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第196話 『4人の冒険者』



 早朝、起きると直ぐにお互い出発する事になった。あまり、長く一緒にいても今度は別れがつらくなる。それ位に、エミリアとは気があったのだ。



「じゃあな、魔法使い殿……いや、マリン・レイノルズ。旅をしていればまた会う事もあるだろう。それまで息才でな」


「そうだね。剣士殿……いや、エミリア・クライムネル。ボクも君とまたいつの日か再会できる日を、楽しみにしているよ。剣の修行、頑張ってくれたまえ」



 握手を交わし、別れる。


 エミリアは、テトラやセシリアが向かっているメルクト共和国へ、ボクはリアのお姉さんとクラインベルト王国の第二王女がいるというノクタームエルドへと旅立つ。


 森の中でノクタームエルドの方角が、解らなくなっちゃって迷ってしまったけれど、それもエミリアに教えてもらったし――――これで、問題無く向かえる。


 暫く歩き、森を抜けまた歩く。


 そうすると、徐々に辺りの風景に岩山が現れ始めた。ボクは辺りをきょろきょろと眺めた。これはもう大分ノクタームエルドへ近づいてきているのではないだろうか。



「喉が渇いてきたな。《水生成魔法(クリエイトウォーター)》!!」



 少し、休憩する事にした。水生成魔法を唱えて、水を発生させてそれを飲む。……やっぱりあまり、美味くない。川や湧き水と比べて、魔法で生成する水というのは、兎に角味気がないのだ。でも、渇きを潤すだけなら問題は無い。


 十分に休息できた所で、再び歩き始めた。


 荒野のように、周囲には岩しかない拓けた場所までやって来た時、唐突に魔物の気配を感じた。杖を突き出して正面に構える。



「何か、潜んでいるな。悪いがもう、気づいている。このまま潜んでいても時間の無駄になるよ」



 ブヒイイイイイ!!



 魔物の雄叫び。やはり、魔物が潜んでいた。今、歩いている道の先、岩山から15匹ものオークが躍り出て来た。手には斧や槍などを装備している。よだれを垂らし、こちらを威圧して睨んできた。



「オークか……リーダーがいるな。こんな所でハイオークにも遭遇するなんてな。まあ、だからと言って特に対処方法も変わりはしないのだが」



 ハイオークがこちらへ、ひときわ大きな斧を振りかざし叫ぶと、他のオーク達が一斉にボク目がけて向かってきた。ボクは、水属性魔法を詠唱する。



「一斉に襲って来るとは、面倒が無くて助かるよ。《水玉散弾(ウォーターショット)》!!」



 無数の水の粒が、散弾となって向かって来るオーク達へぶつかり、飛び散った。オーク達は胴体だけでなく腕や顔にも水の粒を喰らい、怯む。



「続けていくよ! 《水球強弾(ウォーターボール)》!!」



 その隙を突いて、大きな水の弾を生成しオークの群れに投げつけた。大きな水の弾は、オーク達にぶつかり弾ける。周囲にも大量の水が、飛び散った。


 一瞬にしてオークの数は半分になった。ボクは更に、得意の水属性魔法でオーク達を追い込んだ。


 しかし唐突に、自分の身体に異変を感じる。急に、鳥肌が立っていた。


 ボクは周囲を見回した。すると、オーク達もボクと同じような気配を感じたように、ボクが目の前にいるにも関わらず、辺りをきょろきょろと見回して警戒し始めた。――――緊張。


 次の瞬間、何処からか槍が飛んできて1匹のオークの身体を貫いた。身構えて、槍が飛んできた方を見る。すると、目を疑う程の転回が待ち受けていた。意外な者達が、ボクの目の前に現れたのだ。


 なんと目の前には、ボクが知っている4人の冒険者が立っていたのだ。


 その冒険者の一人、【ランサー】のロビーがオークに投げ放った槍を回収した。



「な……なぜ、君達がここにいる?」



 冒険者達のリーダーである、クライド・ゴートが前に出て剣を抜いた。ゲイブとネスもそれに続く。



「マママ……マリン……オマエヲ、オッテキタ……マリン……コロス」



 あの時、ルリランの森にある『古代の墓場』で、クライドはボクの心臓を剣で貫いた。だから、もしもちゃんと意識があるのであれば、クライドもボクの事をなぜ生きているのかって思うかもしれない。だけど、ボクも同様に疑問に思っている。なぜ、あの時死んだ4人がここにいるのか。


 クライド、ロビー、ゲイブ、ネスは手に入れた宝を4人達だけで山分けする為に、ボクを始末しようとした。仲間と思っていただけに、ボクは非常にそれが残念に思えた。とりあえず、殺す気で刃を向けられたボクは迷う事無く裏切った彼らを皆殺しにした。


 だけど、今その皆殺しにしたクライド達が目の前に居る。これはどういう事なんだ?



「ウガアアアアア!!」



 ゲイブとロビー、そしてクライドが一斉に襲い掛かって来た。ボクの目前に迫るまでに、その場にいた戸惑っているオーク達の首を刈り取る。血飛沫。


 ゲイブとロビーの攻撃を避けると、クライドの狙ったかのような攻撃が来た。かわして後ろへ飛ぶ。そこへネスの放った氷属性魔法の氷矢(アイスアロー)が飛んできた。



「くっ! 《噴水防壁(ウォーターウォール)》!!」



 水の壁を発生させて、氷の矢を防ぐ。


 再び距離を距離をとり、観察――



 ブギイイイイイ!!!



