ゲラルド・イーニッヒ 種別:ヒューム
クラインベルト王国最強の剣士と言われる近衛兵隊長。斬鉄という剣を持つが、剣以外に槍なども巧みに扱う。テトラ・ナインテールの事を嫌悪していたが、テトラが次第に成長しひたむきに精進し第三王女ルーニやセシル王に尽くす姿を見て、思い改める。
〇カルミア村 種別:ロケーション
クラインベルト王国にある獣人が住む村。ルキアやリア、ミラール達が生まれ育った村。賊に襲われ、何人もの村人が殺められ家が焼き払われた。今は、リアやパルマン、ルーニを筆頭に復興を目指している。




