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第189話 『リオリヨンの冒険者達と、王都からの騎士』




「じゃあまた何処かでね。リアのお姉さん、ルキアには必ず君が元気でやっているって事を伝えるよ」


「マリンさん! こんな事を頼んでしまって、本当にありがとうございます! よろしくお願いします!」



 リアがマリンの両手を握ると、いつも眠たげな表情のマリンは微笑んで頷いた。



「うむ、これもまたボク自身の冒険の記録。好きでそうするんだから、何ら気にしなくてもいいよ」



 マリンと握手し終えると、今度はセシリアがマリンのその手を握った。



「マリン、アテナ様にあったらよろしく伝えておいてくれるかしら」


「任せてくれ。アテナ様にセシリアやテトラの事も、漏れなく伝えておこう」


「マリン。また必ず、一緒に旅をしましょうね」


「いいね。ボクは今まで仲間に裏切られるという経験ばかりだったんだけど、そんなボクにもようやく仲間と言える者達ができた気がするよ。だからこそ、そう言ってもらって嬉しいよ」


「確かに仲間でもありますが、私はマリンの事を親友だと思っていますよ」


「テトラ……ボクもだ」



 マリンと強く握手をした。マリンの手は、その体格に比例して可愛くて小さかったけど、しっかりと私の手を力強く握り返してくれた。リアが、何かを取り出してマリンに預ける。



「これを、お願いします。母の形見です。お姉ちゃんに見せれば、私が元気でいる証明になると思います」


「ふむ。これは綺麗な銀の指輪だね。任せたまえ、これを必ずルキアに届けるよ。それじゃ、名残惜しいけど、きりがないからそろそろ行くよ。皆、元気でね」



 マリンは、リアから綺麗なシルバーリングを受け取ると、リアのお姉さんであるルキアを探して旅立った。


 因みにマリンがこれから向かう、ルキアがいる場所……つまり、一緒に行動しておられるアテナ様がいらっしゃる場所でもあるが、それはバーンさんが予め調べておいてくれて、それをマリンに伝えていた。


 バーンさんは、国王陛下の命もあり、独自の冒険者ギルドや冒険者達のネットワークを通じて、可能な範囲でアテナ様の現在地を常時追跡しているらしい。アテナ様はこの国の第二王女なので当然と言えば当然の事だと思った。だけど、それを追跡できる冒険者ギルドって凄いなって思う。


 マリンの向かった場所は、このヨルメニア大陸最大の大洞窟が広がる岩と暗闇の世界、ノクタームエルド。ドワーフの王国があると聞いた事があるけれど、私やセシリアはおろかマリンも行った事はないとの事だった。大丈夫かな。――だけど、マリンであれば大丈夫だろうとも思う。


 ――マリンと別れると、いよいよ今度は私達がメルクト共和国へ旅立つ番となった。


 エスカルテの街からは、私とセシリア、ボーゲンさんが向かう。リオリヨンの街からも何人か応援が来ているので、これから合流してメイベルさんとディストルさんの案内のもと、いよいよメルクト共和国に向けて出発する。バーンさんが同行してくれないのは正直心細いけど、そのバーンさんの弟分であるボーゲンさんが一緒なら心強いかなと思った。


 メイベルさんが指をさす。



「さあさあ、これからリオリヨンの街から派遣された冒険者と合流して、出発しやすよ。リオリヨンの街の冒険者は、クラインベルト王国から派遣された助っ人騎士と一緒に、酒場であっしらを待っているはずでござんす。へっへっへ。バーンさんは、来てもらえやせんがなかなかいいストーリーになってきやしたよ。それじゃ早速、行ってみやしょーか」



 ストーリー? 確かメイベルさんのファミリーネームも、ストーリ……メイベル・ストーリ。うん? それに掛けている?


 これから酒場で仲間を揃えて、メルクト共和国を救いにいざ旅立つというのであれば、メイベルさんが言うように確かにいいストーリーだと思った。



 ――酒場に到着。メイベルさん達がいう酒場は、ロン君が働いているお店の3倍くらいの大きさがあった。流石はクラインベルト王国でも、人の賑わいに富んだ街、エスカルテの酒場。


 酒場に入ると、中は賑わっていた。早速、酔っぱらった男達の、叫び声や怒鳴り声が聞こえてくる。私はそれを見て、王都のスラム街の酒場での事を思い出した。セシリアと目が合うと、セシリアも同じく思い出しているんだろうという表情が見て取れた。……また、乱闘にならなければいいけど。でも今回はメイベルさん達だけでなく、バーンさんやボーゲンさんもいるし、その心配はないだろうと思う。



「てめー!! どこ触ってやがんだ!!」


 

 ドガッ!!



