第215話 『捜索 その2』
ルシエルとミューリは、地底湖にザブンと飛び込むと泳いで行った。
シャルロッテの連れていたメイド達も、水着に着替えてその後を追っていく。行方不明の3人の女の子冒険者を捜索する為だ。
私とファム、シャルロッテもルシエル達とは別方向へ捜索へ向かい、地底湖へと飛び込んだ。
ある程度目星をつけて、そのままどんどん泳いでいると、遥か後方から悲鳴にも似た声がした。
「あ、あぶ! あぶぶ! ま、ま、待ってくださる! ちょっと待ってくださいます!!」
振り返ると、シャルロッテがゆっくりと泳いで私とファムの後を追ってきてる。しかも、犬かき。私はそれを見て自分の目を疑った。
「はあ、はあ、はあ! ちょっと待ってくださいます!」
ファムが呆れた顔で言った。
「もしかして、貴族令嬢は泳げない?」
「なっ! なっ! なんですの!? その何かの小説のタイトルみたいなのは!! し、失礼ですわ。ちゃんと泳げていますでしょ!!」
「犬かきだけどね」
ファムが絶望しているような口調で言った。でも私は、必死に犬かきで泳いで後を追ってくるシャルロッテを見て、物凄く可愛いと思った。
そう、何かこの犬かきを必死にしているシャルロッテと同じようなものを私は知っている。――カルビだ。シャルロッテの必死に犬かきする姿が、カルビと重なった。金髪縦巻きロールのカルビ!!
――――可愛い!
「ま、ま、待ってくださいますーう?」
「これさ、もしかしてシャルロッテを連れて行く方がリスクが大きくならない? ファムとアテナだけで捜索した方が……」
「なりませんわ! 後できっとわたくしがいて良かったと思うはずですわ。さあ、先へ急ぎましょう。助けを待っているのかもしれないのでしょ?」
バシャバシャバシャバシャ……
溜息を吐くファムと、大笑いする私。しょうがないので、必死についてくるシャルロッテの両手を二人でそれぞれ掴んで、牽引しながら地底湖を前に進んだ。
20分程、泳いでいるとシャルロッテが何かに気づいた。
「あれ! あれ、何かしら?」
「あれ、あの子達じゃないかな! 行ってみよう」
湖に浮かんでいるように水面から突き出た岩場。そういうのが、そこいらじゅうにあって、その中の一つに女の子が仰向けになって寝転がっていた。私達は急いでその子のもとへ行って呼びかけた。
「大丈夫! しっかりして!」
「うっ……」
意識を取り戻した。膝や腕に、切り傷と擦り傷があり出血したあとも見て取れた。私は、その子を抱き起して回復魔法をかけた。
「癒しの力よ、彼女を癒したまえ! 《癒しの回復魔法》!」
暖かく優しい光が、女の子を包み込んで癒す。
「大丈夫? 他の子達は?」
「サ……サヒュアッグ。……私達、地底湖で泳いでいたらサヒュアッグに襲われて」
「サヒュアッグ? サヒュアッグってあの半魚人の魔物のこと?」
女の子は、頷いた。
「はい。そうです。私の名前はミリー。一緒にいた二人は私の冒険者仲間の、メールとユリリア。私達、この地底湖で泳いでいたらいきなりサヒュアッグに襲われて……それでその後、巣と思われる所に連れていかれて……私だけなんとか逃げ出せたんですけど、途中で追手がやってきて……」
「撃退できたけど、ミリーも怪我を負ってしまったってことね。いいわ! ミリー、ここでもう少し待っててくれる?」
「はい、でも……」
「大丈夫。あなたの仲間を助けに行ってくる。ファム、お願い」
「うん、任せて。《風の探知魔法》!」
ファムは、掌を上に向け探知系風魔法を詠唱した。この探知魔法は近くにいる生物を探し出せる。
例え、探知したのがメールやユリリアではなかったとしても、サヒュアッグであれば見つけてつけていけば2人のいる巣に辿り着けるかもしれない。
