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第183話 『ギゼーフォの森でキャンプ その3』




 森の中で川を見つけた。


 なかなかの川幅で、深さもあって魚が沢山いそうだった。



「おおー、魚影が見えるね。いるね、いるね。魚が泳いでいるね。それで、どうやって魚を獲るんだい? 釣竿は、用意していないけど」


「それはですねー」



 私はスカートをまくり上げると、太ももの辺りに巻き付けていたホルスターから、ナイフを取り出した。それを見て、マリンの目が輝く。



「おおーー!! 凄いな! 君は!!」


「え? 何がですか?」


「それだよ、それ。君は自分が身に付けているその極めてカッコイイ物の価値について、気づいていないのかい?」



 マリンは興奮しながら、私のスカートを掴んでまくり上げた。



「やっ!! ちょちょちょ……ちょっと!! マリン!! やめてください!!」


「やーー、これは凄い!! いいなー、ボクも身に付けてみたいな」



 マリンが興味を示したのは、太ももに装着していたナイフホルスターだった。確かに、なんとなく【アサシン】や、東方の国にいるという【ニンジャ】のようでカッコイイと言えばカッコイイかもしれない。


 当初は腰にベルトをして、ホルスターを付けていたんだけど、メイド服の上からの装着となると、なんだか物々しくなっちゃって…………そしたら、セシリアが太ももの辺りにナイフを付けているのを見たから、いいなと思って真似をしたんだけど――――もうすっかり、これで定着していた。


 マリンが羨ましそうにホルスターを見る。メイド服のスカートの丈は長いので、邪魔だとばかりに思い切りまくり上げられていた。私は両手で自分のスカートを必死に押さえて悲鳴をあげる。



「やめて!! やめてください、マリン!!」


「いいなー、いいなー」


「解りました!! 解りましたから!! マリンに、貸してあげますから!!」


「え? 本当?」



 マリンは、スカートを掴んでいた手を離した。まったくもう、今日はセシリアといい、やたらとスカートをまくり上げられる日だと思った。


 ナイフを再びホルスターに収納すると、太腿からホルスターのベルトを解いて取り外した。そしてそれをマリンに手渡す。マリンはとても嬉しそうな顔で受け取ると、早速自分の足へ装着しようとした。


 恥じらいも無く水色のローブをまくり上げると、マリンの水玉模様の下着がチラリと見えた。しゃがみ込んで自分の太腿の辺りにホルスターを装着する。



「前々から思っていたんだよ。このボクには、何かが足りないなって。英知の収集を目的とする毎日。その中で、ついにその足りないものを見つけたよ。それは、ワイルドさだ。ボクにはワイルドさが足りなかった」


「はあ……ワイルドさですか」


「そうだ。しかし、この極めてカッコいいナイフホルスターを太腿に装着すれば、きっとボクでもアサシンみたいな、ワイルドさを醸し出すことが可能だろう」



 やっぱり、そう思っていたんだと思った。



「よし! 装着完了だ! テトラ、見てくれ! なかなか、さまになっているだろ?」



 マリンがすくっと立ち上がると、同時に太腿のナイフホルスターがストンと下に落ちた。目が点になるマリン。私は吹き出しそうになった。そもそも私とマリンじゃ身体の大きさも太腿の太さも違う。マリンは、リア位の小柄で華奢な身体のサイズだし、腕も足も本当に細い。ホルスターを装着する為のベルトは、一番短く調節する穴でも足りなかったようだ。



「テトラ……」



 マリンがこれ以上無い位に残念な表情でこちらを振り向くタイミングで、私はザックから予備のナイフを取り出してその辺にある木を二本手に入れ尖端を削って、即席の槍を作った。


 マリンが悲しそうに、ナイフとホルスターを差し出してきたので、それと交換で作った槍を1本手渡した。



「これで魚を獲るのか?」


「はい。川に入って、えい! って勢いよく突くんですよ」


「それならボクが、アクアレーザーで魚を……」


「駄目ですよ、そんなの使っちゃ。私達は今日はキャンプを楽しんでいるんですから、ちゃんとキャンプのルールに則ってやらないと。それにマリンのアクアレーザーで魚を撃ち抜いたら、その威力で魚が飛び散っちゃうんじゃないですか」


「うーむ。テトラ。君はなかなか確信を付くな。そして――――」



 川に入る為に私は着ていたメイド服を抜いて、下着1枚の姿になった。服はちゃんと折りたたんで、川辺にある大きな石の上に置く。マリンはそんな私を見て、続けた。



「スカートをめくりあげられる事には恥ずかしがるのに、自分から下着姿になる分には、平気なんだな。実に興味深いものだ」


「平気じゃありませんし、興味深くもありません!! 恥ずかしいですよ、普通に。だから、マリンも早く脱いで川に入っちゃいましょう」


「ふーーーーむ。…………全方位型魔法防壁(マジックシールド)を使用すれば、服を着たままでも全く水に濡れずに川に入る事はできるんだが」


「キャンプのルールに従ってください。それにもしそれで、川へ入っても魚を槍で刺すときにどうやって刺すんですか? 全方位型魔法防壁(マジックシールド)を突き破るなら、川の水が中へ入り込んで結局濡れちゃうんじゃないですか?」


「うーーーん、確かにそれはそうだ」



 マリンって、もしかしてあまり後先を考えない性格なのかもしれないと思った。

 

 マリンは苦虫を嚙み潰したような表情をしながら、水色のローブを脱ぎ始めた。私と同じく下着一枚になると、畳んだローブの上にローブと同じ色をした三角帽子を置いた。更にその上に、外した眼鏡。


 準備ができたら二人して槍を手に持って、勇ましく川にバシャバシャと入って行った。



「うっ! 冷たい!! でも、気持ちいい」


「しかし、テトラ。君に関して言えば、立派な槍を持っているじゃないか。お手製の槍を作るにしても、ボクの分だけで良かったのでないのか?」


「涯角槍ですか? あれは立派すぎる槍だから、ちょっとこういう事に使うのには、使いづらいんですよ。ゲルハルト様に頂いた大切なものですしね」


「なるほど」



 マリンは槍を手に、川の深い場所へ潜っていった。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


全方位型魔法防壁(マジックシールド) 種別:防御系魔法

強力な防御系上位魔法。自分の周囲にドーム状(実は球体)の光の幕を張り、物理攻撃や炎や冷気などの攻撃も防ぐ。とても強固な防御魔法。


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