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第220話 『VSリザードマン』



 メールとユリリア。二人の悲鳴が聞こえたその時だった。二人に襲い掛かろうとしたリザードマンの腕に、ロープのような物が巻き付いて拘束した。


 振り返ると、そこには見慣れ始めた金髪縦巻きロールの美女が、鞭を持って立っていた。



「シャルロッテ!」


「暫く入口周辺でサヒュアッグ達を蹴散らしていましたけど、遅いので何かあったのかと思ってきてみましたわ」


「コノオンナモ、ツヨイ」


「シャルロッテ!! 逃げて! 今度はそっちにリザードマンが襲い掛かってくるわ!!」



 叫んだと同時にリザードマンは、今度はシャルロッテに向かって剣を振り下ろした。寸での所で前転して避けると、リザードマンの腕に巻き付いている鞭を引っ張る。その勢いでリザードマンは突っ伏した。



「オーーッホッホッホッホ!! あまいですわよ。これで、終わりですわ」



 シャルロッテは、鞭と同じくベルトに装着していたナイフを取り出すと、突っ伏したリザードマン目掛けて振り下ろした。


 刹那、リザードマンは素早く反転しつつも腕から鞭を外し、仰向けになっている状態から一気に起き上がってシャルロッテに向けて剣を薙いだ。



「オワリハ、オマエダ!」


「へ?」



 ギィィイン!



 シャルロッテの方へ大きく跳躍し、あわやの所でリザードマンの剣を受ける事ができた。攻撃が失敗するやいなや、リザードマンは横転して盾を拾うと、再びこちらへ剣と盾を向けて構えた。



「な、なんですの? このリザードマン! 強すぎませんこと!」


「そ、そうね。だから、手をやいているのよ」



 向こうから何か新たに、魔物の叫び声のようなものがきこえる。


 きっと、この場所へ新手のサヒュアッグかリザードマンが向かってきている。早く脱出しないと、こんな強いリザードマンが他にも現れたら、とてもじゃないけどこの子達を守り切れるか解らない。



「ファム! シャルロッテ! その子達を連れて先に逃げて!」


「え、そんな? アテナはどうするの?」


「私はこのリザードマンをここで喰いとめる。誰かが喰いとめないと、全員無事に脱出って訳にはいかないでしょうしね」


「それでしたら、わたくしも残りますわ」


「ダーメ。シャルロッテもファムと一緒に先に脱出して。メールとユリリアを、ここから無事に出られるように守ってあげて」


「でも、それじゃ……」


「いいから行って! 早く! ファムだけじゃ二人は守れないかもしれない。それに更に魔物達がここへ向かってきているわ。急いで!」



 しっかりと目を見て伝えると、シャルロッテとファムは納得した。そして、メールとユリリアをお連れて空洞の外に出て行った。


 遠くに駆けて行く4人の足音。ファムの攻撃魔法を詠唱する声が聞こえた。新手はもうそこまで迫ってきている。うーーん、このリザードマンだけでも、ちょっと手間取っているのに……これは、まいった。さっさと手早く決着をつけて私もファム達の後を追わないとね。


 気合を入れた瞬間、リザードマンが先に動いた。


 盾で豪快に殴り掛かってきたのでバックステップで後ろへかわす。それをよんでいたかのように、私が避けきった所をリザードマンは剣で突いてきた。狙いはやはり、急所。左目に剣の切っ先が迫る。



「うわっ!!」



 ぎりぎり避ける事ができたが、僅かに頬を掠め血が滲んだ。


 私は態勢を整えると、二刀流で構えた。



「急所ばかりを狙ってくるし、そのうち事故が起きても面白くないから、ここからは本気でいくわ」


「ギャハ。イママデハ、ホンキデハ、ナカッタト?」


「そうよ。戦いに夢中になってしまったら、さっきみたいにあの子達を守らなきゃいけないのに、それが疎かになってしまうわ。でも、今は1対1。悪いけど、急いでいるし、思いきり行かせてもらうわ」


「ギャハハ! ホザケ! カトウナニンゲンノメスナド、ショセンオレノテキデハナイ!!」



 リザードマンが再び突っ込んできた。


 盾攻撃と剣攻撃。それを真正面から二振りの剣、ツインブレイドで受けては攻撃を返して応酬を繰り広げる。徐々に剣撃のスピードを上げていく。すると、最初は私とまともに打ち合えていたリザードマンも、攻撃を完全にかわせなくなっていく。


 やがて私の攻撃は相手を上回った。リザードマンの腕や足、胸それに顔などに傷がどんどん増えていき、血が辺りに飛び散る。



「私は、敵をいたぶる趣味はないからね。次で終わりにするわ。覚悟して」


「シンジラレン! ニンゲンノメス!! コンナニモツヨイ、ニンゲンノメスガイルトハ!!」


「ちょ、ちょっと人間の雌って呼ぶのやめてくれない? なんか、それ嫌だよ。私の事を強いって認めてくれるのなら、ちゃんと敬意を払いなさい。そうでしょ?」



 言われたリザードマンは、一瞬黙る。そして驚く事を言った。



「デハ、ナヲオシエロ! オマエノナガ、シリタイ!」


「なんだ? ちゃんと、そういう考え方ができるんじゃない。私の名前はアテナ。冒険者のアテナよ」


「アテナ……アテナ……イイナダ。アテナ。ソレニ、ウツクシイ……サラニ、ツケクワエルナラバ、ウマソウ」


「ありがとう。ははは、美味そうは余計だけど。じゃあ、あなたの名前も聞いておこうかしら。あなたのように会話のできるリザードマンと会ったのも初めてだし、私とここまで打ち合えるその強さに、私も敬意を表するわ」



 リザードマンの表情に、一瞬笑みのようなものを感じた。



「オレノナハ、ギー。リザードマンノセンシ。イダイナリュウノイチゾクノ、マツエイダ」


「竜の一族の末裔、戦士ギーね。覚えたわ」



 ギャギャギャアーーーー!!



 ――!!



 お互いに挨拶をし終えた所で、ギーと戦いを繰り広げていたこの空洞に魔物達が次々と雪崩れ込んできた。


 不味い! ギーだけでもまだ倒し切れていないのに、更に仲間が現れたとなると、ちょっと不味いかも。


 額から流れる汗が頬を伝う。すると、ギーに斬られた頬の傷に汗が染みて、ピリっとした。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇ギー 種別:リザードマン

人型の蜥蜴の魔物リザードマンのリーダー。大きな鋸のような剣に、スモールシールドを装備し、マントを羽織っている。アテナやシャルロッテが驚く程の剣の腕を持っており、しかもその繰り出す攻撃は急所ばかりを狙ってくるという実践的な戦術。ギーは、誰からそれを教わったという訳ではなく幾人ものリザードマンや冒険者などと死闘を繰り広げ、今の剣術を手に入れた。知識も非常に高く、人の言葉を理解し喋る事もできる。

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