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第214話 『捜索 その1』



 焚火を三カ所作り、それぞれに大きな鍋を火にかけた。


 私にルシエル、ルキアとカルビ、ミューリにファム。そこへシャルロッテと4人のメイドさん。


 更に、初々しい向こうでキャンプする女子3人組が加わる。ざっと14人前? しかも私も結構食べるけど、ルシエルもかなりの食いしん坊だから、これ位食事を用意しないととてもじゃないけど賄えない。


 蟹鍋の他にも、実はもう一品用意していた。今日、薬草などを採取しに行った場所で倒した大蛇である。

 

 あの吹き抜けのあった場所で、大蛇をキャンプまで持ち運べるように解体していた。首を斬り落とし、血抜きをして皮を剥ぐ。肉はぶつ切りにしたものを、更に持ち運びやすいように四等分にカットした。


 その大蛇の肉を塩と香草で少し揉んでから水で洗い落とし、臭みを抜いてからフライパンでオリーブオイルを引いて焼く。


 味付けは、塩と胡椒に、薬味に再び香草を使用。両面焼きあがった所で、ルシエルに食べさせた。蛇と聞いてシャルロッテが顔を顰める。



「へ、蛇ですって!? わたくし、蛇は苦手ですわ」



 シャルロッテがそう言い終わると同時に、ルシエルが声を張り上げた。



「うまーーーい!! こりゃ美味い!!」


「そう、良かったーー。こんな大きいのは食べた事は無いけど、蛇って実は結構美味しいんだよね」


「……そ、そうなんですか。じゃ、じゃあ私も食べてみようかな」



 恐る恐るルキアも食べる。


 フフフ。モグモグした後に、美味しい時の表情をしている。ミューリやファム、メイドさん達もそれに続いた。すると、シャルロッテも気になってきたようで、蛇肉に手を伸ばした。



「さあ、そろそろあの子達にも声をかけようか。ルシエル、ミューリ、ちょっと行って呼んできてくれる?」


「おう、そうだな」


「はーーい。じゃあ、僕がちょっと行ってくるー」


「お、おい、ミューリ。オレも行くってー! ちょまてよー、ちょまてよー」



 ルシエルとミューリがあの3人組を呼びに行った所で、蟹鍋の味見してみる。うまくできたかな?


 …………


 美味い! 美味すぎる!! これはいいものだ!! もうあと30分位、煮込めば出来上がりだね。



「おおーーい。アテナ」



 ルシエルと、ミューリが戻ってきた。あれ? あの3人組の子達は?



「まだあの3人、キャンプに戻ってないようだ。テントにも周辺にも何処にもいない。泳いでいるかなって思ったけど、少なくとも見える場所にはいなかったぞ」



 あの子達、私達が今日起きた時には確かにいた。あれから、ずっと泳いでいるなんて事無いだろうし――何処へ行ったのだろう。



「アテナちゃん達が、薬草採取に出かけて行った後、あの子達はここから見える辺りの場所、地底湖で泳いでいたよ。それから僕とカルビもちょっとだけ一緒に泳いだりして遊んでいたんだけど、あの子達はまだもう少し泳ぐっていって言っていたよ。3人いるし、特に気にかけていなかったけど、そう言えばあれから姿を見ていないかも」



 ミューリのその言葉を聞いて、唐突に胸騒ぎがした。



「それって、もしかして今日の朝、泳ぎに行ったっきりまだ戻ってきていないって事!!」


「少なくとも、僕はあれから彼女達を見ていないよ。てっきりもうテントにいるか、その辺にいるのかとも思っていたけど――何かあって叫べば聞こえる距離だし、そこまで気にしていなかったよ。ううーー、これは大変だ。どうしよう、アテナちゃん!」


「何かあったのかもしれない。すぐに助けに行った方がいいわ。ルシエルとミューリは、向こうの方を探して。私とファムは、あっちを探すから」


「アテナ! 私は?」


「一応キャンプにも誰か残っていた方がいいから、ルキアとカルビは留守番をお願い。もしかしたら返ってくるって事もあるかもだから――あの3人組のいたテントの方もちょいちょい見に行ってほしい」


「はい、解りました! 任せてください!」



 ガウッ



「じゃあ、すぐに捜索に行こう!」



 ルシエル達が頷き、捜索に出ようとした時にシャルロッテが言った。



「わたくしも、参りますわ」



 ルシエルが、大丈夫か? って顔で私の顔を見る。何か良からぬ事を考えているとしても、今のこの状況では何の意味も見当たらない。



「ルシエルとミューリの方へメイド4人を同行させ、アテナの方へはこのわたくしが、ついて参りますわ。行方不明の人達を捜索するのでしたら、何においてもまず人手じゃないかしら」



 正論だ。あの三人組にもしも何かあって、戻ってこれないのだとしたら、これはもう人命救助になる。


 人命救助じゃ何においても、優先すべきは人の命。合理的な捜索がものをいう。だから、行方不明者の捜索をするなら一人でも人手があった方がいいというのは正しい。



「わかった! あなた達の協力も欲しい。助けてくれる?」


「かしこまりましたわ。それでは、参りましょうか。さっさと3人を連れ戻して、蟹鍋を楽しみましょう」



 私はにこっと笑って頷いた。


 不思議な感じだった。ガンロック王国を旅した時に、王都でミシェルとエレファを攫おうとしたシャルロッテ。戦闘にもなった。まあ、あの時一番ハッスルしていた、ちょび髭はいないけど。


 そのシャルロッテが、今度は私達と一緒に、昨日出会ったばかりの子達を救出しようとしている。なんとも奇妙というか、ちょっとなんとなく嬉しいというか……不思議な感覚。



「何を人の顔をじろじろ見てますの?」


「いや、シャルロッテって如何にも貴族のお嬢様って感じで、どちらかというと綺麗系かなって思ってたんだけど、近くでよく見ると、凄く可愛いなーって思って」


「なっ! こんな時に何を言っていますの⁉ 不謹慎ですわ!」



 明らかに動揺して、頬を赤らめたシャルロッテは更に可愛らしく見えた。


 ガンロック王国で私達の前に立ちはだかったシャルロッテと、この地底湖にやってきたシャルロッテ。どちらが本来の彼女なのだろうかと思った。


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