……いや、待って。そもそもミリーは、二人がいる巣から逃げて来たのだから、そのミリーにそれを聞けばいいのか。
「ファム……」
「うん、解ってるよ。もしかしたら、二人もミリーのように逃げ出している可能性や、別のサヒュアッグがミリーを迫ってきているかもしれない。だから一応用心の為……だと思ったんだけど。それで、いいんだよね?」
「はい……それで、お願いしますー」
私は頭を摩って俯きざまに、申し訳なさそうに答えた。まったく、ルシエルがこの場にいなくてよかったよ。なんでか、特にそういう私のポカを察知する能力に長けているんだよね、あの子は。
……実は114歳のルシエルに対して、あの子呼ばわりしてしまった私。フフフ。
「じゃあ、ミリーはここで待ってて。一人で帰れそうなら、先にキャンプへ戻ってもらっていてもいいけど――そうするのであれば十分に気を付けてね」
「はい。じゃあ、メールとユリリアの事、よろしくお願いします」
「うん、必ず!」
サヒュアッグの巣があるだいたいの位置を聞いて、ミリーと別れた。
なんにしても、まず一人、無事が確認できてよかった。やっぱり、救助が必要な状態に陥っていたんだ。
「なんとしても、助け出さないとね」
「もちろんですわ。このシャルロッテ・スヴァーリが本気になれば、サヒュアッグなど襲るるに足りませんわ。オーーホッホッホ」
「ファム達に引っ張られて、犬かきで泳ぎながらそんなセリフを言っても、説得力がない」
「いいのですわ。わたくしが活躍するのは、これからですから。オーーホッホッホ」
なんだろう。事は一刻を争っているのに、緊張感がない。このパーティーに問題があるのかな。そんな事に思いを巡らせつつも再び私達は、残る二人の救助をするべく先を急いだ。
ミリーが指した方角。突き進むと、洞窟が見えて来た。洞窟って言っても、それは地底湖の水底にある。ミリーの話では、この洞窟の奥を進んだ先に陸上があるとのこと。
だからそこまで行けば、空気だってあるだろうし……ミリーだってそこから泳いで逃げて来たのだから、私達もそこまで泳いで辿り着けるはず。
うーーん、でもこのまま素直に真っ直ぐ侵入してもいいのだろうか……まあ、でも行くしかないんだろうけど、さてどうしようかな。
私は少し不安になって、ファムとシャルロッテの顔を見た。
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〚下記備考欄〛
〇サヒュアッグ 種別:魔物
半魚人の魔物。好戦的な魔物で、人を見ると集団で襲ってくる。縄張り意識が強く縄張りに侵入するものは、決して許さない。鋭い爪や牙で襲い掛かってくる上に銛などの武器を装備している。
〇ミリー 種別:ヒューム
メールとユリリアと3人でパーティーを組み、冒険者をしている。活発な感じの明るい可愛い女の子。
〇メール 種別:ヒューム
ミリーとユリリアとは、仲良し3人組。冒険者。少しお調子者な雰囲気もあるけれど、物凄く気が使える女の子。
〇ユリリア 種別:ヒューム
ミリーとメールとは、気が合い仲良くなってパーティーを組んだ。冒険者。大人しい知的な感じの女の子。
〇犬掻き
泳げない人も、これなら泳げるという人も多い、素晴らしい泳ぎ方。カルビは、もちろんこれで泳ぐ。アテナは、その姿を可愛いと思ってはいるけど、カルビ自身は本気です。
〇癒しの回復魔法 種別:神聖系魔法
黒魔法とは異なり、怪我など癒すことができる魔法。クレリックやプリースト、シスターなどの聖職者が一般的には使用できる。
〇風の探知魔法 種別:黒魔法
中位の風属性魔法。掌に風でできた球を発動する。それを見る事によって、近くにあるお宝や敵の場所の索敵、ダンジョン内でのマッピング等々できる、冒険者なら是非使えるようになりたい魔法。




