第221話 『剣技! 絶ち斬り鋏』
壁や天井に小さく細かいライティングストーンが入り込んでいるのか、空洞の中もそうだけどサヒュアッグの巣の中全体が、わりと明るかった。
この巣に入る時に潜った地底湖の水中洞窟は、真っ暗だったけど、ここでは懐中灯や松明など無くてもわりと周囲を見渡せる。
だから、この空洞へ魔物達が雪崩れ込んできた時に、その数も70~80匹位はいるなと瞬時に見て解った。
そして同時に、その魔物達がリザードマンではなくサヒュアッグだという事も確認できた。
ギャギャーーー!!
私よりも出口に近い位置にいたギーがまず、何十匹ものサヒュアッグに一斉に襲い掛かられた。
「ギャハハ! サヒュアッグハ、ミナゴロシ!!」
サヒュアッグの銛や、爪攻撃を盾で防いで剣で返す。
ギーが剣を横一線に払うと、一度にサヒュアッグの首が3つ飛んだ。しかし、サヒュアッグは仲間の死をものともせずに次々とギーに襲い掛かる。ギーに腹を貫かれながらも、掴みかかり動きを止めようとするサヒュアッグ。
「グ! ハナレロ!! グッフウ……」
四方からの一斉攻撃が続き、ついに1匹のサヒュアッグがギーの大腿部を、銛で突き刺した。どちらにしても、ギーがやられたら次は私が襲われる番だ。
私はギーの方へ飛び込むと、ギーの太腿を突き刺したサヒュアッグの首を刎ね、その隣にいたサヒュアッグ達も斬り倒した。
ギャッギャ!!
サヒュアッグの攻撃目標が、ギーから私にかわる。私はサヒュアッグ達に剣を突き付けると、魔法を詠唱した。
「稲妻よ! 魔物達を貫け!! 《拡散雷撃》!!」
ギャーーーッ!!
魔物達に突き付けた剣から稲妻が迸る。
それは電撃となって辺りに広がる様に拡散し、迫りくる無数のサヒュアッグを感電死させた。
もちろん、この魔法を使用したのは、サヒュアッグの弱点が稲妻だとちゃんと理解した上での事だった。サヒュアッグとの戦闘は初めてだけど、私には本で読んだ知識がある。知識は力なりってね。これで、ここに突撃してきたサヒュアッグは、殆ど倒した。
ギャッギャッギャーーッ!!
……かに思えたんだけど、今度は通常のサヒュアッグよりも巨大なサヒュアッグが現れた。トロル程の大きさを有しており、ぎりぎり空洞に入る口を通過すると、私とギーを逃がさないようにそのまま出口に立ち塞がった。手には大きな石斧。
エクステッドボルトで倒しきれなかった残りのサヒュアッグを、ギーが仕留めていく。しかし剣を振り、攻撃を避ける動作その全てが貫かれた大腿部の傷が痛んでいる様子で、ギーの顔は動く度に苦悶に歪む。
「グググ……」
「ギー!! 大型のサヒュアッグが、そっちに!!」
叫んだ。ギーと目が合う。
大型のサヒュアッグは、自分の身体に合った巨大な石斧をギー目掛けて振り下ろした。ギーはその攻撃をなんとか飛んで避ける事ができたが、足を負傷している為、上手に着地できず突っ伏した。
ドーーーーンッ
避ける時に放り出したギーの盾は、サヒュアッグの一撃で粉砕され真っ二つになって、その衝撃で破片が飛び散った。
私は駆けると、急いでギーを抱き起し大型のサヒュアッグから距離をとった。
「ナンノマネダ⁉ アテナ! オレハ、オマエヲクウ! ナノニナゼ、タスケル?」
「さあ? 深い意味なんてそんなのないよ。ギーは足をやられているし、このままだとあのサヒュアッグに潰されちゃう。そう思っただけだよ」
「オマエハ、ユウカンナツヨイセンシ、ソウオモッテイタガ、ジツハバカナノカ?」
「あら。どうして、私が馬鹿なのよ」
「アテナヨリ、アノサヒュアッグノホウガ、キョウテキ。ダカラマズ、サヒュアッグヲシトメル。ソシタラ、ツギハアテナ、オマエノバンダ。サヒュアッグヲコロシ、アテナモコロシテ、アテナヲクウ。ギャハハ」
「そう。それならそれでいいけど……一つ勘違いしているみたいだから教えておいてあげるけど、あのサヒュアッグより私の方が強いわよ」
「ウソダ。イクラツヨクテモ、オマエノヨウナコムスメガ、アンナバケモノニカテルワケガナイ」
ギーと問答を繰り返していると、大型のサヒュアッグはまた私達に向けて攻撃してきた。今度は、巨大な石斧を横なぎに放ってきた。
――嘘!! 私一人ならジャンプして避けられるけど、ギーを抱えてなんて無理。かと言って、助けてしまった手前、今更見捨てる訳にもいかない。
ほれ、見た事か! っと笑う、ギー。
「しょうがない!! こなくそーーっ!! 《全方位型魔法防壁》!!」
防御魔法。光の幕が私とギーを中心にドーム状に覆った。そこへ、物凄い石斧の一撃がきた。
ガアアアアアアンッ!!
衝撃。打撃音と破壊音が重なり、サヒュアッグの振った石斧は自分の放った破壊力と、全方位型魔法防壁の絶対的な硬さで砕けて飛んだ。
へっへーん。私の全方位型魔法防壁は、爺直伝の超強力防御魔法。そんじょそこらの全方位型魔法防壁より強度も高い。そんな簡単に打ち砕かれる訳がないのだ。ギーもこれには、言葉を失っている。
大型のサヒュアッグは、破壊されて武器として使えなくなった石斧を投げ捨ていると、思いっきり振りかぶり、私目掛けて拳を放ってきた。
大きいだけあって破壊力はありそう。私なんかが、まともにこの攻撃を喰らえば生きていたとしても全身の骨がバキバキに砕けてしまうだろう。でも、誰かが言ってたっけ?
――あたらなければ、どうという事はないってね!
サヒュアッグの繰り出したパンチを、さらりと避けると二刀流に構えた剣を重ね合わせて同時に払う。交差させて、まるでハサミのように斬り刎ねると、サヒュアッグがパンチを繰り出した方の腕が、切断され宙を飛んだ。血飛沫。
「剣技!! 絶ち斬り鋏!!」
ギャアアアアアア!!
断末魔の叫びが、空洞に広がる。赤い雨。
大型のサヒュアッグの斬り飛ばされた腕からは、大量の血が吹き出し、空洞内に雨のように降り注いだ。
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〚下記備考欄〛
〇キングサヒュアッグ 種別:魔物
半魚人の魔物サヒュアッグのボス。通常のサヒュアッグよりかなり大きく、大型のトロル位のサイズがある。もちろん、その身体に比例して桁外れの耐久力とパワーを有している。また、岩で作ったような巨大な石斧を武器にもするので、討伐するならとんでもなく危険な魔物。更に数多くのサヒュアッグを従えている。
〇絶ち斬り鋏 種別:剣術
二刀流に構えた剣を重ね合わせ、交差させてまるで巨大なハサミのように斬り刎ねる技。
〇拡散雷撃 種別:黒魔法
中位の雷属性魔法。放射線状、広範囲に強力な電撃を放つ魔法。弱い相手なら、痺れさすどころか感電死させる程の威力がある。
〇全方位型魔法防壁 種別:防御系魔法
強力な防御系上位魔法。自分の周囲にドーム状(実は球体)の光の幕を張り、物理攻撃や炎や冷気などの攻撃も防ぐ。とても強固な防御魔法。




