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第219話 『竜の一族』



 最初パッと見た時は、フォルムも似ているので半魚人サヒュアッグの亜種か何かだと思った。しかし違った。


 私達のいる空洞に雪崩込んできた魔物、それはなんとリザードマンだった。


 所々が鋸のような形状になっている切れ味の良さそうな大きな剣。それに青銅製の防具に、鉄製のスモールシールドを装備しているものもいる。ゴブリンやオーク、サヒュアッグよりも統制のとれたこの手強い感じ。


 サヒュアッグの巣を襲っていたのは、リザードマン達だった。



「ギャオオオオオ!!」



 私達の姿を見たリザードマン達が、雄叫びを挙げて威嚇してきた。盾を構え、剣の先はこちらを向いている。残念だけど、とても友好的な感じじゃないみたいね。



「ひいいい!! ど、どうしよう!」


「ア、アテナさん。ファムさん。私達、助かりますか?」



 メールとユリリアの顔は、絶望に満ちていた。


 リザードマンの数は、今ここにいるだけでも40匹位はいそう。しかも、フル装備。普通の冒険者なら、逃げ場も塞がれ地底湖の底の洞窟とくれば、もう全滅を覚悟するシチュエーションかもしれない。だけど、私はただの女冒険者じゃない。


 伝説のSS級冒険者、ヘリオス・フリートの自慢の弟子なのだから!!


 この位、何とかして見せる。そうじゃないと、師匠に怒られる。


 私は二人を励ました。



「大丈夫! この程度のリザードマンなら問題ないよ。あなた達は後ろにさがって。そして、自分達の身を守る以外では、絶対に攻撃をしないで。もしもリザードマン達の標的があなた達だけに絞られて、一斉にこられたら、いくらこの私でも絶対に無傷で守り切るって事ができなくなるかもしれないから」


「は、はい!!」


「わ、解りました!!」



 二人は震えながら返事をした。この場にルシエルがいてくれれば、どれ程心強いか。でも、泣き言を言っていられない。


 そうよ、この程度じゃ問題ない。それにファムだっているんだから。



「ファム! いける?」


「うん。いけるけど、一斉にこられたら面倒だ。アテナには悪いけど、速攻で片付けさせてもらうよ」


「え? 速攻? 片付ける?」



 ギャオオオオオ!!



 何匹かがこちらに向かって剣を振り上げると、向かってきた。ファムは両手を合わせ前に突き出すと得意の風属性魔法を詠唱し発動した。



「折角登場した所で、大変申し訳ないけど速攻で方をつける!! ……風よ、我の力と成りて舞い上がれ!! 《風撃大噴火(ブローアップショック)》!!」



 範囲魔法。緑色に光る魔法陣がリザードマン達の足元に浮かび上がる。そこから上に向けえ強烈な風が巻き起こった。


 強風はリザードマン達を一瞬にして舞い上げて、洞窟内の天井部分に打ち付けた。



 ギャアアッ!!



 天井に強打したリザードマン。武器や盾など、ボロボロと上から落ちてくる。40匹以上いたリザードマンは、あっという間に1匹を残すだけになってしまった。



「う、嘘でしょ? 信じられない……と、とんでもない魔法だね、ファム」


「ファムの奥の手だからね。だけど、ファムの風撃大噴火(ブローアップショック)をぎりぎり回避した奴が1匹残っているよ。気を付けて、間違いなくあいつは別格だよ」



 あのファムの攻撃を、ぎりぎりでも避ける事ができたリザードマン。見ると、他のリザードマンとは装備も姿も少し違っていた。


 まず、マントを羽織っている。キングとかじゃないと思うけど、リーダークラスなのかもしれない。



 ギャッギャー!!



「動きが速い! ファム、さがって!」


「え? ちょっと待っ……」



 ガキンッ



 ギャギャギャ!



 思いっきり地面を蹴ってファムの前に飛び出し、リザードマンの攻撃を二振りの剣で受け止めた。いくら私の方が、スキルもスピードも上だと言っても腕力はリザードマンの方が遥かに上。攻撃が重い!!


 しかし、間一髪だった。あと一瞬遅ければ、ファムが斬られていたかもしれない。それ程、このリザードマンは強い。



「ギャギャ! ヤルナ、ニンゲンノオンナ!」



 げげっ! 喋った!! 嘘!! さっきから、驚いてばかりだけど、リザードマンって喋るの? 



「ファム!!」


「うん、喋ったね! 人の言葉を話す魔物はいるけど、それでも喋るリザードマンは初めて見た」



 ルキアにプレゼントした色々な魔物が記された本にも、リザードマンの事は記されている。だけど、リザードマンが話せるとは書いてなかったし、私自身もサヒュアッグと同系列の魔物だと思っていた。


 でもサヒュアッグは半魚人、リザードマンは蜥蜴の人型の魔物。同じ人型で、なんとなく水辺にいる感じもするし似ているというだけで、よく考えてみればぜんぜん異なる魔物だ。


 ゴブリンの性格の特徴は醜悪さで、オークは貪欲さと言われる。だけどリザードマンは自分達の事を蜥蜴ではなく、竜の一族だと思っている節がある。つまり他の人型の魔物に比べて、尊厳を持っているような気配があるのだ。だから、戦い方においてもゴブリンやオークを相手にするのとはまた違ってくる。


 そして一斉に攻撃を仕掛けてくると言っても、バラバラに襲ってくるゴブリンや、オーク、コボルト達と比べ統制が取れているのも、リザードマンならではのもの。そう言った事を考慮して考えれば、人の言葉を喋る個体がいても納得はできると思った。



「ダガ、ココデシネ!! オマエハ、オレガクウ!」



 ヒュンッ!



「危ないっ!」



 再びリザードマンの攻撃。


 その動きは素早く、剣速は速くて正確に急所を狙ってくる。


 首を狙ってきたかと思うと手首を狙い、それをかわすと股下から剣を斬り上げてきた。なんとか避けてるけど、攻撃のほとんどが急所攻撃だ。だから、次々と繰り出される攻撃を避ける為に消費する集中力も半端ない。


 それに、このリザードマンの表情。なんとなく、笑みがあるように思える。……余裕があるって事なのだろうか。……もしくは、戦闘を楽しんでいる。



「アテナ、助太刀する」



 ファムがそう言うと、リザードマンは私に向けて盾を突き出し打ち付けると、メールとユリリアの方へ向かって全力で走り出した。


 まずい、このリザードマン! 頭も凄くキレる!!



「メール! ユリリア! リザードマンが標的をそっちへ変えた! 魔法でもなんでもいいから、身を守って!!」



 そう叫びながら立ち上がると、リザードマンの後を追って走った。


 ――――お願い!! 間に合って!!







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇リザードマン 種別:魔物

人型の蜥蜴の魔物。好戦的で人間を襲うが、自分達の事を竜の一族だと思っていて、戦士や兵士としての生き方をしている者が多い。鉄の剣や、槍、盾など装備している者もいて強い。群れには必ずリーダー格がいる。知識の高い者もいて人間の言葉を喋る個体もいる。因みに、竜の一族といえばドラゴニュートという一族がおりそれは紛れもなく竜人だが、リザードマンはあくまでも蜥蜴の魔物である。


風撃大噴火(ブローアップショック) 種別:黒魔法

上位の、風属性魔法。広範囲の場所に狙いをつけて風の魔法陣を展開し、その範囲内にいるものを強烈な突風で上空へ吹き飛ばす。

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