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第229話 『粗暴な男』



「紹介しよう。こいつは、ボーゲン・ホイッツ。口も態度も性格も悪い奴だが、実は凄腕のAランク冒険者だ。俺の弟分みてーなもんだから、信用もできる。こいつが同行して、メルクト共和国に今蔓延っている『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』の討伐に力を貸す。とりあえず、それでどうだ? 後程、バックアップ面で協力できる事があれば、俺も惜しみなく協力させてもらうし」



 エスカルテの街のギルドマスター、バーン・グラッドの言葉だった。


 バーンさんがそう言って、メルクト共和国を救う為に、動けない自分の代わりに推薦してくれたボーゲン・ホイッツは、粗暴な印象でとても攻撃的な人だった。


 バーンさんは、信用できるとも言っていたけれど、私はちょっと苦手だなと思った。



「皆は、ここで休息しておいてくれればいいが、俺はちょっとその村まで行って偵察してくる。どうやら、その村も賊に占領されているみたいな気配だったしな」


「メイベル……」



 ローザがメイベルにどうする? といった感じで、視線を向けた。



「そうでやんすね。確かにこの近くに村はありやす。ありやすが、そこにあっしらの敵はいないと思いやす」


「なぜあんたに、敵がいないと解るんだよ」



 メイベルに突っかかるボーゲン。ローザが間に入った。



「ボーゲン、なぜだ? その村に偵察にいく必要性は? 何か見えたのか?」


「ああ。村人は見えなかったが、明らかに荒くれ者って野郎どもがたむろしていたぜ。そいつらが『闇夜の群狼(やみよのぐんろう)』なのか、この騒動に便乗して村を襲っている略奪者なのかは解らねえがな。いずれにしても、ちょっと探ってくれば解るってもんだ」



 メイベルとディストルは顔を見合わせて、困った表情をした。


 二人からすれば、そんなのに関わっている暇があればコルネウス執政官を助けに行きたいのかもしれない。だけど……



「どうせ、出発は明日の朝だ。何か有力な情報を入手できるかもしれねーし、いいだろ? 一人で行ってくるしよ」


「私も行きます!」



 ボーゲンが驚いた顔で私の方を振り向いた。メイベルやローザも驚いている。



「村が賊に襲われていると聞いて、そのまま放ってはおけないです。それにボーゲンが言ったように、明日出発なら今ちょっと行って、様子を見てくる位ならいいかなって……」



 バシーーンッ



 刹那、お尻に強烈な痛みが走った。ボーゲンに、思いきり叩かれたのだ。



「痛いですよ……そんなに強く叩いたら、痛いですよ」


「気合を入れてやったんだよ。よし! じゃあ、狐! お前はついてこい」


「狐って……は、はい」



 セシリアの顔を見ると、頷いていた。良かった。少なくともセシリアは、私の行動に賛成してくれている。それだけで自分の行動に自信が湧いてくる。



「じゃあ、私も行こう」



 ローザだった。ローザが一緒についてきてくれるなら、更に心強い。



「私達も行ってもいいのだけれど、偵察っていうのなら少人数の方がいいわよね。助けがいるなら、遠慮なく言ってねテトラちゃん」



 そう言ってミリスは私を抱きしめた。頭の耳の付け根辺りを、ミリスは執拗に頬ずりして逃がしてくれないので、凄く困った。



「あ、ありがとうございます、ミリス。その時はよろしくお願いします」



 ローザは剣を手に取ると、腰にさした。


 ボーゲンも準備ができた感じで私を見る。急かされているのが解ったので、私も慌てて涯角槍(がいかくそう)を手に取りセシリアとミリスに行ってきますと手を挙げると二人の後に続いた。


 ボーゲンの見つけた村へ向かって歩くと、ローザが小声で話しかけてきた。



「所でテトラとセシリアは、ずっとメイド服のままでいるけど、動きづらくはないのか?」


「え? うーーん、メイド服はお城でもお掃除やお料理などする時に着衣しているものですし、動きにくいという事はないですよ。むしろ、着慣れているので動きやすいですかね。それに私もセシリアも、この姿こそが戦闘服でもあるんです」


「ふむ。なるほどな」


「あと、自惚れなので笑って頂いてかまいませんが、私のメイド服姿をご覧になられたアテナ様やモニカ様は、可愛いと言ってくださったんです。だから、このメイド服は気に入っているんです」


「な、なに⁉ アテナ様だと⁉ な、なるほど、そうか、そうか。アテナ様がな」



 アテナ様という言葉を聞いて、急にローザが私をまじまじと見始めた。そして、服を触る。



「良かったら今度、ローザも着てみますか。きっと似合いますよ」


「な、なんだとお⁉」



 しまった!! 


 ローザは国王陛下直轄の『青い薔薇の騎士団』団長。そんな方に、メイド服が似合うなどと言って、大変な失言をしてしまったのかもしれない。でも、考えてみると、確かに失礼で迂闊な発言だった。



「も、申し訳ありません!! 言い訳かもしれませんが、ローザ様の事を本当に綺麗だと思って……」


「いいっ!!」



 ローザは、物凄い勢いで私の手を両手で握って言った。私は驚いてビクっとする。



「え?」


「それいいね!! 私もメイド服を着てみたい!! そしたら、私もアテナに……可愛いって言ってもらえるかもしれんよな!! フヒヒヒ……ウヘヘ」


「え?」


「い、いやっ! 何でもない。気にしないでくれ! それと、私の事はローザと呼び捨てでいいからな。さっきそう決めただろ」


「は、はい」


「おいおい! いつまで、くっちゃべっているんだ? 村の近くまできたぞ! 身を低くしろ! それと声もだ。馬鹿みてーに大声あげんな! 見つかっちまうだろーが」


「は、はい! すすす、すいません!!」


「うっ! す、すまん」



 ボーゲンに怒られてしまった。


 気が付くと、ボーゲンが言っていた村の近くにある、草場の茂みにまで移動していた。


 こっそりと、顔を出して村の様子を伺うとボーゲンが言ったように、何十人もの一目で賊だと解る連中がたむろっていた。


 村人達は、見える場所にはいない。いったい何処へ行ってしまったのだろうか。



「俺はあっちを見てくる。お前らはお前らでちゃんとやれ!」


「え? ボ、ボーゲン?」



 ボーゲンは見つからないように身をかがめ、さっさと一人で村の中へ潜入してしまった。


 ローザと顔を見合わせた後、私達もボーゲンが向かった方とは違う場所から村へ入り込むことにした。


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