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第222話 『オマエガキニイッタ!』



 片腕を斬り飛ばされた痛みで苦しみ、叫び声をあげる大型のサヒュアッグ。


 私は、二振りの剣を一度鞘に納めると、その大きなサヒュアッグの首まで跳躍し、抜刀した。


 【居合(いあい)】という技で、一度鞘に納めた剣を瞬時に抜いて、目標を両断する。


 サヒュアッグの首は一刀のもとに宙に飛び、先程まで苦しみに歪むサヒュアッグの形相は、何者でもなくなった。



 ズシーーーーン



 首から上が無くなったサヒュアッグの巨体が、音を立てて崩れ落ちる。私は、それと同時に着地すると、ギーに向けて再び剣を構えた。


 それを見て、ギーも剣をこちらに向ける。


 するとまた、この空洞内の外から別の魔物達の雄叫びが聞こえた。考えてみれば、ここはサヒュアッグの巣なのだ。まだまだ残りがいても、不思議ではない。でもこのままじゃ、きりがないよ。



「ギー! ちょっといい?」


「ナンダ、アテナ!」


「サヒュアッグが迫ってきている。このままここにいてもきりがないし、あなただってその足じゃもうまともには、戦えないでしょ? 私も仲間が待っているし、戻りたいの。だからここは停戦しない?」


「テイセン? オレハ、オマエガキニイッタ! ウツクシク、ソシテツヨク、カシコイ! ダカラ、オマエヲクイタイ!」



 うーーん、リザードマンって生まれて初めて話すし、私達と同じ言語を話すこと自体も知らなかった。皆、こんな感じなのかな。



「私は食べられたくないの。ギーだって、食べられたくないでしょ?」


「アタリマエダ」


「じゃあ、一緒でしょ!! 私だって食べられたくないし、死にたくないの! やりたい事だって、沢山あるんだから!」


「ヤリタイコトッテナンダ? ニクヲクラウコトカ?」



 うっ。それは、否定はしない。だって、焼き肉もステーキも大好きだし。


 そんなやり取りをしていると、新たに8匹のサヒュアッグが銛や斧を片手に、この空洞へ入り込んできた。


剣が走る。ギーが2匹仕留めた所で、私も突っ込んで残りの6匹を始末した。サヒュアッグの奇声はまだ聞こえるし、どんどんと新たなサヒュアッグがこの場所へ近づいてきている。



「さあ、もうこんな意味のない問答はいいでしょ? ここから、脱出するって意見は一緒なんだから! 私はここから出て、仲間の後を追うからね」



 そう言い放ち、外に出ようとするとギーは私を狙って剣で刺してきた。


 鋭い突きだけど、片足を負傷しているギーの突きは完全ではなかった。痛みを気にしているのか、思うように動かないのか、どちらにしても踏み込みが甘いし急所ばかり狙ってきていた攻撃にも正確さが失われている。


 私はギーの突きをさっとかわすと、剣でそのギーの剣を叩き落として遠くへ蹴飛ばした。



「これで、剣も盾もない。今回は諦めなさい! じゃあね、私はいくから」


「ギャオオオオオ!!」



 言った刹那、ギーは両手でのしかかるように襲い掛かってきた。


 当初、剣を交えた時は急所ばかりを的確に狙ってくるし、研ぎ澄まされた攻撃に背筋もヒヤとするような攻撃だったが……見る影もない。これはもう、腕力のみに頼った滅茶苦茶な攻撃。



「それはもう、とどめを刺してくれって言っているのと同じよ! そいやっとぉ!」



 伸ばしてきた腕の片方を掴んで、相手の懐に瞬時に潜り込む。そこから勢いよく腰を跳ね上げて投げ飛ばし、そのまま後ろに回って裸絞めを決めた。別名、スリーパーホールドという名のその絞め技は、ギーの首を絞めあげ頸動脈を圧迫し、やがて失神させた。


 ギーは白目を向き、よだれを垂れ流してその場に倒れ込んだ。


 私は溜息を吐くと、両手で自分の顔を思いっきりパンっと挟んで気合を入れると、ギーを抱き起して背負おうとした。



「うわっ!! おっも!! これは、駄目だ!!」



 再びギーを寝かせると、鉄製の肩当やベルトなど重量のある装備を外し、もう一度頑張って背負った。



「ふんぬらばーーーー!!!!」



 鼻血が出るかもって思うくらいに力を入れて、ギーを背負う。これなら、なんとか背負っていけそう。私の腰にもう一度、ちゃんと大事なツインブレイドが装着されている事を確認し、ギーを背負ったまま空洞を出た。



 ひーーーっひーーーっ



 つらいッス!!



 しかし、重すぎる!! リザードマンの中でも、体格のいいギー。いったい何キロなんだろう? そんな事を何度も考えながら、ここへ入ってきた時の通路を辿って歩く。


 途中、何度かサヒュアッグが何匹も通りすがったが、その度に物影に隠れてやり過ごした。


 見覚えのある通路。


 もう少しで、泳いで入ってきた入口があった場所に着く。重量級のギーを背負って歩き続けた為、両足がもう疲労でプルプルと震えていた。でも、もう少し! 私の足、もう少しだから、頑張れ!!



「アテナーー!! ここだ!」


「アテナ、やっと来ましたわね。ここですわ!」


「アテナさん!!」



 聞きなれた私を呼ぶ声。ファムにシャルロッテ。それに、メールとユリリアも――皆、無事だった。


 周囲を見ると、何十匹ものサヒュアッグが転がっていた。4人とも、私が来るのを信じてここでサヒュアッグ達を喰いとめて待っていてくれたんだ。



「皆、ありがとう! 助かったわ。それじゃ、脱出しよう」



 脱出するには、このサヒュアッグの巣に入ってきたルート。地底湖にあった水中洞窟を通らなくちゃならない。でも、今度はファムが暗闇を照らせるという事が解っているし、問題はない。


 水に入ろうとする私に、メールとユリリアが悲鳴を上げた。そして、ファムとシャルロッテも「え?」っと驚いた。


 そう。皆の驚きは、私が背負っている1匹の屈強なリザードマンに向けられていた。


 ……まあ、当然の反応だよね。あはは……

 





――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇居合 種別:剣術

アテナやヘリオス、キョウシロウの使用する技。剣を鞘に納めた所から瞬時に抜刀し、相手を一刀のもとに高速で両断する剣術。凄まじい抜刀術だが、発動するのにタメをつくらなければならない。

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