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第168話 『ファイアの実力』 (▼ルキアpart)




「燃え盛れ! 《爆炎放射(フレイムバースト)》!!」



 ミューリさんが次々と迫り来るアシッドスライムを火属性魔法で次々と焼き払っていき、それでも抜けてくるアシッドスライムをギブンさんと私で倒していく。


 実はミューリさんは、このノクタームエルドでは凄く有名な冒険者らしく、妹のファムさんとの姉妹コンビで『ウインドファイア』と呼ばれている。もう天国にいってしまって会えないけど、私にもリアっていうとっても優秀で可愛い妹がいた。リアがもし生きていたらリアを誘って、私達もミューリさんとファムさんみたいな誰からも凄いって思われる姉妹冒険者みたいになってみたかったな。


 でもリアはきっと冒険者よりも、ガンロック王国の王都でミシェルさんに案内されてご馳走してもらった素敵なカフェみたいなお店の方が、やりたいって言いそうだと思った。だってリアは、剣やナイフを構えて魔物と戦ったりするより、エプロンを付けている方が良く似合う。


 思いを巡らせていると、何処からか目前に躍り出て来たアシッドスライムが私目がけて、何かを飛ばしてきた。


 ――え? 酸⁉ しまった、避けられない。



「ひゃっ!!」


「おい、ルキア!! 危ないっ!!」



 ジュジュジューーーー



 酸を浴びる直前の所で、ギブンさんが私の手を引いて助けてくれた。



「ふいーー。ヒヤッとさせやがって! 戦闘中にボヤっとしてちゃいかんぞ! 考え事は戦いが済んでからにしろ!! それに、十分に気を付けてかからないと、今に大怪我するぞ! ほら、見てみろ!」 



 酸が飛んだ辺りの地面から、ジュジュジューっと焦げる音と湯気のようなものがたちあがっている。溶けているのだ。それを見て、私はぞっとして顔面蒼白になった。



「あ……すいません! ギブンさん! 助けてくれてありがとうございます!」


「うむ。ほら、次のが来たぞ! 頑張って倒すんだ!」



 ミューリさんの炎攻撃からまた抜けて来たアシッドスライム目がけて、ギブンさんは大きなハンマーを振り下ろしてぺしゃんこにした。どろりとしたスライムの身体が飛び散る。



「ルキアちゃん! 大丈夫?」


「はい。ミューリさん」


「できるだけ多くのアシッドスライムを僕が引き受けるつもりで焼き払っているけど、やっぱりこれだけ大きな群れになると完全に全ては焼き尽くせない。抜け出ていく分は、ルキアちゃんとギブンに任せるしかないんだよ。アシッドスライムは、武器で倒す場合は身体の真ん中辺りに核があるからそれを狙って」


「はい! 解りました!」



 私は松明を片手に辺りを照らし、もう片方の手でナイフを敵に向けて構えなおした。洞窟の更に奥の方からドロドロドロっとアシッドスライムが雪崩れてくる音が近づいてくる。



「ほんと、とんでもない数のアシッドスライムだね。これは火属性魔法が使える術者が何人かいないと、絶望的だね。まあでも僕は、一人で術者何十人分にも匹敵するけどね。わっはっはっは」


「ミューリさんがロックブレイクにいてくれ良かったです。凄く頼りになります」



 ミューリさんはにこりと笑った。ファムさんは風属性魔法、ミューリさんは火属性魔法のスペシャリスト。火が弱点のアシッドスライムに対してミューリさんの存在は、凄まじい戦力だと思った。


 別の方から新たにこちらへ流れてくる、アシッドスライムの群れが目に入った。それを見てミューリさんが、魔法詠唱する。



「これで最後の群れだと願いたいね! 《火弾操作連弾(フレイムラッシュ)》!!」



 いくつもの小さな火球がミューリさんの目前に現れ、ミューリさんがアシッドスライムの群れに手を翳すと、そのいくつもの火球がそこへ飛んで行って着弾した。例えるなら、小さな火球魔法(ファイアボール)の散弾。無数の火球がアシッドスライムの群れのあちこちに着弾し、爆炎をあげる。


 これが『ウインドファイア』のファイアの力量!!


 火の女神のように巧みに炎を操り、火を支配して次々とアシッドスライムの群れを焼き払っていくミューリさんのその姿に私は、完全に目を奪われてしまっていた。


 炎の渦の中で微笑みを浮かべ火を従える彼女は、まるでイフリートのよう――――


 そしてまたよそ見をするなと、ギブンさんに怒られる。ミューリさんが倒し損ねたアシッドスライム目がけて、ナイフを振った。


 ――――そんな感じの戦闘を続け、どれ位戦っているかという時間も忘れてしまった頃、ようやく全てを倒す事ができた。



「ようやっと、片付いたようだな。ご苦労さんだったな、ミューリ、ルキア」


「ギブンもお疲れさん。アテナチームとルシエルチームの方も、かたがついたかな?」


「それなら、心配ないですよ。アテナもルシエルも物凄く強いので、もうやっつけちゃっていると思います」



 ギブンさんが唸る。



「どうしたんですか、ギブンさん」


「いや……儂は昔、何度かアシッドスライムと戦った経験があるんだがな。恐らくこれ位の規模の群れになると、ボスがいるはずなんだ」



 ボボボ……ボス⁉ 私はギブンさんのその言葉に驚いて、慌てて周囲を見回して警戒した。



「ワッハッハッハ! ルキア、ここは大丈夫だ。こっちのルートにはいねえ。気配がしねえからな。多分……他のどちらかのルートの方に、ボスがいるんじゃねえかな」


「それなら、ここは完全に片付いたしアテナかルシエルの方へ応援に向かった方がいいね」


「はい! 急ぎましょう!」



 まさか、アシッドスライムの群れにボスがいるなんて。


 なんとなく今まで、このスライムの事をヘドロ状の何か危険な生物っていうふうにだけ思っていたけど、そう言えばスライムも魔物だった。私の知っているスライムはもっと丸くてプニプニしていて、好戦的なものでも体当たりしてくる程度の、どちらかというと可愛い感じの魔物のイメージがあったので、ヘドロ状のアシッドスライムはどうも別の何かに見えていた。魔物なら、大型のボスサイズがいても、不思議ではない。


 とりあえず、早く助けにいかないと。アテナもルシエルも強いから大丈夫だとは思うけど、あのアシッドスライムが吐いた岩をも溶かす酸の攻撃を思い出すと、不安になって急がずにはいれなかった。






――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


〇イフリート 種別:精霊

火の上位精霊。精霊は魔物に似ているものもおり、イフリートは悪魔のようにも見える。だが、悪魔でも魔物でもない。ルシエルの使う精霊魔法とは、こういった精霊の力を借りて魔法を放っている。


火弾操作連弾(フレイムラッシュ) 種別:黒魔法

上位の、火属性魔法。無数の火球を生成しそれを一気に放つ魔法。下級はある程度コントロールする事もでき、目に見えていれば目標を追尾し着弾させるという事もできる。散弾魔法としても使用でき、使い次第で攻撃レパートリーは豊富。

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