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第227話 『トロルの襲撃』




「テトラ!! 起きて!!」


「う、うん……」


「起きなさいって言っているでしょ!!」


「……え?」



 セシリアの声で目が覚めた。剣の音? 襲撃!!


 それに気づいて、飛び起きて慌てて涯角槍を掴んだ。



「どどど、どうしたんですか、セシリア?」



 誰かの叫び声。そして、剣か何か武器の交わる音。もしかして、襲撃を受けている?



「魔物の襲撃よ。現在、私達は、数十匹のトロルと遭遇し交戦しているわ! 皆、先に飛び出して戦っているから、テトラも早く行って戦闘に加わりなさい!」


「は、はい! 解りました!」



 メイド服のスカートを捲り上げて、馬車から勢いよく飛び出る。すると、馬車の周囲には、既に何十匹という数のトロルが攻め寄せていた。



 グオオオオオオ!!



 メイベルさんやディストルさん、ローザ団長達を筆頭に皆応戦している。私も早く加勢に入らないと。



「たあああああ!!」



 グワアアアア!!



 アレアスさんと、ダルトンさん、それにミリスさんが戦っていたトロルの前に躍り出る。そしてそのトロルの腹に、涯角槍(がいかくそう)を突き刺した。



 グワアアア!!



「テトラちゃん!!」


「テトラ!!」


「すいません! 眠っちゃってました!! 皆さん、大丈夫ですか!」



 アレアスが叫ぶ。



「そんな事より、後ろだ!! 避けろ、テトラ!!」


「え?」



 突き刺した涯角槍(がいかくそう)を引き抜いて振り返ると、別のトロルが私目掛けて大きな棍棒を片手に振りかぶっていた。


 駄目!! もう今からじゃ、避けられない!!



「テトラちゃん!!」



 ミリスさんの叫ぶ声も聞こえる。


 私は自分の内側にある力を爆発させるように高めた。すると、尻尾が1本光始めた。力が溢れてくる。



 グオオオオオ!!



「うおおおおお!!」

  


 雄叫び。こうなったら、トロルの重い一撃を受け止めるしかない!! 九尾の力を使えばそれができる!! 


 涯角槍(がいかくそう)を両手でぎゅっと握り、ガードする為に目前に構えてトロルと同じように大きく叫んだ。くる!!


 ドガンッ!!


 棍棒と涯角槍(がいかくそう)がぶつかる。――衝撃。


 私と巨体のトロルではそもそも体重が違うので、攻撃を受け止めた瞬間、だいぶ後方へと弾き飛ばされた。


 しかし、その攻撃事態は完全に受け止める事ができた。もしも涯角槍(がいかくそう)でなく、並の槍だったらへし折れて防ぎきれなかったかもしれない。



「マジかよ! トロルの一撃を受け止めやがった」


「これが、獣人の力なのか?」



 ダルトンさんとアレアスさんが、驚きの声をあげた。そこへローザ団長が声をかけてくれた。



「いいぞ!! その調子だ!! これなら、勝てるぞ!! 皆の強さは本物だ。自信を持って戦えば問題なく勝てるはずだ。だから、決して諦めるな!!」


「はいっ!!」



 返事をすると、涯角槍(がいかくそう)を左右に振り回し、思いきり跳躍して、先ほど私に重い棍棒の一撃を放ったトロルの脳天に目掛けて、力いっぱいに涯角槍(がいかくそう)を叩き下ろした。



 ――喰らえ!! 方天撃(ほうてんげき)!!



 バキィイ!!



 グギャアアッ!!



