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第223話 『サヒュアッグの巣から脱出せよ!』



 ファムが、怪訝な顔をした。



「もしかして、連れて行くの? それはリザードマンだよ。リザードマンっていうのは、冷酷残忍で戦闘能力も高くゴブリンやコボルト、オークよりも危険だよ」


「知っている……それは知っているよ。本で読んだ事もあるし」


「じゃあ、なんで助けるの?」


「解らないけど、そうしちゃったんだよ。しちゃったら、もうするしかないでしょ」



 ファムはどうしても、ギーを助ける事に賛成できないといった感じだった。サヒュアッグ同様にギーには、会うなり襲われた。だから、当然の反応だとは思った。


 ……だけど。



「じゃあ、ここに置いていけばいい。リザードマンは本当に危険。ファムも、今までも戦った事があるけど殺されかけた事もある」


「危険なのは解っているし、責任は私がちゃんと持つわ。それにこのリザードマンをここに置いて行ったら、あとからやってくるサヒュアッグに殺されちゃうよ。このリザードマン、ギーっていう名前なんだけど、ギーもここへ乗り込んできていたみたいだし。サヒュアッグとリザードマンは、敵対しているよ」


「でもそれじゃあ、アテナはそのリザードマンを背負ってここを脱出するの? 途中で、意識を取り戻したら後ろから襲われるよ。それって凄い危険だと思う。だから、ここに置いて行った方がいい」


「それはダメ。置いて行ったら、ギーは確実に殺される。もういいの。私が全部、責任とるから。途中で、目を覚まして私に襲い掛かってきた時は、私が始末をつける。約束するわ」



 ファムは、かなり困った顔をしていた。


 ノクタームエルドでは、リザードマンはかなり脅威的な存在なのだろう。


 クラインベルト王国では、リザードマンを見た事がない。だから、もしかしたらファムが言うように、私のこの行動は、かなり浅はかなものなのかもしれない。でも、もう引き返せない。


 一度助けようって思ったのだから、その先でギーがまた私の敵として襲い掛かってきたとしても、今は自分の信念を押して助ける。師匠ならきっとそうするだろうし、私だってそれでいいと思っている。


 ファムとの問答をしていると、奥から新たなサヒュアッグがこちらへ向かって走ってきた。メールが叫ぶ。



「大変!! また、サヒュアッグが襲い掛かってきます!!」


「ここは、わたくしにお任せなさい! それっ!!」



 シャルロッテが鞭を取り出す。


 近くにあった石に鞭を巻き付けると、それを投げ放つ。勢いのついた石は、サヒュアッグの額を割った。

 

 残りの1匹もシャルロッテは、鞭を巧みに操ってサヒュアッグの首に巻き付けると絞殺した。



「このままここでのんびりとお喋りしていても、きっとまだまだサヒュアッグはここへ向かってきますわ。だから、言い争いをしている暇があるなら、さっさと逃げた方がいいと思いませんこと?」



 シャルロッテは、そう言ってギーを背負う私に寄り添って、力を貸してくれた。


 それを見てファムは、不満そうに頬を膨らませたが、説得する事を諦めたのか、ライティング魔法と水中でも呼吸できる魔法『風の水中呼吸魔法(エアスキューバ)』を唱えて水に入った。



「水中洞窟は真っ暗だから、ファムが先に行って辺りを照らしてね。そしたらその後に、メールとユリリア――最後に私とシャルロッテが続くわ」



 頷くファムと、女の子二人。


 遠くから迫ってくる魔物達の奇声。


 私は、小さな球状の全方位型魔法防壁(マジックシールド)を発動させ、それをギーの頭部へかぶせ覆った。


 リザードマンが水の中でも呼吸ができるかどうかまでは解らないけど、失神しているのだから一応用心の為だ。これなら、外へ出るまでは大丈夫だろう。


 ファムに続いてメールとユリリアが潜ったので、私も大きく息を吸い込んで水に潜った。シャルロッテが横で、私と私が背負っているギーに手を当て支えてくれている。


 ありがとうと、シャルロッテに目配せすると彼女は屈託の無い笑顔を見せた。


 ファムの発動させたライティング魔法は、風属性の魔法で緑色に明るく光り、辺りを照らしている。私とシャルロッテは、暗闇の水中の中、緑色に光る球を追って泳いだ。

 

 やがて、水中洞窟を抜けて私達はもとの地底湖に戻ってくることができた。


 水面に顔を出し、大きく深呼吸する。



 ザバンッ



「はあ、はあ、はあ。助かった……けど、奴らが追ってくるかもしれないから、ここを離れよう」


「わかりましたわ」



 途中、やっぱり心配でたまらなかったのか、キャンプに戻らずに私達の帰りを待っていたミリーとも合流した。


 ミリーとメール、ユリリアのうら若き女の子三人は、お互いに抱き合って無事を確認して、泣いていた。本当に全員無事で良かった。


 とりあえず、陸地を探してそこにあがると、私は皆に言った。



「ファム、シャルロッテ。この子達を連れてキャンプまで、先に帰ってくれる。ルシエルやミューリも探し回ってくれているから、ついでに見つけて一緒に戻ってほしい」



 ルシエルとミューリの事だから、今もきっと血眼になってこの子達を探してくれているはず。



「それはいいけど、アテナはどうするの? そのリザードマンは?」


「私はまだこのリザードマンと決着がついていないからね。このままここに放置していっても、私達のいるキャンプまで襲いにくるかもしれない。だから、決着をつけたら戻るから、皆は先に戻って蟹鍋の準備をお願い」



 ファムは溜息をついて、ギーに目を落とした。



「それならここで殺してしまえばいいよ。そうすれば安全でしょ。アテナだってサヒュアッグや他のリザードマンを殺したでしょ?」


「確かにそうだけどさ。助けてしまったものは、しょうがないよ。理屈じゃないんだよね。…………なんていうのかな。どうして助けたのかは、私も咄嗟だったから解らないんだけど、一度助けたからにはちゃんとその責任は果たそうかなって。……ダメ?」

 


 ファムは、今度は呆れた感じで溜息をついた。



「はあ……よく理解できないけど、いいよ。そのリザードマンを倒したのも助けたのもアテナだしね。アテナがそう思うならそうすればいいと思う。冒険者なのに、本当にアテナは変わっているよ」


「あはは……それ、誉め言葉として受け取っていい?」



 そういうと、ファムは苦笑しながらも頷いてくれた。そいえば、師匠にもお前は戦い方においても考え方もユニークだと言われていた。


 だから、モニカと打ち合っても1本も取れないのだと……


 こうしてファムとシャルロッテに、女の子三人とルシエル達の事を頼んだ後、私はこのギーという名のリザードマンと二人だけになり、ここへ残った。


 ギーが目を覚ますまでの間、私は地面に腰を下ろしてちょっと休息をとる事にした。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇モニカ・クラインベルト 種別:ヒューム

アテナの実の姉で、クラインベルト第一王女。セシル王とティアナ前王妃の娘。子供の頃にアテナと同じくヘリオス・フリートに剣術など色々と教わるが、直ぐにその才能の頭角を現す。剣の才能に恵まれ、あらゆる武芸を身に着けている。知識も豊富で、軍略などにも通じている。テトラ・ナインテールとも仲が良かったが今は、クラインベルトの北の果ての城でドルガンド帝国を目の前に防衛に尽くしている。王都にもかれこれ帰っていない。

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