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第201話 『地底湖 その2』



 ミューリに先導されるまま、地底湖を泳いだ。透き通った水に、満点の星空。ノクタームエルドという巨大な洞窟世界に存在するいくつもの奇跡が織りなし生まれる、神秘的な光景。


 ミューリが何かに気づいて声をあげた。



「あっ!」


「どうしたの? ミューリ」


「いいもの見つけた。アテナちゃん、ルキアちゃん、私について来て!」



 そう言ってミューリはザブンっと、湖に潜った。水は澄み切っていて、どんどん水底の方へ潜っていくミューリの姿が水面からでも見える程だった。



「わ、私怖いです。結構、深いですし……ずっと水の底を見ていると、なんだか引き込まれるような気がして」


「大丈夫よ。私もミューリもついているから。いざとなったら、全方位型魔法防壁(マジックシールド)を発動するし、溺れる事はないよ。さあ、行こう!」



 不安そうな顔をするルキアの可愛い猫耳のある頭を、ポンポンと軽く叩く。それからルキアの手を握り、大きく息を吸い込んで水の中へ潜った。


 水中で、ルキアを見えると目を開けていない事に気づく。大丈夫だよと、ポンポンと肩を叩いて合図を送る。恐る恐る目を開くルキア。私はルキアの手を再び引いて、ミューリの後を追いかけた。


 ミューリは、少し先にいた。振り返り、私達の事を確認すると、手招きをし始めた。ルキアと顔を見合わせて、ミューリの近くまで泳いで行く。すると、ミューリがあそこを見て! っと言わんばかりに興奮している様子で指をさした。


 ――――ミューリの指の先。


 そのには、地底湖の更なる幻想的な光景が広がっていた。沢山のクラゲのような生き物。それぞれが眩いばかりの光を放っている。ここは洞窟世界だというのに、こんなにも光で溢れている場所があるなんて、初めて知った。



 ぶくぶくぶく……



 そろそろ、息が続かない。ミューリにも合図を送って、一度水面に浮上した。



「っぷはあ! どーだった?」


「凄い綺麗。あれは、クラゲ?」


「僕もよく解らないんだけど、ファムが言うには『発光クラゲ』っていう奴らしい。この辺にいつもいるから、アテナちゃん達に見せてあげられるかなーって思って連れて来たけど、ちゃんといて良かったよ」


「そうだったんだ。物凄く綺麗で感動したよ。ありがとう、ミューリ」


「いやー、これくらい……」


「きゃあ!!」



 ルキアの悲鳴。見ると、水面に浮上したルキアの背中と頭に、私達が今、目にした発光クラゲが乗っかっている。驚いて、ミューリにどうすればいいかを求めた。



「大丈夫、大丈夫。これもファムから聞いたんだけど、発光クラゲは、一応魔物ではあるんだけど特に無害だから。噛みつかないし、毒針も持っていない。もちろん、手で触っても問題ないよ。試しにルキアちゃん、発光クラゲを触ってごらん」


「は、はい」



 ルキアは、恐る恐るといった感じで背中にとっている発光クラゲに手を伸ばした、頭に乗っているのは、そのまま。



 ムニョムニョムニョ……



「ねっ! 大丈夫でしょ」


「は、はい。なんだか、なんとも言えない触り心地ですね。それにじっと見ていると、フニョフニョしているし、ちょっと可愛いかも」


「か、可愛い? 流石の僕もそこまでの境地には至ってなかったよ。ハハハ。でもファムなら、きっとルキアちゃんと同じように可愛いっていうかもしれないかも」


「うわー、いいなー。ルキア、私にも触らせて」


「はい、いいですよ」



 私も発光クラゲを触らせてもらった。確かにフニョフニョとしていて、触り心地がいい。一瞬、このクラゲを敷き詰めて、ベッドを作ってその上で寝たら物凄く気持ちいいかもって思ったけど、絵ずら的にもちょっとそれは止めておこうと思った。



「まだ面白いものはあるけど、どうする?」


「そうだね、どうしようか?」



 ルキアを見ると、ちょっと顔が青白くなっていた。そして、頭に発光クラゲ。



「ちょっと冷えて来たし、お腹が痛くなってきてもあれだから、そろそろちょっと一旦、キャンプへ戻ろうか」


「そうだね。りょーかい、じゃあ、戻るからついて来て」



 ミューリが泳いで行く。その後に続くべくルキアの手をとると、タイミングよくルキアの頭の上に乗っている発光クラゲが点灯した。それを見て私も、もう1匹の発行クラゲを頭に乗せようとしたが、するりと水に落ちて逃げてしまった。残念。また、見つけたら、捕まえて遊ぼう。


 キャンプに戻ると、釣りに出かけたルシエルとファムはまだ帰って来ていなかった。



「あれー、まだルシエルちゃんもファムも、帰って来てないね」


「ルシエルは、結構ムキになる性格だから、魚と格闘しているのかもしれないわね。でも、大物を釣って来るかもしてないから、期待して待ってようよ」


「あの……、私ちょっと」


「あれ、お腹痛くなった?」



 顔を赤くし、頷くルキア。楽しかったけど、湖の水はかなり冷たかったもんね。ミューリに焚火の準備を頼み、ルキアの手を引いて何処かでおトイレできる場所を探した。


 何かを察したミューリがすぐに飛んできて、安全だし隠れているからと、岩がいくつかある場所を教えてくれた。


 キャンプを趣味にして、冒険者を生業にしていると、外で用を足す事もしばしばあるけれど、洞窟世界なんて初めて冒険するし、こんな巨大な地底湖を目にした事もなかったので戸惑ってしまった。完全に慣れるまでには、もう少し時間が必要かなって思った。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇発光クラゲ 種別:魔物

クラゲの魔物。特に人間に対して害のない魔物で、淡水に住んでいる。また、地底湖や洞窟内にある綺麗な水のある場所に発生し、光を発する。毒も無く、珍味として食用にもできるがあまり食べる人はいない。ルキアは、発光クラゲを気に入ってしまったようだ。


全方位型魔法防壁(マジックシールド) 種別:防御系魔法

強力な防御系上位魔法。自分の周囲にドーム状(実は球体)の光の幕を張り、物理攻撃や炎や冷気などの攻撃も防ぐ。とても強固な防御魔法。

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