 生き残ってるオークがクライド達に、攻撃を仕掛けた。だが、クライド達に通用しなかった。ゲイブの斧がオークの頭蓋を割り、クライドの剣が首を刎ねる。ロビーの槍がオークのぶ厚い身体を貫いて、ネスが雷属性魔法のライトニングを放って感電させた。



「コロス、コロス……マリンヲコロス……」



 観察するとやはり、正気ではないようだ。言葉を放っている事と、肉体が腐り落ちていない事を考慮してみてもゾンビでもない。だが、クライド達は確実に死んでいる。死んだ状態で、ボクを殺そうとしている。



 ブオオオオオ!!



 今度は、最後に生き残っていたハイオークがクライド達に襲い掛かった。クライドがハイオークに向けて前に出る。大斧。ハイオークの大きな斧を、クライドはかわした瞬間に剣をハイオークの胸に突き刺した。



 ブギイイ!!



 しかしハイオークは、自分の胸に突き刺さるクライドの剣を、武器を手にしていない方の手でがっちりと握って固定すると、もう片方の腕で斧を振り下ろした。クライドの首がゴロリと、その場に転がった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛


〇クライド・ゴート 種別:ヒューム?

Bランク冒険者。クラスは【ソードマン】。剣の腕ににも自信があり、パーティーでの戦闘を得意とする。常に仲間のフォーメーションに目を配り、的確な指示をする。効率的な考え方をする冒険者。古代の墓場で、宝を自分達だけで横取りしようとマリンを殺害しようとし、逆に殺された。


〇ゲイブ 種別:ヒューム?

Bランク冒険者。クラスは【ウォーリアー】。斧の使い手。腕力もあるが、度胸もある。クライドとは、古くからの知り合い。古代の墓場で、宝を自分達だけで横取りしようとマリンを殺害しようとし、逆に殺された。


〇ロビー 種別:ヒューム?

Bランク冒険者。クラスは【ランサー】。槍の使い手で、動きも早い。持ち前の機動力で敵を攪乱し、さっと相手を刺す戦法を得意とする。クライドとは、古くからの知り合い。古代の墓場で、宝を自分達だけで横取りしようとマリンを殺害しようとし、逆に殺された。


〇ネス 種別:ヒューム?

Bランク冒険者。クラスは【ウィザード】。様々な黒魔法を使い、クライドのパーティーでは後方支援役。クライドとの付き合いは長くはないが、気が合って一緒に行動するようになった。今ではその一味。古代の墓場で、宝を自分達だけで横取りしようとマリンを殺害しようとし、逆に殺された。


〇オーク 種別:魔物

人型の豚の魔物。凶暴で数匹で行動する事が多い。人間のように、武器や防具、盾を装備しているものが多く、槍や斧を好んで使う。もちろん身に着けている装備は、人間から奪ったものだが高価な装備を身に着けている個体もいて侮れない。決まりはないが、洞穴や洞窟を巣とするものが多い。


〇ハイオーク 種別:魔物

人型の豚の魔物。オークの中でも、一回り身体が大きく力も強い。ハイオーク同士でいるものより、ハイオーク1匹で通常のオークを複数率いている場合が多い。自分で巣を作るよりも、人が使っていた集落や炭鉱などに住み着いて自分達の住処にする傾向がある。非常に攻撃的な魔物で人を見ると襲ってくる。


〇ルリランの森 種別:ロケーション

以前、この森でマンティコアという狂暴な魔物が暴れていた。エスカルテの街で討伐依頼を受けたアテナ、ルシエル、ローザがそのマンティコアを退治した。因みに、その討伐依頼にはエスカルテの街のギルマス、バーン・グラッドも同行し討伐を確認した。


〇古代の墓場 種別:ロケーション

ルリランの森から西に行ったところにあるダンジョン。探索には高ランク冒険者推奨で、危険なダンジョンとされている。マリンは以前、クライドという名の冒険者達とこのダンジョンに挑んだ。


水玉散弾(ウォーターショット) 種別:魔法

下位の、水属性魔法。小さな水の弾を無数に生成し、一斉に放って目標を撃ち抜く。水と言えど、その小さな粒は弾丸のように固く感じる。散弾なので、逃げ回る相手や複数の敵にも有効な魔法で、下位魔法に位置づけされはいるものの、物凄く優秀な魔法。


水球強弾(ウォーターボール) 種別:黒魔法

中位の、水属性魔法。大きな水の球を生成し目標へ投げつける。魔力を帯びた水球は岩をも砕く。


噴水防壁(ウォーターウォール) 種別:黒魔法

中位の、水属性魔法。目前足元から水を横一列に魔力で作った水を吹きあがらせて壁を作る。水の壁であるが、魔力で生成しているためその強度も術者に比例する。


氷矢(アイスアロー) 種別:黒魔法

下位の、氷属性魔法。氷の矢を生成し、目標へ飛ばして射抜く。でも、氷の矢というよりは見た目的には、つららに近い。

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