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第217話 『半魚人の巣 その1』




 陸があった。地底湖の底にある洞窟を進むとその先に、陸は確かにあった。そしてそこは、空気のある場所でもある。


 水面から顔を出すと、陸にシャルロッテが先にあがろうとしたので、慌てて水着を掴んで水の中へ引き戻した。



「痛い痛い!! 痛いですわ、そんなに急に水着を引っ張らないでくださる!」



 不可抗力だけど、行き成り強引に水着をひっぱたせいで水着が思いっきりシャルロッテのお尻に喰い込んだみたい。それで、怒っている。


不可抗力だけど、我ながらルシエルみたいな事をしてしまったと深く反省。でも、もうここから奴らが見えているのだ。



「ごめん、ごめん。でも、ほらあそこ。3匹いる」



 今確認できる数が3匹というだけで、奥にはもっといるだろう。もうここは、サヒュアッグの巣なのだろうから。



「本当ですわね。それでは、これからどうしますの? 強行突破であの捕らえられている子達がいる場所まで、一気に駆け抜けて助けるって方法もありますわ」


「確かにそれでもいいかも。時をかける程、生存確率は少なくなる。早くあの子達の無事を確認したいし、助け出してあげたい」



 そういうと、ファムが私の肩をポンと叩いた。酸素供給の為だったとはいえ、先ほどファムとは口づけを交わしてしまったので、思い出して顔が熱くなってしまった。



「ルシエルもルキアも言っていたよ。アテナは腕も立つし頭もいいけど、誰かのピンチに直面して助けないとって時に、自分の安全を疎かにしてしまうって。特に助ける相手が一刻を争う状態の時、自身の状況が見えなくなる場合があるって」


「えーー。あの二人がそんな事を⁉ まさか、そんな心配をされていたなんて……」


「うん、だからファムは注意してアテナを見てた」



 うっうー。そんな事をあの二人は、ファムに言っていたんだ。嬉しいような恥ずかしいような。でも、ルシエルやルキアが私の事をちゃんと見てくれていて、心配してくれていたって事は素直に嬉しい。



「あの子達の安否が不明だから焦る気持ちは解るけど、自分の事もちゃんと守らないと駄目だよ。このまま突っ込んでいって本当に大丈夫?」


「確かにそうだね……うーーん、じゃあどうしようか。私が囮になるから、その間に二人はすり抜けて彼女達が捕らえられている場所を見つけて助け出してくれる?」


「それでしたら、囮役はこのシャルロッテ・スヴァーリに任せてくださるかしら」



 シャルロッテの目を見ると、本気のようだった。腕にも自信があると言っている。私はシャルロッテに囮役を任せ、ファムと二手に分かれてあの子達を見つけ出して救出する作戦で行く事にした。



「それじゃあ頼んだわよ! シャルロッテ!」


「オーーーホッホッホッホ。まあ大船に乗ったつもりでいなさい。それより、そちらこそ気を付けなさい」



 シャルロッテはそう言うと、ザバーっと勢いよく陸にあがり、向こう側を歩いているサヒュアッグ目掛けて走り始めた。そして腰から、革の鞭を取り出すと勢いよく地面を打った。石礫が飛ぶ。



 ギャギャッ!!



 サヒュアッグ達がシャルロッテの存在に気付く。すると、奇声を発して3匹が一斉に襲い掛かってきた。


 本当に大丈夫? そう思った刹那、シャルロッテは鞭をもう一度地面に叩きつけると向かってくるサヒュアッグ目掛けて連続で放った。



 ギャギャギャーーッ!!



「オーーホッホッホッ!! さあ、来なさい!! わたくしが相手をしてさしあげますわ!」



 高速で放たれる鞭――つるべ打ち。執拗に連続で鞭を浴びせられるサヒュアッグ達は、たまらず地面に倒れ込んだ。


 しかし、更に洞窟の奥から、奇声が聞こえてくる。今度は何十匹とこちらへ向かってきた。シャルロッテは、それを目にしても特に動揺する様子はなく、先頭にいるサヒュアッグの首に鞭を巻き付かせると、引っ張って岩に叩きつけた。


 そしてその返す刀で、その辺に転がっている拳大のサイズの石を鞭で巻き上げて、別のサヒュアッグへ投げつける。石が顔面に命中したサヒュアッグは悲鳴をあげて倒れた。



「オーーーホッホッホッホッ!! この程度の強さと数じゃ、わたくしにはかないませんことよ!! さあ、どんどんいらっしゃい!」



 シャルロッテの鞭さばきは、見事なものだった。これをあの鋼鉄鞭を使ってやれば、どうなるんだろう。


 ふとそう考えるとシャルロッテが本当に強いのだと悟った。しかも、これはお互い様だしファムやミューリだってそうだけど、まだまだ底があるような気がする。シャルロッテの強さには、まだ先がある。



「アテナ。いい感じにサヒュアッグ達がシャルロッテに釘付けになっている。そろそろ行った方がいいと思うよ」


「そうだね。じゃあ、あっちとそっち。二手に分かれてあの子達を見つけ出そう」


「うん、了解」



 シャルロッテの鞭の打撃音と、サヒュアッグ達の雄叫びと悲鳴。投げ飛ばされ岩と激突する音。


 叩きのめされていくサヒュアッグ達の悲鳴を聞きながら、私は巣になっている洞窟の奥へと走り出した。


 少し走ると、サヒュアッグ達の普段使用している道具や、生活感のある物などが目に入る様になってきた。何処からか集めて来た木や枯草を利用して作った、サヒュアッグ達の家のようなものも所々にある。


 更に奥にいくと、洞窟内にもよく見かける横穴――それを利用した牢を見つけた。固い木を何本も並べて格子にしている。この中に捕えられているんじゃ――駆け寄り奥まで聞こえる声で呼びかけた。



「メール! ユリリア! ここにいるなら返事して!! 助けに来たわ!!」


「……あ! 地底湖でキャンプしていた冒険者のお姉さん!」


 

 良かった! 見つけた!!



「アテナよ。あなた達を助けに来たの。あなたの名前は?」


「私はメール。別の場所には、ミリーとユリリアが捕まっているの。どうか二人も助けてください!」


「大丈夫。ミリーは既に助けたわ。あとは、ユリリアね」



 私は剣を抜くと、メールを閉じ込めていた木製の格子を斬って破壊した。これでミリーに続いて、メールを救う事ができた。


 次はユリリアね。私は、メールの手を握ると再び洞窟内を駆けた。

 







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇皮の鞭 種別:武器

獣の皮などで、作られた鞭。シャルロッテが使用しているものは、何かの魔物の皮で作られた鞭のようだ。皮の鞭自体は非常にポピュラーな武器で、冒険者の中では好んで使用する者も多い。特にトレージャーハンターに多いようだ。

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