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第225話 『蟹鍋』



 キャンプに戻ると、皆一斉に私のもとへ駆けてきた。そこには、かつてガンロック王国で刃を交えたシャルロッテの姿もある。


 皆が心配してくれていたのは嬉しかったけれど、もともとはメール達を捜索し助けに行った事なのに、私の都合で更に皆に輪をかけて心配させてしまった事を、本当に申し訳ないなと思った。


 でも、今となってはギーを助けた事も、その後に会話できた事も良かったと思っている。


 でも、勝手な行動をして心配をかけてしまった事は事実。


 なので、メール達が皆に心配をかけてしまった事に対して謝りお礼を言った後、私もそれに続いて皆の前で謝った。


 ギーとのやり取りについては、私が戻る前に事前にある程度ファムが上手に話してくれていたようだったので、感謝こそされ責められるような事は無かった。ありがとう、ファム。


 そんな訳で色々あったけど、この地底湖キャンプはまだ終わっていはいない。お楽しみは、これから。


 私はルキアとファムと一緒に、頑張って蟹鍋を仕上げにかかった。


 メール、ミリー、ユリリアは食器を用意したり野草を刻んだりとお手伝い。ルシエルは、ここへ戻ってくる際に、地底湖で何やら大きな貝を見つけたので、それをミューリやシャルロッテと一緒に、釣ってきた魚やブルーブレイドクラブと合わせて網焼きにしていた。


 もうすでに、それらを焼く香ばしく美味しそうなにおいが漂ってくる。


 ファム曰く、ルシエルが見つけた貝は食用で、焼いて食べると弾力があってジューシーで凄く美味しいのだそうだ。


 白く扇のような形をした、綺麗な二枚貝。火を通すと貝はパカっと開いてプリっとした弾力のある身をさらけ出した。すっごい、美味しそう!! 


 料理の支度が終わると、シャルロッテのメイドさん達が瓶を何本も、持ってきた。ルシエルとミューリがそれを見て飛び跳ねた。



「おいおいおい! そりゃ酒じゃねーか!!」



 とても、森の守護者や知恵者と呼ばれているエルフのセリフとは思えない。どちらかと言うと、賊?



「うわーー、葡萄酒⁉ 僕、葡萄酒大好き!」



 ミューリの言葉に、シャルロッテとメイドさん達が苦笑する。



「葡萄酒と言えば葡萄酒ですが、これはワインですわ。これまでわたくし達と、アテナは敵対関係でしたでしょ。でも、少なくとも今このひと時は、親愛なる仲間として一緒にお酒を酌み交わしたいと思っていますのよ。どうかしら?」


「もちろん、私達もシャルロッテの事を今は親愛なる友人だと思っているわ! シャルロッテ、ありがとう!」


「つまり、略して親友だな。フフン」



 ルシエルがボソッとそう言った。



「どういたしまして。だけど、驚くのはまだ少し早いですわ」


「え? まだなんかあんの? もしかしてオレにサプライズ的なものがあったりするのか? サプライズ的な、思わずビックリしちゃうよーなやーつが」


「残念ですけれど、ルシエルに特別何かというものは、ありませんわ。フフフ。とりあえず、後程のお楽しみ……という事にしましょう。それより、お酒の準備も整いましたし、そろそろご飯にしません?」


「そうだね! 僕、ペッコペコだよー」


「いいですねー! 食べましょう!」



 ミューリやメール達もワーーっと声をあげた。


 ルキアとファムが皆の器に、蟹鍋を盛っていく。


 ルシエル達も美味しく焼けた焼き物を、食べたい人へどんどん回していった。そしてまた焼く。


 どうやらルシエルは食べるだけでなく、貝や肉やらを焼く作業も気に入ったようだ。夢中になって、焼き物を焼いていくルシエルの表情は、なんだか職人のような感じだった。


 ――――カンパーーーイ!!


 お酒も皆にいきわたり、乾杯の音頭はシャルロッテにお願いした。そして宴が始まった。


 私も久しぶりのワインを楽しみながら、蟹鍋やら焼き物やらを楽しむ。


 そしてようやく、蟹鍋を食べ終わった所でシャルロッテが自分のキャンプの方で炊き上げたライスをメイドさん達に運ばせて持ってきた。私はそれを見てはっとした。



「もしかして、そのライス!!」


「お察しの通りですわ。食べ終わった蟹鍋に投入しますの。鍋の中に残ったスープは蟹や野草、キノコなどの美味しいエキスが沢山出ていますわ。そこへライスと、コッコバードの卵などを入れますの。東方の国では、こういう食べ方をするお料理を『雑炊(ぞうすい)』というそうですわよ」



 雑炊!! 私も本で読んだことがある!! おにぎりもそうだけど、東方にある国の素敵な料理!!


 まさか、シャルロッテがそれを知っていて、準備までしているなんてね。恐るべし、ヴァレスティナ公国の貴族令嬢。



「さあ、できましたわ。皆さんも、この雑炊を是非、召し上がってくださいな」



 言うまでも無い事かもしれない事だけど、ブルーブレイドクラブや野草、キノコなどの出汁がしっかりと出て凝縮した極上のスープとなっており、それを取り込んだ上にまたその上から旨味の含んだ卵と薬味を纏ったライスは、とんでもなく美味しかった。


 ルシエルやルキア、カルビまでもが一心不乱にがつがつと食べる程だった。まあ、私もだけど。


 シャルロッテがとどめに作った雑炊は、皆何度もおかわりをしてあっという間になくなってしまった。本当にシャルロッテは、なんてとんでもないサプライズを用意していたんだ! 


 お腹もいっぱいになり、大満足の私は地底湖の近くに折りたたみ椅子を持っていき、それに座って暫く湖を眺めながらもワインを楽しんだ。


 皆も思い思いに楽しんで、自由な時間を過ごしていた。


 それからまた少しして、私の方にミューリがやってきた。



「僕もここで、アテナとちょっと一緒に飲んでいい?」


「うん。いいよー」



 ミューリは近くにあった手ごろな石を転がして、それに座った。



「アテナはさ」


「うん?」


「アテナはドワーフの王国に着いたら、何するの?」


「うーーん。そうだね。とりあえず、ノクタームエルド入国自体が初めてだから、ドワーフの王国というのも見てみたい。あとは、冒険者としての仕事もしないとね。ちょっとギルドによろうかな」


「それだったらさ、僕やファムと一緒にドワーフ王からの仕事を受けない? 王からの直接の依頼だから報酬もいいよ」


「え? ドワーフ王からの仕事? どゆこと?」


「僕とファム、あとアテナがキノコ採取の際にキノコ系の魔物から助けてくれたギブンは、ノクタームエルドを中心に活動をしている冒険者だとは前にも言ったよね。実はそれでね、僕達はドワーフ王から直接仕事を頂いて仕事もしているんだよ」



 そういえば、ミューリとファムってこのノクタームエルドの冒険者界隈では、『ウインドファイア』って呼ばれる程の名うての冒険者ユニットだったんだけ?


 ドワーフ王とミューリ達に繋がりがあるっていうのは驚きだけど、二人の実力と名声を考えるとそれは別に不思議ではないと思った。


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