表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/1343

第159話 『因縁のバンパ』





 脱出するついでに盗賊のアジト内にあった馬車6台の車輪を全て壊して回った。馬も騒ぎが起きれば逃げていくように、繋いでいる縄に切り目を入れておいた。こうしておけば、いざここへ踏み込んだ時に色々と有利に働くだろう。


 それからもと来た道を、賊に見張りに見つからないように通り抜け、セシリア達のもとへ戻ってきた。そしてアジト内で見た事と、馬車の車輪を壊してきた事などを皆に話した。すると、バーンさんが作戦を立て始めた。



「よくやったな、テトラ。流石だ」


「えへへ。お役に立てて嬉しいです。あとは、なんとか捕まっている子供達を早く助けてあげないと」


「そうだな。とりあえず、作戦なんだが戦闘力の高いテトラと俺で、真正面から攻撃をしかけて気を引こうと思う。簡単に言うと、陽動だ。できるだけ大暴れするから、その間にセシリア、ミラール、リアはテトラがさっき潜入したルートから同じように侵入して、捕らえられている者達を助け出せ」


「でもいきなり私とバーンさんで乗り込んでいって、大暴れしても大丈夫でしょうか。それで、捕まっている子供達は殺されないでしょうか?」



 私の質問にバーンは笑って答えた。



「大丈夫だろ。たった二人だからな。いくらなんでも、いきなりそれで人質を殺したりはしないよ。それに俺に考えがある。上手くやるさ」


「それでしたら……あともう一つ確認なんですけど、バーンさんてギルドマスターなんですよね?」


「そうだが、なんだ?」


「でしたら、強いんですよね? 私は戦いに集中しても大丈夫ですよね?」



 言った途端、バーンさんは思い切り私のお尻を叩いた。



「ひゃんっ!!」


「はったおすぞ! 狐ちゃん! おめーがある程度強くて、その持ってるその槍が物凄え槍ってのも解るがな。言っておくが、俺の方が強いからな。人の心配する前に自分の心配をしろよな!」


「は……はい、すいません」



 怒られた。しかも、それを見てセシリアがびっくりする位に笑っている。私は、セシリア達にも言った。



「セシリア、リア、ミラール君。くれぐれも気を付けてね」


「ひゃんっ……じゃない、はい。私達に任せておいて、子供達は必ず助け出して見せるわ」



 ううう……その意気込みは、頼もしいけどセシリアの目が、決意とかそういう感じじゃなくて、今は単に私の事を面白いものを見る目で見ている。うーーーー。



「唸ってないで、準備に取り掛かれ! 狐ちゃん! じゃあ、セシリア。そっちは頼んだぞ! 騒ぎを大きくするから、タイミングを計ってアジトに侵入するんだ」


「解ったわ。任せて頂戴。リアとミラールも決して私から、離れず行動してね」


「はい!」



 私はバーンさんと一緒に、アジトの正面に向かった。早速、見張りの何人かが私達に気づいた。アジトから盗賊が10人程出てくると、バーンさんは大声で叫んだ。



「出てこーーい!! お前らにやられた友の仇を討ちに来たあああ!! もうどうなったっていい!! 敵討ちだからな!! お前ら盗賊団を皆殺しにしてやるぞおおお!!」



 なるほど。バーンさんが言っていた考えってこれなんだ――――確かに、捕らえられている子供達を解放しろだなんて言ったら逆効果だ。今、バーンさんが言った内容なら子供達とも結びつかないし、ただの敵討ちで玉砕覚悟でやってきたと思われる。これなら凄くいい手だと思う。


 バーンさんの大声で、何事かと盗賊達が更に現れ出てきて全部で50人程になった。……これって大丈夫なんだろうか? 二人で倒せる量なのかな?



「はっはっは! おっさんと、可愛い狐のメイドの二人かよ? これで敵討ちってか? ヒャッハッハッハ」



 盗賊達が笑い出した。バーンさんは、背負っている大剣を抜くと正面に大きく構えた。



「うるせえ!! これは敵討ちなんだよ!! かかってこねーなら、こちらからいくぜ!!」



 バーンさんが盗賊達目がけて突っ込んだ。私も続く。



「おいおいおい!! おっさんが突っ込んできたぞおお!!」


「メイドもだ! いっちょ前に槍を振り回してやがる!! 気を付けろおおお!!」



 バーンさんは大きくて重量もかなりありそうな大剣を軽々と、振り回して盗賊達を薙ぎ倒していく。私もそれに続いて、槍を振るった。


 あっと言う間に私達二人だけで、20人位は倒した。もしかして、このまま戦えばここで全員やっつけられるんじゃ…………


 甘かった。そう思っていたら、更に追加で30人程新たに盗賊達がぞろぞろと現れた。その中には戦闘用に改良した鉞を装備した大男がいる。もしかして、あれがゴルゴンス。



「狐ちゃん、気を付けろ! あの鉞背負ったデカい奴がゴルゴンス! その隣にいる黒い奴が、このアジトの首領バンパだ」



 黒ずくめの男、バンパ。睨みつけ涯角槍(がいかくそう)の穂先をバンパに向けると、バンパは両手でそれぞれナイフを抜いてこちらに向けた。



「よくもやってくれたな、エスカルテのギルドマスター、バーン・グラッド! お前に噛みつかれるのはこれで二度目だ!」



 バンパのセリフに、バーンさんが大笑いする。



「うわっはっはっは! それは違うだろ? お前に最初に噛みついたのは、アテナだろ?」


「アテナ?」


「ボブヘアーの青い髪の可愛い娘だよ」


「ボブヘアー? 青い髪?」


「凄腕の女剣士さ。俺から必死に逃げている時に、遭遇してやられちまったんだろ? 聞いたぞ? 苦し紛れに火球魔法(ファイアボール)を撃って、目眩ましにしてとんずらしたんだろ?」



 バンパの顔が赤く変わっていく。バーンさんが言っている事、思い出したんだ。え? っていう事はこの盗賊団のボス――バンパはアテナ様と戦った事がある⁉ 因縁の相手――

 


「お前らは逃がさん! 後悔させてやるから覚悟しろ!」


「覚悟するのはおまえだ!」



 バーンさんとバンパが斬り合った。火花。他の盗賊達もバーンさんに次々と襲い掛かった。


 助けなければと思ったけど、私の周りにも大勢の盗賊達が囲むようにして襲い掛かって来た。








――――――――――――――――――――――――――――――――

〚下記備考欄


〇バンパ 種別:ヒューム

闇夜の群狼の幹部。愛用のナイフを巧みに二刀流で使いこなす上に、黒魔法も使用する。以前、ルキアやリア達のいたカルミア村を襲った。ルキアやミラール達を奴隷として売り払う為に馬車に乗せ、移動していた所をアテナと遭遇し倒されかけたが、隙をついて逃げ出した。あれ以来、青い髪のボブヘアの少女を探しているが一向に見つからない。アテナに痛い目にあわされたあとも、懲りずに奴隷売買を生業としている。


〇盗賊達のアジト

クラインベルト王国にある、闇夜の群狼のアジト。カルミア村から近い場所にあるが、人里離れており見つけにくい場所にある。100人前後の盗賊が潜んでいて、バンパが仕切っている。バンパは闇夜の群狼の中で奴隷売買を専門しているが、奴隷は売りつける国によっては物凄く高額で取引させている。


火球魔法(ファイアボール) 種別:黒魔法

火属性の中位黒魔法。殺傷力も高く強力な破壊力のある攻撃魔法だが、中級魔法の中では、まず覚える一般的な魔法。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