「ぐええええ!!」



 怒号!! ディストルさんだった。メイベルさんの相方のディストルさんが、片手で酒場にいたゴロツキ風の男の胸ぐらを掴み上げている。男は苦しそうに両手で、胸ぐらを掴むディストルさんの手を外そうとして藻掻いている。だが、外せない。



「ディストル! もうその辺で勘弁してやんな? これからいざ出発って時に、そんなストーリーがあるかい? ここは、大人になってやんなよ」



 メイベルさんに止められたディストルさんは、舌打ちすると男の胸ぐらから手を外した。男は転がって苦しそうに咳き込んだ。



「ごほっごほっ! この怪力女!! ちょっと、尻を触っただけじゃねーか!! だいたい、そんな露出の激しいビキニアーマーなんかでこんな酒場に来る方がわりーんだよ!! 完全に誘ってんじゃねーか!」


「なんだと⁉ どうやら、今度は殴られてーみてーだな! よし、殴ろう!! 今殴ろう!!」



 男の言葉に再び火が点いたディストルさん。しかし今度はそこへバーンさんが割って入る。男はバーンさんを見るなり慌てて立ち上がると、先程までとは一変してヘラヘラと笑い出した。



「ババババ、バーンさん!!!! へへへ、どうしたんですか?」


「どうしたもこうしたもあるか。俺の連れの尻を勝手に触るな」


「ええ!! バーンさんのお連れの方だったんですかい!? それならそーと……すすすす、すいやせんでしたーー!!」


「大人しく店の隅っこで飲んどれ」



 バーンさんと男のやり取りに、私は安心して笑った。流石、この街のギルドマスターだと思った。


 メイベルさんが、何事も無かったかのように指をさす。



「いたいた。あそこのテーブルにいる4人が、一緒にメルクト共和国へ出発する仲間でござんす」



 見ると冒険者が3人、そして騎士が1人いる。


 冒険者は、【ソードマン】、【ウォリアー】、【プリースト】。3人とも、リオリヨンの街から応援に駆け付けた人達でいかにもベテランって雰囲気がある。騎士は、クラインベルト王国から陛下が派遣して下さった応援らしいけど――



「テトラ。あの騎士」


「あっ! あの人!」



 セシリアが先に気づいた。その騎士とはバーンさんも顔見知りのようだった。



「久しぶりだな、バーン・グラッド」


「随分出世しちまったなあ、ローザ・ディフェイン」



 驚いた。私もその騎士の事を知っていた。クラインベルト王国国王直轄の騎士団、『青い薔薇の騎士団』団長。ルーニ様救出の際、トゥターン砦に突入した時に増援でやってきて私達を助けてくれて、王都まで送り届けてくれた騎士。


 赤い髪のその凛とした女騎士は、笑みを浮かべてこちらに向かって腕を差し出した。



「テトラ、セシリア。ドルガンド帝国のトゥターン砦の時以来だが、よろしく頼む。ルーニ様救出の時は君達に任せっきりだったが、今回のメルクト共和国救援については緒戦から私も共闘するつもりだ。そんな訳なので、共に正義の為に存分に剣を振るおう」


「こちらこそ、よろしくお願いします。ローザ団長」



 私とセシリアは、ローザ団長と握手をすると、テーブルに座り他の仲間とも挨拶をした。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄〛



〇ローザ・ディフェイン 種別:ヒューム

クラインベルト王国の国王陛下直轄騎士団『青い薔薇の騎士団』団長。アテナやルシエル、ミャオとは親友。アテナやルシエルとパーティーを組んでいたが、騎士団の任務と責任があり本来の仕事に戻った。でも、またアテナ達と冒険やキャンプをしようと約束をしている。今回の仕事は、セシル国王から下されたものでメルクト共和国の救援にテトラ達と向かう。


〇リオリヨンの街 種別:ロケーション

クラインベルト王国で、王都を含めなければ一番栄えている街。栄えている順位をあげると、次にアテナ達の馴染みのあるエスカルテの街の名があがる。

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