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第166話 『アシッドスライム討伐』




 北方面からロックブレイクへ向かってきているアシッドスライムの群れは、それぞれ3つの洞窟の中を雪崩のようになって接近してきているとの事だった。


 洞窟の中は暗闇で、光が無いと何も見えないという事と、アシッドスライムの弱点は火という事で、火属性魔法が使える者を含めて、チームを3つに分けた。そして、アシッドスライムが迫ってきている3つの洞窟にそれぞれ向かって、対処する事になった。



「ふっふーん。ど真ん中は、このオレに任せてくれよ!」


「ルシエルって、火属性の魔法って使えるの?」


「ああ。風属性魔法の方が得意だが、使えるぞ。オレの使用する魔法は火の精霊魔法だから、威力もあるぞ」



 ルシエルが火属性魔法を使った所は見た事がないけど、そういえば初めて出会った時に、キャンプで火の魔法で焚火を熾こそうとしていたっけ。

 


「それじゃ、ルシエルは中央の洞窟からやってくるアシッドスライムを喰い止めて」


「おう! 任せろ!」


「あと、もう一人くらい……」


「ファムがついていく」


「じゃあ、ファム。ルシエルの事をしっかりお願いね」


「うん」


「コラー! オレは子供ではないぞ!」



 飛び跳ねるルシエル。中央のルートに、ルシエルとファム。左のルートに、私とキョウシロウ。右のルートに、ルキアとミューリとギブン。


 それぞれチームを分けると、早速各自の持ち場へ向かった。



「くれぐれも気を付けてね。ルキア」


「はい! 大丈夫です」


「僕とギブンがしっかりルキアちゃんを見ているから大丈夫だよ。それにこの中じゃ、火属性魔法に関して言えば、僕が最も得意とする魔法の使い手だからね。きっと僕達が受け持つ方はさっさと片付くから、そしたらそっちの応援に向かうからね」



 確か、この辺りの冒険者の間でミューリとファムはとても優秀な冒険者姉妹として知られていて、それぞれが得意とする魔法がある事から『ウインドファイア』って呼ばれているんだっけ。なんとも心強い。本当に、ミューリ達が一番先にスライムを殲滅しそうだなと思う。


 皆に手を振ってルシエルやルキアと一旦別れた後、私はキョウシロウと、アシッドスライムの群れが攻めよて来ている左側の洞穴へ急いで向かった。



「予定があったんでしょ? 私達と一緒に来てくれたのは、ありがたいけど良かったの?」


「予定はあったさ。話した通り、用心棒の仕事だ。だが昨日そこへ向かう為、ロックブレイクを出発したら大量のアシッドスライムと遭遇してな。やむなくロックブレイクへ引き返して来たんだ」


「え? それじゃあ、ロックブレイクにアシッドスライムの群れが押し寄せてきているって事を、最初に気づいて知らせに来てくれたのはキョウシロウ……あなただったんだ」


「まあな。どっちにしてもアシッドスライムの群れをなんとかしないと、俺も目的地へは行けないからな。ここは共闘して、さっさとスライムどもを片付けてしまおうじゃないか」


「うん。そうだね」



 返事したその時、洞窟の奥の方から地鳴りのような音と振動が伝わって来た。



 ドドドドドドド……



「む!! 来たぞ!! アテナ、無茶はするなよ」


「うん、お互いにね」



 キョウシロウが何本も持って来ていた松明に、火を付けていく。それを周りに配置した。これで、なんとか周囲を見る事ができる。スライムの大群相手に懐中灯を片手に、剣一本で戦わなくてはならないと思っていたんだけど、これなら二刀流で戦える。


 両手で二振りの剣を抜くと、キョウシロウが言った。



「おい。俺は火属性魔法なんて使えないぞ。アシッドスライムには火が有効なんじゃないのか?」



 あっ。確かにそうだった。


 私は両手に握っていた剣のうち、一振りを再び鞘に納めた。



「片手でも魔法は使えるから。それと、キョウシロウ。気づいてくれたお礼に私からもなんだけど、アシッドスライムの体内には、核があるの」


「核……?」


「そう。弱点だから見つけ出すのは大変だけど、それを破壊してしまえばスライムは絶命するから。チャンスがあればそこを狙って」


「なるほど。わかった」



 ドドドドドド……



 暗闇の奥から音が近づいてくる。振動。


 私は再びその音がする方向へ構えると、キョウシロウも刀を抜いて構えた。



 ――――来るっ!!



 ギュワアアアアアア!!



 暗闇の中からドバドバっと何匹もの暗緑色のアシッドスライムが、姿を現した。ヘドロのような形。それ程、スピードは感じないけど確か、アシッドスライムは強力な酸を吐いて攻撃してくるはず。



 ギュワアアアアアアア!!



 私は迫り来るアシッドスライム達に片手を翳し、火属性の魔法を詠唱した。



「炎よ、魔物達を焼き払え! 《爆炎放射(フレイムバースト)》!!」



 火炎放射。いっきにアシッドスライム達を焼き払う。舞い上がる炎で洞窟の中は更に明るくなり、ずいぶん先の方まで見渡せた。


 十分な灯りを手に入れ、これで戦い易くなると思ったの束の間――――遥か先の方から、こちらに向かって来るアシッドスライムの群れが目に入る。



「ひええええ! まだまだいるよ!! これだけいると、ちょっと気持ち悪いな」



 ギュワアアアアアア



「ったあああ!!」



 キョウシロウが、刀でアシッドスライムを斬りつける。キョウシロウに斬られたスライムは、断末魔のようなものをあげて、ヘドロのような身体が更に崩れて死んでいった。



「キョウシロウ! もしかして今の……」


「ああ。核を斬ってやった! これなら、アテナの魔法もあれば、なんとかなりそうだと思えてきた」


「なりそうじゃなくて、なるよ! キョウシロウのその腕と私の火属性魔法があればね!」



 にやりと笑って、再び爆炎放射(フレイムバースト)を放った。私が倒し損ねたスライムをキョウシロウが、斬って倒す。


 骨は折れそうだけど、頑張るしかない。ルシエルとルキアの方も、こちらと同様に無事に、上手くいって欲しいと祈った。







――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


爆炎放射(フレイムバースト) 種別:黒魔法

中位の火属性魔法。爆発させる魔法ではなく、手の平から爆発により発生する強烈な炎を放つ魔法。低位の魔物ならこの魔法で、こんがり焼ける。

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