 私の一撃を浴びたトロルは、その場にうつ伏せに倒れた。しかし、まだまだ周囲には何十匹ものトロルがいて、包囲網を組んでじりじりと距離を縮めてくる。



「テトラ! 諦めるな! トロルの怪力と回復能力は凄まじい。だが、攻撃すれば人間同様に痛みも感じるしダメージも残る。だから己の力に自信をもってどんどん攻めて、相手が嫌になる程に攻撃してやれ」


「はい! ローザ団長!!」



 ローザ団長の動きは凄まじかった。


 相手を翻弄するように左右に高速で動いて、トロル達の攻撃を巧みに避けていたかと思うと、一瞬にして距離を詰めて剣で斬りつける。


 しかも、物凄いスピードで何度も斬りつけるのだ。


 そして、ひとたび動きを止めようものなら、相手の身体へ剣を根元まで捩り込む。流石のトロルもその攻撃には、たまらず悲鳴をあげているものもいた。


 そしてふと目をやると、セシリアもボウガンを放ち、メイベルさん達を援護しに走っていた。メイベルさんは、それに気づいてセシリアに対して親指を立てて「助かりやす!」っと言った。


 でも、メイベルさんの剣裁きは見事なものだし、トロルの攻撃もさっと上手に避けていたので、別に助けがなくても余裕で戦っているようにも見えた。


 それもそのはず。メイベルさんは、確かAランク冒険者。


 そしてそのメイベルさんの相方であるディストルさんも、持ち前の怪力と愛用のスレッジハンマーでトロル達を圧倒している。


 私が九尾の力の一部を開放して、なんとか受けきっていたトロルの一撃も、ディストルさんはその持ち前の怪力とスレッジハンマーだけで真正面からしっかりと受け止めている。本当に、この人はEランク冒険者なのだろうか?



 グオオオオンン!!



 1匹のトロルが吠えると、それに呼応して他のトロル達も呻った。


 何事かと思った途端、トロル達は私達の誰一人も仕留める事ができず、諦めて全員逃げ始めた。



「はあ……勝った」



 そう思ったと同時に、力が抜けて尻餅をつく。すると、ローザ団長がやってきて私の肩に手を置いた。



「ルーニ様を救出してくれた力、以前に見せてもらったが……やはりこれは心強いな。この先もきっとその力が何度も必要になるだろう。頼むぞ、テトラ!」


「は、はい! ローザ団長!」



 私の肩に置かれたローザ団長の手は、そのまま握手をする為に目の前に差し出され、握るとそのまま引っ張られた。


 だらしなくも尻餅をついて座り込んだ私を立たせてもらった。そんなローザ団長を、なんだか物凄く気持ちのいい人だと思った。



「それとだな。皆に言っているが、テトラとセシリアも、今後は私の事をローザと呼び捨てにしてくれていい。……というかむしろ、任務中だから団長はつけない方がいいかもしれんしな」


「はい! では、恐れながらローザと呼ばせていただきます」


「私もそのように呼ばせて頂きます。ローザ」



 ローザは、私とセシリアがそういうと、にこりと笑って頷いた。


 メイベルさんとディストルさんが、完全に魔物が周囲にいないか確認して回ると、戻ってきた。



「この辺りは、トロルの他にも危険な魔物と遭遇する確率が高い。そろそろボーゲンが斥候から戻ってくるから、そしたらこの近くの森でキャンプを張りやしょう。それが、一番いいストーリーでやんすよ」

 


 私はメイベルさんのその言葉で、ボーゲンさんがいない事に初めて気づいた。


 斥候って言っていたから、私が眠ってしまっているうちに、危険がないか偵察に出てくれたのだと思った。


 でも、さっきのトロルのような予期せぬ強襲までは、完全に防ぐ事はできないんだとも思った。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇トロル 種別:魔物

オークよりも大きい人型の魔物。知能はあまり高くなく、棍棒などの原始的な武器を手に人を襲う。回復能力というか、再生能力に長けていてちょっとした怪我などは一瞬で元に戻る。しかし、ダメージまでは回復しないという事と、いくら再生可能でも痛みは普通にあるようだ。


方天撃(ほうてんげき) 種別:棒術

テトラの使う、棒術。攻撃対象よりも高く跳躍し、反動をつけて頭上から棒を相手の脳天へ振り下ろす技。体重も乗せての攻撃になるので、威力は非常に高い。大男もまともに喰らえば倒れる程。

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